「マグヌス」シルヴィー・ジェルマン著(辻由美訳)みすず書房を読みました。
マグヌスは、ぬいぐるみのクマの名前。五歳で記憶喪失におちいった男の子は、このクマを肌身離さず持っていました。ナチス党員の父親は敗戦後も逃げのび、単身メキシコへ逃亡し、自殺を遂げます。そして生活に疲れた母もまた…。
しかし、大人の都合で何度か名前を変えさせられた男の子の過去は、嘘とつくり話で塗り固められたものでした。そこから彼の長い旅がはじまります。舞台はドイツからイギリス、さらにメキシコ、アメリカへと移ります。
驚異的な記憶力をもち、数ヶ国語をあやつる彼ですが、自分はいったい誰で、どこからきたのかもわからず、本当の名前を知りません。マグヌスだけが唯一の過去の証し。読む者の予想を裏切りながら、ドラマチックに物語は進んでいきます。
フランスの高校生が選ぶゴンクール賞を2005年に受けた作品です。
くまのぬいぐるみがつけているスカーフの文字の色がそのまま題名の色になっているなど、装丁も凝っています。
重厚で美文。展開はとても速いのですが、(章立てではなく、記憶のように「断片」という表現を選び、話は進んでいきます)文章が濃密なためあくせくした印象はありませんでした。
ペギーとレストランで過ごす夜の話には本当にびっくり・・運命、なんでしょうか・・・。
ナチス党員だった父、それに賛同していた母。その父母の罪を背負う重圧と、敬慕の念との矛盾。「戦犯を愛することは罪なのだろうか?」というテーマは、ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」も連想させました。
傷を抱え過去を模索しながら生きていく、名前を持たない主人公の姿は哲学的ですらあります。
マグヌスは、ぬいぐるみのクマの名前。五歳で記憶喪失におちいった男の子は、このクマを肌身離さず持っていました。ナチス党員の父親は敗戦後も逃げのび、単身メキシコへ逃亡し、自殺を遂げます。そして生活に疲れた母もまた…。
しかし、大人の都合で何度か名前を変えさせられた男の子の過去は、嘘とつくり話で塗り固められたものでした。そこから彼の長い旅がはじまります。舞台はドイツからイギリス、さらにメキシコ、アメリカへと移ります。
驚異的な記憶力をもち、数ヶ国語をあやつる彼ですが、自分はいったい誰で、どこからきたのかもわからず、本当の名前を知りません。マグヌスだけが唯一の過去の証し。読む者の予想を裏切りながら、ドラマチックに物語は進んでいきます。
フランスの高校生が選ぶゴンクール賞を2005年に受けた作品です。
くまのぬいぐるみがつけているスカーフの文字の色がそのまま題名の色になっているなど、装丁も凝っています。
重厚で美文。展開はとても速いのですが、(章立てではなく、記憶のように「断片」という表現を選び、話は進んでいきます)文章が濃密なためあくせくした印象はありませんでした。
ペギーとレストランで過ごす夜の話には本当にびっくり・・運命、なんでしょうか・・・。
ナチス党員だった父、それに賛同していた母。その父母の罪を背負う重圧と、敬慕の念との矛盾。「戦犯を愛することは罪なのだろうか?」というテーマは、ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」も連想させました。
傷を抱え過去を模索しながら生きていく、名前を持たない主人公の姿は哲学的ですらあります。