Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「グアヴァ園は大騒ぎ」キラン・デサイ著(村松潔訳)新潮社

2007-09-19 | 外国の作家
「グアヴァ園は大騒ぎ」キラン・デサイ著(村松潔訳)新潮クレスト・ブックスを読みました。
いつまでたってもモンスーンがやってこない暑い夏、インドの小さな町シャーコートに、最初の雷雨とともに生まれた赤ん坊、サンパト。
成長し郵便局員になった彼は、仕事も嫌だし生活にもうんざり。人の手紙を開封しては、見知らぬ土地に夢を馳せる毎日。
彼はなぜだか郵便局長の娘の結婚式で尻丸出しで踊ってクビになり、あげく突然グアヴァの樹に登り暮らしだすことに。
盗み読みしていた手紙の内容を他人に告げたことから「千里眼」と誤解されたサンパトは聖者様と崇められ、とりまく信者に珍妙なる警句を告げる毎日。
サンパトに食べさせる凝った料理に力をそそぐ母クルフィ、聖者商売に精を出す世俗的な父ミスター・チャウラ、奇妙な恋の表現に燃える妹ピンキー。
サンパトの家族や、ニセ聖者ぶりを暴こうとするスパイ、猿たちから警察・軍隊まで巻き込んで大騒ぎの展開。
奔放な想像力で楽しませてくれる作者の処女長編小説です。

息子をひとかどの人物に仕立て上げようとする父と、地面の喧騒を離れて虫を見たり光を感じたりしたいサンパトとの埋まらない溝。
静かに暮らしたいサンパトの意に反して、群がる人々、猿。
ラストシーンは驚きです。