Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「村田エフェンディ滞土録(たいとろく)」梨木香歩著(角川書店)

2007-06-03 | 日本の作家
「村田エフェンディ滞土録(たいとろく)」梨木香歩著(角川書店)を読みました。
舞台は今から約100年前の1899年、トルコ。
遺跡発掘の留学生村田の下宿には、英国の女主人ディクソン夫人、トルコ人の使用人ムハンマド、ギリシャ人のディミトリス、ドイツ人の若者オットーがいました。
町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡(オウム)の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子(ローマガラス)を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い。
スタンブールでの村田の日々は、青春の光そのもの。
しかし時は共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める時代へ突入していきます。

宗教や、民族、国家を描いた青春小説。
「エフェンディ」とはムハンマドが村田を含む下宿人たちに対して呼んでいる呼び名のこと。学問を修めた人物に対する一種の敬称です。
ラスト近くには村田と梨木さんの著作『家守奇譚』に登場する人物とのつながりもあかされます。
時代設定(昔の言葉づかい)にこだわったからか、どの人物のせりふもあまり強いキャラクターが感じられなかったのがちょっと残念。
(ドイツ人のオットーも、ギリシャ人のディミトリスも村田と同じような話し方をしています)
ハミエットがつむぐ一連のつながりの糸はちょっとオカルトティックでした。