もう一歩、詳しく知りたい人のために、少し付け加えます。
実は、ミケランジェロはこの天井画の前に、ユリウス2世のお墓を作るように依頼されていました。そして、そのために、石切り場に8ヶ月滞在して、ふさわしい石を切り出していました。
それは、かなりの量で、実は、彫刻を40体作る計画だったのです。しかし、それが、中止になってしまいました。
生きている内にそんなものを作るのは、良くないとブラマンテが言ったとか?
とにかく、ミケランジェロが嫌いだったブラマンテが邪魔をしたことは確かです。
それで、無理難題の天井画を描かされることになったのです。
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一応、そのお墓の計画の一部として、後にモーゼ像だけは完成します。
今は、モーゼ像はローマのサンピエトロインビンコリ教会にありますが、元々はユリウス2世のお墓の一部として作られたものでした。
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天井画の足場の話ですが、初めはある建築家に足場を組んでもらったという話があって、わざと壊れるように作られていて、ミケランジェロはそのために落ちてけがをしたという話があるのです。しかし、その場合、あの足場では落ちたら死にますよね。その時の足場とはどういうものだったのか、ちょっと分からなくなりました。下から足場が組まれていて、その途中から落ちたなら、理解できるのですが。
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それにしても、あの足場では、絵が見えませんね。ミケランジェロはどうやって全体を見たのでしょう?描いている途中で、全体が見えないとどのようにできているのかわからないですよね。
実物大の下絵を作って、紙を当てて、線の上に穴を開けて、その穴から粉をぶつけて、点線の形をとり、それを頼りに描いていくわけですが、それにしても全体が見えなければ、やりにくいです。
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ミケランジェロが描いてから、50年後くらいに壁の一部が剥がれました。
そのため、修復が行われましたが、それが今回の修復ではっきりわかる部分があります。それは、ある人物の腕の部分から色が変わっているからです。
実は、50年間のろうそくや油の煤が天井に着いていて、その煤の汚れに合わせて描いたため、汚れた色になっているのです。だから、他の部分は汚れを取ると、綺麗になるのですが、その部分は、綺麗になりません。
その修復をした人の技術も大したものでしたね。
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ノアの洪水の部分の壁が壊れて落ちています。
それは、近くの火薬工場が爆発を起こしたときに、その衝撃で落ちたのだと言われています。
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アダムの誕生の絵は、印象に残る絵ですが、描かれた当時もかなりの注目の的だったようです。なぜなら、神の顔が描かれているからです。
キリストの顔は多くの画家が描いていますが、神様の顔はなかなか見たことがないでしょう。私も他の人が描いた神の顔で印象に残っているものがありません。
だから、ミケランジェロの描いた神の顔は、衝撃が強いです。
神は、自分の姿に似せて人間を作ったということになっていますよね。だから、神は我々人間と同じ形をしている筈だということは分かりますが、それにしてもどんな顔をしているかは、誰も見たことがないのです。だから、どんな顔を描くかという点が注目されました。
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また、この絵は、アダムと神との関係が指先が触れあうような触れあわないようなという微妙な関係で描かれています。ここに現れる緊張感は、鋭角三角形と円が作る空間の緊張感に似ていると現代の抽象画家が述べていました。
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また、アダムにへそがあるのは、おかしいなんて言う人もいます。
へそとは、母親とつなかっているのだから、神様が泥んこ遊びで作るときには、へそは必要ないはずだという意見です。どう思いますか。
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12人の人が周りに描かれていますが、その内の一人は、ユリウス2世の顔が使われているものがあります。

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また、巫女の絵を描く時も、ミケランジェロは、とにかく男をデッサンして、それを元に、女性に変えて描いたということです。あの筋肉は男を描いたからだと。
レオナルドと同様に、同性愛の噂もありますね。
実際に、男性に対して恋文も送っていたようです。
60歳から72歳のときに、ある修道女に恋をしていますから、単なる同性愛ではないでしょう。男にも女にもすごいものに憧れる人だったと理解した方が良いかと思います。
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