猪瀬元都知事によると、氏の就任中東京五輪開催が決まり、招致委員会から組織委員会に移行する際、諸々の面で効率的な大会を目指し経営センスのある人を配すことを考慮し、組織委員会々長にコストダウンに長けたトヨタの張富士夫名誉会長を配し、財務担当も経理センスのある外資系の人を選択することにしていたらしい。しかし知らぬ間の裏の動きがあり、結果は森喜朗とその腹心に決まってしまったとのこと。かくして、この体制下で役人の積み上げ式予算の容認が始まり、今日の無責任体質が出来上がった。
実は一度、猪瀬は安倍晋三が森喜朗を推したときに露骨に反発したらしい・・・
その後のトーキョーやくざ・自民党都連を噛ませた猪瀬排除は記憶に新しい。
東京五輪という１つのプロジェクトの推進のための機構の組織要員が、本来はトップから末端までその目的遂行に相応しい人員が合理的に選ばれ配置されなくてはならない。
企業に例えればこんなところだろう。仮にＡという商品を製造・販売するとしよう。その目的は、A製品をより良い品質でより安く作りより多く販売することであるのは言うまでもない。そのためにＡ製品の設計・生産・販売などそれぞれの分野でA製品の知識に長けた人が配置され、それらの全てを技術的な面も市場での販売戦力面にも長け、全体を統率指揮できる人が上に立ち、組織をまとめないといけない。（もちろん責任重大で仮に失敗しても責任転化などしない。）
しかし、今回の場合、その上に立つ人々の資質がそういう観点で選ばれず、利権思考のための裏工作に長けた人がなってしまったのである。
世間ではなぜこうなってしまったか？の議論で、組織委員会とか都とか国とかバラバラだったことが原因のように言われているが、そんなあいまいな原因ではない。間違えた人選の人が頂点に立っていたため目的実現のための具体的な統制を怠ったからである。機能を果たすための機構の構築ミスである。
だからこの機構の改革をしない限り、失敗を繰り返す。合理性と利権が綱引きするという不条理が繰り返され、それをメディアが面白おかしく取り上げ続けるのである。
少なくとも組織委員会スタートの時点で阿倍晋三が猪瀬直樹の提案に耳を傾け、”なるほどその人選なら効率的な五輪が出来る。これまでのやり方を打ち崩そう！”というリーダーシップを発揮していたらこれほど酷い事態にはなっていなかったかも知れない。しかしこれは森喜朗が石原時代から脈々と築き上げた側近議員やIOCメンバ－の利権の思惑を崩すことにつながる。本能的に自分の長期政権を脅かすようなことは避けたのである。
こういう事からもこの人は 志より自分の政治生命優先 であることがよくわかる。だから言っていることも情勢を見てコロコロ変わる。信頼できない最たるタイプである。
さて、今回、小池氏が知事にならなかったら今回の問題の多くは闇の中でうやむやになっただろう。この先、小池氏がどのような成果を出すかはわからないが、とりあえず現時点で選挙民はこの事実を冷静に見るべきだろう。そういう人たちを長年送り込んできたのも小池氏を送り込んだのも選挙民だからだ。
今回の五輪や築地の問題は 欲と権力の維持に長けている人が上にいると世の中は良くならないし、結局は我々の税金がムダに使われるということの証明だ。
総じて企業が基本的に社員や株主に利益をもたらす人をリーダーに選ぶように（とはいえそうでない場合もあるが） 政治家選びも “料亭で交渉し権力を広げる能力に長けた人より、少ない税金を効果的に使い市民に恩恵を与えるひと” という観点で選ぶ眼力を養いたいものだ。
