HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

減益の宿命を背負うユニクロ。

2011-10-13 18:21:15 | Weblog
 ファーストリテイリングの2011年8月期の連結決算が発表された。売上高は対前期比0.7%アップの8,203億円と微増だったが、本業の儲けを示す営業利益は12.1%減の1163億6500万円で4年ぶりのダウン。売上高の7割以上を占める国内のユニクロ事業が失速したのが主な要因だという。
 柳井正会長兼社長は「商品政策が違っていた。売り場に行ったら欠品だらけだった」と、減益の理由にマーチャンダイジングの失敗や販売ロスがあったと語った。
 でも、同社の業績が芳しくないときは、いつも似たような理由を聞かされる気がする。言い方は「マーケティングとマーチャンダイジングを間違った」とか、「商品がばらけていて、売るべき商品がその能力を発揮していなかった」とかいろいろだが、真意は同じと見られる。

 ただ、ビジネスモデルが変わらない限り、これらのコメントが繰り返されるのはしょうがない。なぜなら、ユニクロはパーツとしての良質安価の衣料をコンセプトとし、製造コストをできるだけ抑えるために素材から生産ラインまで極度に絞り込んだマーチャンダイジングを取っている。
 このモデルから生まれるのは、極端にミニマムかつ大量生産的な工業製品であって、品揃えの中心には最大公約数的なアイテムばかりが並び、毎シーズン商品の顔ぶれはほとんど変わらない。 売れる時期に売れる商品を簡単に読み切れるはずはないし、売れ残りを抑えて少なめに商品を投入することもできない。
 春夏になればポロシャツやTシャツ、秋冬にはフリースやダウンが並ぶフラットな商品構成で、何年もたつと品揃えの陳腐化は否めない。毎シーズン大差ないアイテムを企画していては品揃えに変化も鮮度もなくなり、「もう、何年同じ品揃えかよ」「お客は飽き飽きしているのにいい加減気づけよ」と、お客にそっぽを向かれて当然なのである。

 トレンドや消費者の嗜好の変化によって品揃えを変えていくのが小売業なのだが、ユニクロが品質や機能性など企画生産に重点を置くサプライチェーンである限り、SKUごとに投入量を変えたり、売れた商品をクイックでフォローするなんてことはできない。限られた在庫では欠品が出るのは当たり前だし、売れない時期にも売れない商品が並ぶのだ。
 販売スタイルもヘルプ・ユアセルフだから、セレクトショップようにスタッフが一人一人のお客に対し、一生懸命商品を売って売上げを下支えすることはできない。売れるアイテムを当てられなければ、販売ロスどころか、膨大なマークダウンロスを出してしまう。
 それでも、柳井社長はマーチャンダイジングの失敗のせいにして、何もしない執行役員や店長に対し、「いかなる理由があっても、売上げと利益を取りにいかなければダメだ」と叱責する。本部や各店舗が収益を上げる方法を考えて実行し、それを全店に広げていくのが自身が標榜する「全員経営」と思うからだ。

 ユニクロがビジネスモデルの手本にしたギャップでさえ、好調は最長7期程度しか続いていないし、その後には長い低迷期が続き、短い好調の後には短い低迷が来るというパターンを繰り返している。だとすれば、4期ぶりの減益だから、4期程度の低迷が続くと考えられなくもない。
 今月開店のニューヨーク旗艦店ではIPJの商品を試しながら、こうした海外戦略を日本にも逆輸入し国内での販売向上も狙うという。しかし、すでに国内でも販売されているブロックテックマウンテンパーカ(9990円)などは総じて割高感が否めないし、新商品であるがゆえに販売ロスと在庫の山を生むリスクもはらむ。
 ユニクロがサプライチェーン優先のプロダクトアウト型SPAを続ける限り、アジアでの大量出店による売上げ増はあっても、減益という宿命も背負っていかなければならないのである。
コメント
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