H&Mが出店先を変えてきている。これまで都市部の一等地や郊外SCに出店していたが、駅ビルや空港といった立地にもシフトしてきたのだ。日本法人のC.エドマン社長は、「都心で大型店の出店先は限られてくるので、小さいスペースにも可能性を広げたい」と、新たな出店政策の理由をこう語る。
9月14日、東京駅に隣接するヤンマー東京ビルの地下にオープンした「H&Mトウキョウ・ステーション店」はその1号店で、日本では初めてとなる地下展開。駅利用客や丸の内、八重洲などのオフィスで働くビジネスマン、OLをターゲットにし、ベーシックな商品や小物に絞り込んだMDを特徴とする。
売場面積は200坪強と同社にしては小ぶりだが、メンズ、レディスのバランスを半々として、ビジネス対応のウエアが主体。郊外のように広大なスペースが確保できない立地では、商圏の特性を見ながら業態を開発していくようで、そのプロタイプが駅構内や空港といった「トラフィック業態」ということだ。
これまでの郊外店は東京・武蔵村山のイオン、埼玉・新三郷のららぽーと、岐阜・本巣のモレラ岐阜とまだまだ少ない。ただ、同社の場合、フリースタンディングでの展開は考えにくいので、イオンモールや三井不動産などの開発案件次第ということになる。
となると、残された立地はそれほど多くなく、既存SCでテナント入れ替えがあれば検討ということになるようだ。そこで、都市部でまだ掘り起こせていない好立地が集客力のある駅や空港ということだろう。
でも、同社が小商圏のニーズをどこまで攻略できるかには、やはり疑問符を付けなければならない。
なぜなら、H&Mが攻略を得意とするのは、「トレンドを押さえたホットなボリューム市場」で、商品は流行の先端を行きながら原価や中間コストを削った低価格品である。いわゆるファストファッションだが、はたして都市部の小商圏、特に駅や空港にそんなニーズがあるのか。おそらくないだろう。
大雑把に言えば、日本のマーケットはユニクロに代表されるベーシックなボリューム市場と、デザイナーブランドを主体としたトレンド市場に分かれる。つまり、ユニクロや無印良品が駅ナカに出店できたのは、ベーシックな下着や靴下、旅行グッズなどが売れるマーケットがあるからだ。
また、ユナイテッドアローズが羽田空港や新東名の清水PAに出店した業態も、旅行に付随するスーベニアニーズをブランド力で捕捉するもので、高額なウエアを販売する目的ではない。
それゆえ、H&Mが現状のMDの範囲内で、都市部、駅や空港など狭い商圏を攻略できるとは到底思えない。もう少し詳しく分析すると、日帰り出張のサラリーマンが急遽泊まりになって、着替えのドレスシャツや下着を持っていないとき、同社を選ぶかってことだ。そこそこのスーツを着ていたら、下着はともかくあのテイスト、質感のシャツは不釣り合いだ。
また、仮に突発的なニーズがあっても、価格を基準に考えると、上はメーカーズシャツくらいになるだろうし、下は100円ショップが探し出せればそれで十分ではないか。中途半端な価格でトレンドに触れた同社の商品は買いにくいのである。
まして、都市部で働くビジネスマンやOLが目的買いの対象であるスーツやジャケットをH&Mで買おうなんて思うはずがない。同社のMDでは、やはり広域から集客できる都市部の一等地か、または幅広い品揃えでファミリーに対応するSCに、大型店を構えるのがいちばん合致する。
某SPAの幹部はH&Mの商品について「ワンナイト・パーティグッズ」と揶揄したそうが、都市部の働く目の肥えたOLにとっては、それさえも腰が引けるのではないだろうか。アクセサリーなども小物類にしても、狭い商圏でどれほどのマーケットを開拓できるかは懐疑的である。
H&Mが都市部など近隣商圏を攻略したいとする戦略を否定するつもりはない。ただ、現状の日本市場を考えたときに、同社のMDでそうした市場ニーズを捕まえきれるとは思えないのだ。
もし、同社が日本の小商圏ニーズに合わせた商品を開発するなら別である。しかし、スウェーデン本社に企画デザイン部門を集約させ、アジアや東欧等の協力工場で生産する体制ができ上がっている以上、日本独自のイレギュラー企画なんかかえって効率が悪くなるはずである。
