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「バービーと私」で再確認する「スピリット」

宮塚文子さんという方が執筆された「バービーと私」という書がある。今回の渡米で米国人の古いバービー人形のディーラーに会った際に この本の概要を話した。

アメリカのマテル社がバービー人形の発売2年前の1957年にアメリカからデザイナーが来日し1年間帝国ホテルに滞在し開発にあたる。バービーの精緻な仕様はアメリカで量産は難しく、手先が器用で人件費の安い日本で作ることになったからである。そのときそのデザイナーに付いて一生懸命知恵と労力をしぼり陰の力となった女性の回顧録だ。当時日本は戦後の混乱から高度成長へと向かう前夜だった。まだ家電や自動車を輸出する前段階で玩具や繊維製品を輸出して外貨を稼いでいた。欧米からの評価は、創造力はなくモノマネ上手という悪評もあったが(モノマネと言っても今の中国の無節操なパクり放題よりはマシだったが....)持ち前の堅実な仕事ぶりと手先の器用さを活かしたものづくりで玩具や人形とはいえ、丁寧で高品質であったため欧米でかなり人気を博した。回顧録を書いたアシスタントの女性も、寝食を忘れて一生懸命、日々工夫し難問を解決しマテル社の要望に応えた。現在、発売当初のバービーはプレミアがついて、ものによってはアメリカでも 百万円前後の高額取引をされているものさえある。こういう日本の勤勉な人たちに支えられて今日のこの人気があるということだ。

私はこの女性の話を是非 アメリカのバービーディーラーやコレクターの人たちに是非読んでもらいたいと思う。出版社に連絡を取って米国で出版してもらうようにチョット頼んでみようかなと思った。

高度成長期を迎え、その後も家電品や自動車などの工業製品で世界をリードしていくわけだが、特に家電品はソニーやシャープの凋落に見られるように、昨今はかつてのような精彩がない分野もある。しかしまだま他の分野の工業製品で世界をリードしているモノもたくさんある。やはり資源の少ない日本が世界で存在感を示していくべきなのは、これから先も高い技術開発力と生産技術力だと思う。そしてそれはどんなに海外に人件費の安い国があろうとも、安直に生産拠点を移しきらず、足元でつねに作り込み改善していく現場の力を活用し良いものを送り出し続けることが重要なことではないだろうか。この本の女性の努力は一例だが、同じような多くの先人たちの勤勉で誠実な仕事ぶりがこれまでの日本を支えたことを再確認する本であった。それを誇りに思うとともに、少しアメリカの関係者に知らせたいと思った。

こういう日本の質の高さの背景には日本に古来からある一貫した「スピリット」があると思う。具体的にいえば文化・料理・生活面でみられるきっちりした仕上げのや品質のために尽力する心である。これが仕事にも生きるのである。今も実は航空機の中でこの文章を書いているが、ここにも一例がある。今回も米国系の巨大航空会社を利用しているが、カスタマーサービスの一環として、例えばビジネスクラスでは客室乗務員が着陸前にわざわざ各客席を訪れ「○○様 きょうはご搭乗ありがとうございました。またご一緒出来る日を楽しみにしております」と語りかけ、ミントチョコを配る。おーっ!そんなに感謝してもらえるのかと思いたいところが、それ以外では、相変わらず飛行中の客室乗務員の私語での長い井戸端会議が大きな声で繰り広げられている。こっちは着陸後に備えてしっかり寝たいのにいい迷惑である。座席の横をすり抜けるときは平気で乗客の肩にドンとぶつかってすみませんなどとさえ言わず平気で行ってしまう。こんな環境で最後に感謝の言葉を聞かされてもしらけるだけだ。まるで彼らのカスタマーサービスってのは、ハンバーガーチェーンのマニュアルどおりのご一緒にフレンチフライはいかが?と一緒である。

少なくとも日本の航空会社ではこういうことは少ない。それは、カスタマーサービスの教育の質も違うのだろうが、客室乗務員のひとりひとりの「スピリット」が違うからだと思う。これはどんなにマニュアルで徹底しても及ばない部分のような気がする。

反面、このひとりひとりの「スピリット」の影に 過去にはサービス残業、過労死などのような経営側の「スピリット」に異常に期待した挙げ句の怠慢は絶対に是正して行かなくてはならない。これは声を小さくして堪え忍んではいけない。

こういういい部分を忘れず適正化をしていけば日本もまだまだ捨てたものでないと思う。ところがインバウンドや目先の景気策など近視眼的な景気策を重視し長期的な視野で政策を進めない安直な政治家や役人が多くて悲しくなる。

そして機内で配られている日本の新聞や報道を見たりウェブで新聞をチェックすると、スポーツ新聞でもない全国紙が、価が下がっただの戻しただのといったありきたりの記事とともに 芸能人のグループが解散するだのしないだかが大きな記事として取り上げられている。

そしてそんなどうでもよさそうなことには結構群がってマスコミも一般も意見しているのである。原発再開や安倍政権の無謀ぶりには不思議なくらい黙っている人が多いのに.....

まあ、こんな三流のグループのことをどう書こうが、政府もマスコミに圧力をかけないだろうから書きやすいのかもしれないが・・・

こういうネタが大々的になるときは陰で危険な大きな問題が隠されているなんてウソだかホントだかわからないようなことを言う人もいるが、実はホントかな?と思ったりしてしまう。

米国にいて友人と世界中にはびこる差別やテロを語り合ってみんなこれからどうすべきなんてコトも語り合って、ふと故郷の新聞を覗くとこの程度の話題。まああまり偉そうなコトもしてないし言える立場でないが、島国からしばし離れて見ると中にいてはわからないニッポンの良いところ悪いところがよく見える気がする。

 

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