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今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

夜の河

2020-01-15 | 映画
昨年、「夜の河」(1956)と「女経」(1960 )という邦画を続けて観ました。

前者は京都が舞台ということもあり、何度も歩いた辺りの昔の姿が出てきて、通い始めた頃の匂いを思い出すような街並みも見られる、という楽しみがおまけについてきます。

「女経(じょきょう)」はオムニバスで、増村保造×若尾文子、市川崑×山本富士子、吉村公三郎×京マチ子という組み合わせの3話。
やはり大人が集まって遊んでるような、昔の人が与えられたお題を楽しみながら歌を詠んでいるようなノリがあります。

その時代の日本映画は観てなかったのでたいへん新鮮でもありましたが、少しするとちょっと考えさせられました。
街はもちろん今みたいに整ってません(が昔の方が統一感があって美しい)し、日常の便利な道具もまだ出現する前の話ですが、描かれている登場人物から映画を作っていたスタッフまで、人々の感覚は今よりずっと洗練されていたのでは、という思いです。

普段、これはと思うような生地を探し出し、適切な補正と素材に合った手を加え、その価格の中でそれ以上ないレベルを突き詰めているつもりでも、こういう映画を観るとまだ何か足りないような思いにとらわれます。
それは、男性の衣装が参考になるとかそういう部分では全くなく、時間の重みだったり、作品全体の質であったり、その時代の人が持つ洗練といった簡単に手に入らないものばかり。

やがて時間が経つにつれ、そういう人々が存在していたという事が、作るものにこの上なく励みになるように感じ始めましたが、そんな凄い作品ばかりでは身がもたないので、怖くて次はまだ観ていません。
そのくらい、観はじめたら止まらなそうな危険な鉱脈の匂いがします。



「夜の河」主演の山本富士子さん。映画全体の色もとても魅力的です。
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