Feelin' Kinda Lucky

ちょっと書いとこう・・・・

星野佳路の描く同族経営。

2023年09月03日 | trip

昔は軽井沢の「星野温泉」だったが、今では日本のみならず世界にリゾート施設を展開する「星のや」で有名になった星野グループ。

かつての星野温泉には小さいながらも温水露天プールがあったので子供のころは時々遊んだ。学生になってもタオル一つ肩にかけ、自転車に乗って温泉につかりにきたものだ。風呂の入り口には、コインを入れるマッサージ機が何台か置いてあり、廊下には地元の土産品の胡桃最中やみすゞ飴などを売る古びたショーケースのある、陳腐化したどこでもある温泉宿だった。長年軽井沢の観光開発を進めてきた西武グループの弱体化もあり70〜80年代軽井沢の進化は停滞した。

(↑今でも残してある昔からある入り口の看板ー星野佳路氏の先人への思いを感じる)

現在・四代目社長の星野佳路氏は大学卒業後、観光関連の後継者のための留学を終え、意気揚々と改革すべく家業に入るが、保守的な経営で株主・役員は親戚ばかり。公私混同のひどい状態を改革することへの賛同者が社内におらずわずか半年で退職する。ところが立派な親戚がいたようだ。この状態だといずれ星野は潰れるからクーデターすべきと佳路氏を支援した人がいたようで、結局佳路氏はこの人の後押しで会社に返り咲き、父親を退任に追い込む。

同族会社、跡取り・・といったことばは実はとても圧力のかかる言葉で私程度の中小企業のそういう立場の者でもある意味、コンプレックスのようにのしかかり、私など学生時代からそういう目で見られるのがいやだったし、現に就職をした企業にもそういう立場であることは一切隠匿していた。

同様に佳路氏もそう思っていた時期は長いらしいが、欧米ではファミリービジネスは決して否定されるものでなく、むしろそのメリットを生かした経営で成功した事例などをもとに体系的に研究される対象であったことを知り、自分の境遇を生かす方向に研究を始め、同族企業の軋轢の要因となる、資本・家系・マネジメントの三点のあり方を学究的な面から研究すると同時に、現場にどっぷりつかり実践し試行錯誤の中から、同族経営の経営者としての思考を確立していくのである。

ここで一つ面白い話がある。留学でファミリービジネスを学んで帰国して、ふるさとに帰り、佐久の大型書店に行くと自分がアメリカで勉強してきたことを系統立てて記された書が日本にもすでにあることに驚いたそうだ。

似たような同族企業で親を排除しクーデターで世間を賑わせた、あのお勉強できそうなエリートっぽい大塚久美子氏を思い出すが、結果的に思い描く望む姿の明確化とそこに向けての業務遂行の力量が全然違う。佳路氏と大塚久美子は日経新聞社の雑誌で対談をしたことがある。その際、久美子氏は、イケアやニトリ路線は踏襲しない、長年親が裸一貫築いた高級路線だけの商売もしない。と豪語。熱弁に佳路氏はうなずくが、結局久美子氏のやりたいことのイメージがつかめない、どういう姿を目指すかをもっとわかりやすく明確化しないと厳しいですねと斬っている。

その後、軽井沢でも星野は、温泉宿泊施設を大規模でないにせよそこそこ拡充してきた。特徴のないアウトレットしか残していない西武よりはましだ。

今の星のやは世界各地の既存施設を活用し、単なる再建でなく資本と運営をうまく絡め、顧客満足度の高いリゾート施設を展開している。

↑昨年宿泊した星のリゾートの界アルプス、かつては冬は閑古鳥の宿屋だったが、近隣の白馬のスキーリゾートとして周辺インフラの拡充と併せリニューアルし活用。夏は立山黒部の拠点として活用。テーマは信州の豪華な田舎体験。)

同族経営の最も難しい部分の後継者問題に関しても、佳路氏の研究成果は、後継者の意識として「立ち上げリスクの小さいベンチャービジネス」という捉え方を提示している。要は先人が築いたものを、時代の変化に合わせ、姿形を変えながら資本・家系・マネジメントの三点の輪のバランスをどう均衡化していくかということ。言うは易し行うは難しで、やる方もやらせる方もなかなか難しい。

そんな中、星野佳路氏に見受けられる、カッコつけず実務に徹し現実を客観的に見て、人の意見や成功失敗例を謙虚に受け入れる姿勢は立派だと思う。

佳路氏は約10年間、実父の先代社長が逝去された際、葬儀の挨拶状の中で、子供の頃の父との思い出、父への感謝を写真ととも披露したがなかなか感動的なものだった。同族経営は駅伝のようなものでたすきを渡す者も渡される者も重要だが、渡す者は速く走るよりも渡されるものにとっていい状態で渡すことが大切という。

同族経営に「ワンマン経営」のリスクは常につきまとうが、観光立国日本と言う割に保守的な観光業界で、星野氏が10年20年先どういう変革をもたらし成長し次世代にバトンタッチしていくのか楽しみだ。

 


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