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『地下鉄のミュージシャン』スージー・J・タネンバウム 宮入恭平<訳>

2009-01-21 23:05:38 | Weblog
渡辺ゼミ所属の宮入さんが、
単著「ライブハウス文化論」につづいて「地下鉄のミュージシャン」を翻訳出版した。
今年度内に単著と翻訳書の2冊の出版。
博士課程在籍中の院生の活躍としては目を見張るものである。
大学に職を得ている研究者ばりの凄い活躍。
さらに学会発表、ライブハウスでのミュージシャンとしての活動、
そしてゼミでの新規プロジェクト参加と超人のようだ。

日本にいてアメリカを知る機会は非常に少ない。
テレビ放映されるNBAやメジャーリーグくらいではないだろうか。
オバマ大統領の就任式はまさに異例中の異例だ。
増してやニューヨーク地下鉄のミュージシャンの実態などは、
積極的に現地に赴くか、または原書でそれらを調べるしかない。
もちろんアメリカの地下鉄における音楽演奏の状況など想像もつかない。
そのような意味においては、
ニューヨークのストリートミュージシャンの状況を知る手立てを提供してくれた本書の役割は大きいと考えられる。

ニューヨークのミュージシャンは地下鉄での演奏の場を獲得してきた経緯がある。
日本でも同様の文化事業を行う動きがみられる。
例えば、それは東京の「ヘブンアーティスト事業」である。
しかし、それはニューヨークのそれと似ているがまったく異なるもの。
お上が許認可権をもち、
審査会に合格したアーティストに指定の公共の場所での活動を認める国と
自らが発信するために地下鉄内での演奏の権利を勝ち得てきたアーティストがいる国。
アーティストが生演奏しているニューヨークの地下鉄。
日本の場合は電車の発着を知らせる電子的機械音の山手線。
同じようなことを試みるが全く異なっている。

ミュージシャンとオーディエンス、そしてオーディエンス間の「出会い」。
それをゴフマンの「焦点の定まった相互行為」。
乗客を「焦点の定まらない相互行為」で説明していることは理解しやすかった。
地下鉄の多くのミュージシャンへのインタビューに加えて、
駅で音楽に触れる交通警察官、駅長、売店店員などへの聞き取り調査も
実態をあぶりだす、活きたインタビューであった。
このような質的調査手法は、
社会調査をこれから行う大学生にとっても良い見本となりえるはずである。
最後に、翻訳をするにあたって版権取得など全ての交渉を宮入さん一人で行ったとのこと。
すごいの一言である。
最後に訳者としての宮入さんの〆の言葉が心に残った。
「穏やかすぎる東京の地下鉄にて」
さすがに常にいかす歌詞を書いているだけに光る一文であった。
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