Straight Travel

日々読む本についての感想です。
特に好きな村上春樹さん、柴田元幸さんの著書についてなど。

「ローカル・カラー/観察記録」カポーティ著(小田島雄志訳)早川書房

2006-11-05 | 児童書・ヤングアダルト
「ローカル・カラー/観察記録」カポーティ著(小田島雄志訳)早川書房を読みました。
鮮烈のデビューを果たし、アメリカ文学界の寵児ともてはやされていた若きカポーティが、自らが暮らし旅した風景と、そこで出会った友人たちとの思い出を透明感あふれる文章で綴ったエッセイ集『ローカル・カラー』。
メイ・ウェスト、ジャン・コクトー、ルイ・アームストロングら、著者が一流と認めるアーティストを冷徹にスケッチした人物評論『観察記録』などが収録されています。
カポーティの美しい文章で語られるヨーロッパの街並み、海・・・どんなガイドブックよりもその景色を見てみたい!と思わせる文章。特に私は「イスキア」の文章が好きです。

「葡萄畑には蜜蜂が大吹雪のように舞い狂い、トカゲが新緑の葉の上で緑色に燃えている。(中略)下には眠る恐竜のような岩が待っている。ある日、絶壁の上を歩いていて、ケシの花をひとつ、またひとつと見つけた。それは陰鬱な石の間に一本ずつ咲いていて、長いひもの先についている中国の鈴のようであった。ケシの花を一つ一つ追って道を降りていくと、やがて見知らぬかくされた海岸に出た。」

でも実際にその場所に行ってみたら、思い描いた景色と違って「あれ?」ということになるのでしょうね。カポーティの目で見、カポーティの手で描くから美しい情景になるのだろうなあ。
フランスの作家コレットに出会ったときにプレゼントされたクリスタルガラスの文鎮を描いた「白バラ」もとても素敵な文章です。