その意味でトウキョウ・ステーション店が錯誤の始まりにならないことを祈るばかりである。
9月14日、東京駅に隣接するヤンマー東京ビルの地下にオープンした「H&Mトウキョウ・ステーション店」はその1号店で、日本では初めてとなる地下展開。駅利用客や丸の内、八重洲などのオフィスで働くビジネスマン、OLをターゲットにし、ベーシックな商品や小物に絞り込んだMDを特徴とする。
売場面積は200坪強と同社にしては小ぶりだが、メンズ、レディスのバランスを半々として、ビジネス対応のウエアが主体。郊外のように広大なスペースが確保できない立地では、商圏の特性を見ながら業態を開発していくようで、そのプロタイプが駅構内や空港といった「トラフィック業態」ということだ。
これまでの郊外店は東京・武蔵村山のイオン、埼玉・新三郷のららぽーと、岐阜・本巣のモレラ岐阜とまだまだ少ない。ただ、同社の場合、フリースタンディングでの展開は考えにくいので、イオンモールや三井不動産などの開発案件次第ということになる。
となると、残された立地はそれほど多くなく、既存SCでテナント入れ替えがあれば検討ということになるようだ。そこで、都市部でまだ掘り起こせていない好立地が集客力のある駅や空港ということだろう。
でも、同社が小商圏のニーズをどこまで攻略できるかには、やはり疑問符を付けなければならない。
なぜなら、H&Mが攻略を得意とするのは、「トレンドを押さえたホットなボリューム市場」で、商品は流行の先端を行きながら原価や中間コストを削った低価格品である。いわゆるファストファッションだが、はたして都市部の小商圏、特に駅や空港にそんなニーズがあるのか。おそらくないだろう。
大雑把に言えば、日本のマーケットはユニクロに代表されるベーシックなボリューム市場と、デザイナーブランドを主体としたトレンド市場に分かれる。つまり、ユニクロや無印良品が駅ナカに出店できたのは、ベーシックな下着や靴下、旅行グッズなどが売れるマーケットがあるからだ。
また、ユナイテッドアローズが羽田空港や新東名の清水PAに出店した業態も、旅行に付随するスーベニアニーズをブランド力で捕捉するもので、高額なウエアを販売する目的ではない。
それゆえ、H&Mが現状のMDの範囲内で、都市部、駅や空港など狭い商圏を攻略できるとは到底思えない。もう少し詳しく分析すると、日帰り出張のサラリーマンが急遽泊まりになって、着替えのドレスシャツや下着を持っていないとき、同社を選ぶかってことだ。そこそこのスーツを着ていたら、下着はともかくあのテイスト、質感のシャツは不釣り合いだ。
また、仮に突発的なニーズがあっても、価格を基準に考えると、上はメーカーズシャツくらいになるだろうし、下は100円ショップが探し出せればそれで十分ではないか。中途半端な価格でトレンドに触れた同社の商品は買いにくいのである。
まして、都市部で働くビジネスマンやOLが目的買いの対象であるスーツやジャケットをH&Mで買おうなんて思うはずがない。同社のMDでは、やはり広域から集客できる都市部の一等地か、または幅広い品揃えでファミリーに対応するSCに、大型店を構えるのがいちばん合致する。
某SPAの幹部はH&Mの商品について「ワンナイト・パーティグッズ」と揶揄したそうが、都市部の働く目の肥えたOLにとっては、それさえも腰が引けるのではないだろうか。アクセサリーなども小物類にしても、狭い商圏でどれほどのマーケットを開拓できるかは懐疑的である。
H&Mが都市部など近隣商圏を攻略したいとする戦略を否定するつもりはない。ただ、現状の日本市場を考えたときに、同社のMDでそうした市場ニーズを捕まえきれるとは思えないのだ。
もし、同社が日本の小商圏ニーズに合わせた商品を開発するなら別である。しかし、スウェーデン本社に企画デザイン部門を集約させ、アジアや東欧等の協力工場で生産する体制ができ上がっている以上、日本独自のイレギュラー企画なんかかえって効率が悪くなるはずである。
その意味でトウキョウ・ステーション店が錯誤の始まりにならないことを祈るばかりである。