Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

袖ボタン

2011-01-10 | Soul
 先月DVDで、ケーリー・グラントのスーツだったか袖口がアップになる場面を観ていた方から、最近の感覚からすると袖ボタンが随分袖口に近く見えますね、との指摘がありました。





以前物の本で読んだ記憶から、袖口からボタンまでの距離は1インチ(2.54cm)以内とあったように思っていました。
気になり改めて捜すと、見つかったのはアラン・フラッサーの二作目「Clothes and the Man」だけでしたが、重衣料の項「Buttonholes」の記述に、袖口の「一番下のボタンは袖口から3/4インチ以上離れていてはいけません」とあります。

フラッサーは自身の着こなしはともかく、リサーチは念が入っていたようなので、謝辞で名前を揚げているアンダーソン&シェパードのデニス・ハルブレイ氏等にこうした細部も確認していたと思われます。

3/4インチですと2cm弱で私の記憶より更に短いので、確かに今日の目で見ると袖口にボタンが近く見えるかもしれません。
下は皆さんお持ちの、そのフラッサーの四作目「Dressing the Man」のカバーに使われたケーリー・グラントの袖部分で、このスーツはノーマルに見えます。

ではなぜ我々の目がそうなって来たのでしょう。一番下の画像は1995年前半に雑誌に掲載されたナポリの製品で、媒体に載るものとしては先駆けでした。
こうしたかなり極端な状態が新鮮に見えたか、そこから入った人はあたかもそういう風に着るものと思いこんで、その後出て来た日本製のブランドにも反映されていったように思います。
それが徐々に感覚を変えていったのかもしれません。

ミラノの仕立て屋・既製品はもちろん、先のナポリの人たちもこんなには極端ではありませんし、もしかすると詰める可能性を前提に長く作っていたり、「あっ、間違えた」と、始まりは偶然だったということもないではありません。

何れにしても、先ほどの英米の数値にしろイタリア風に前者より遠い位置にしろ、全ては体格とのバランスの問題です。パンツのカフ同様、全ての人に一つの数値を適応させるのは少々乱暴でしょう。




←袖口。



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