Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「マジック・フォー・ビギナーズ」ケリー・リンク著(柴田元幸訳)早川書房

2007-09-07 | 柴田元幸
「マジック・フォー・ビギナーズ」ケリー・リンク著(柴田元幸訳)早川書房を読みました。
ファンタジー、民話風、SFなどいろいろな味わいの9作品を集めた短編集です。

表題作の主人公はアメリカ東海岸に住む15歳の少年・ジェレミー・マーズ。
彼は毎回キャストが変わり放送局も変わる、予測不可能の海賊テレビ番組「図書館」の大ファンです。
彼の母親は大おばからラスベガスのウェディングチャペルと電話ボックスを相続するのですが、その電話ボックスに電話をかけていたジェレミーは、ある晩、耳慣れた声を聞きます。それは「図書館」の主要キャラ・フォックスの声でした。
番組内で絶体絶命の窮地に立たされている彼女は、ある頼みごとを彼に託します。フォックスは画面中の人物のはずなのに、いったい何故?
ジェレミーはフォックスを救うため、自分の電話ボックスを探す旅に出ます。

ほかにも国一つが、まるごとしまい込まれているハンドバッグを持っている祖母と、そのバッグのなかに消えてしまった幼なじみを探す少女を描いたファンタジー「妖精のハンドバッグ」。
なにかに取り憑かれた家を買ってしまった一家を描いた「石の動物」などが収められています。

どれも奇妙で面白い話ばかりなのですが、私が特に好きなのは「猫の皮」。
敵対する魔法使いの陰謀によって死んだ魔女。残された魔女の子供は猫の皮をかぶり、賢い猫と一緒に復讐に挑みます。「長靴を履いた猫」のような民話仕立ての話運びが面白い。でももちろんラストはペローの童話のように大団円とはいきません、これは読んでのお楽しみ。

ほかにもゾンビに品物を売りつけようとするコンビニなど、ケリー・リンクは発想がとにかく普通じゃない!日々どうやって作品の着想を得ているのかが気になります。