地場ファッション産業の振興、「ファッションで福岡を盛り上げよう!」を名目に事業を展開する福岡アジアファッション拠点推進会議。ここが主催する「福岡アジアファッション拠点推進フォーラム」が今年も8月6日水曜日、ホテルオークラ福岡で開催される。
といっても、平成25年度に同推進会議が行った活動を「さもありなん」と身内に報告したり、利害関係者の取り組み(予定)を発表するもので、あとは東京から呼んだ「タレント」の講演でお茶を濁す内容だ。
今年は活動報告、取り組み発表の時間が例年の30分から40分に拡大された。その前に小川洋福岡県知事、高島宗一郎福岡市長、末吉紀雄福岡商工会議所会頭の挨拶が入るだろうから、正味30分というところだろうか。
活動報告は例年、推進会議の企画運営委員長「Y氏」が自分で作ったパワポの資料を淡々と見せるだけで、事業の客観的な評価や分析がなされているわけではない。自分たちの利害だけで行った事業について、自分たちの都合の良いように報告するのだから、不公正極まりない。
そもそも、福岡アジアファッション拠点推進会議は、25年度に地場ファッション産業の振興のためにどんな活動を行ったのか。ホームページでは定期的に情報がアップされているが、地場業界には、その実態も効果もほとんど伝わってこない。
極論すれば、メーンの事業は昨年10月14日~16日、韓国・釜山で開催された「福岡アジアコレクションin釜山」、今年3月8日~23日に実施された販促キャンペーン「ファッションウィーク福岡(F.W.F)」と、しんがりの客寄せ興行「福岡アジアコレクション(FACo)2014」くらいだ。
快進撃を続けるSPA企業の社長講演などもあるにはあった。でも、ほとんどがファッション情報の発信の名を借りた「イベント事業」と広報ツールの制作程度で、地場ファッション業界である「糸へん」への影響や効果と言えば、「ほとんど無い」というのが正解だろう。
まず、福岡アジアコレクションin釜山があるが、これに出展されたブランドは「NB」が主体で、モデルも蛯原友里や押切もえなど東京から呼んだタレントが中心。何かに付けて強調される「福岡発信」は、イベント経費に福岡市の「税金」を拠出させる口実に過ぎない。
おまけにこのイベントには、「福岡市政の破壊者」と呼び声高い高島宗一郎市長も、一泊二日の出張扱いで参加している。この出張費にも福岡市民の税金が使われている。しかも、帰国後に「市議会」が開かれたにも関わらず、市長はこれを「欠席する」という体たらくだ。
市議会野党のみならず、市幹部からは「議会よりイベントが大事なお人だから」と揶揄されるなど、笑えないオチがついた。
企画力の無さを露呈したイベント
今年で2回目となるファッションウィーク福岡は、初回の「大失敗」を反省し、コンペ形式にして企画案が募集された。その結果、広告代理店の「H社」に委託されたようだ。と言っても、推進会議側が事前に用意した項目に沿って、キャンペーンの広報ツールやイベント企画を提案されたに過ぎない。
事業予算が700万円しかなかったため、でき上がったツールはしょぼいデザインのガイドブック、ポスター、Webサイトで、代理店にとって旨味のあるマス媒体は一切使えなかった。
それどころか、代理店に委託されたのは、ツールの制作・印刷費を捻出するための「スポンサー集め」や他業界のキャンペーンとの抱き合わせだったのだから、コンペ参加に二の足を踏んだところもあったようだ。
独自のイベントは、3月15日に市役所前広場で開催された「ファッションマーケット」のみ。これはフリマではなく、地元で活動するクリエーターや個店の出展を狙ったものだ。参加募集の要項にも「バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります」がきちんと謳われていた。
ところが、屋外というリスク、1日限定、15,000円という高額な出展料が禍して、思うように参加者は集まらなかった。推進会議の母体である福岡商工会議所が地場の「卸」や「アパレル」に声かけして、「小売り」させるという禁じ手で、何とか体裁を整えたかたちだ。
しかも、募集要項にあったルールはあっさり変更され、結果的に「バザーOK」になっている。そのバザーで「古着」を販売したのが、何を隠そう推進会議の企画運営委員長がファッション部長を務める「大村ファッション専門学校」の学生なのだから、空いた口が塞がらない。
また、ファッションウィーク自体にも参加企業、参加店舗が少なかったため、対象はファッションのみならず、「ビューティ」「ネイル」「カフェ」「インテリア」などの業種にも拡大。その割に、今回も企画運営委員長は、推進会議発足総会の時に自ら宣ったキャッチコピー「服岡」を強調している。
専門学校のファッション部長を名乗るレベルだから、冗談にもコピーのセンスは褒められたものではない。代理店のH社からすれば、「コンセプトが大甘ですね」ではなかろうか。
自分たちがファッション業界の不文律を無視した稚拙な企画しか考えきれないのに、参加者が集まらなければ平気でルールを変える。もはや「公職」に就く資格はないというものだ。
今回のフォーラムでは、一体何を説明するというのか。例年、報告と取り組み説明に終始するだけで、それに対する質疑応答はないのだから、今回も適当に取り繕って終わる公算が高い。その頃には自治体のトップ2名は退席しているのだから、どうしようもない。
もっとも、ファッションウィーク福岡のスポンサーとなった百貨店やファッションビルも、内心穏やかならぬ気持ちのようである。今年も昨年同様に大した販促効果はなく、商工会議所の顔を立てるスポンサーで終わったからだ。
拠出した資金が販促効果どころか、ガイドブックなどの制作・印刷費に消えたのだから、「推進会議はいったい何をやっているのか」「広告代理店や印刷会社のためにやっている事業か」と、クレームの一つでも付けたくなるのは、わからなくもない。
そんな不満があるからだろうか。デベロッパーからは「H社が来年のファッションウィークもルーチンで引き受けているようだが、あの程度の企画では…」との話が漏れ伝わってきた。
これが事実なら、事業資金の大半を負担している福岡市は、推進会議に完全に舐められていることになる。また、市議会は「高島市長が言い出した」市発注の公共事業に対し、その費用対効果をきちんと検証しているのかということである。
身内レベルの適当な活動報告ではなく、事業を主導している企画運営委員長を市議会に呼んで、きちんと説明させるべきだろう。
カワイイ区連動は予算獲得が目的か
それどころか、推進会議は県や商工会議所からの支援が削減されたことで、これまで以上に福岡市に強力にアプローチしている。それがファッションウィーク福岡のコンペ説明会で、企画運営委員長が言い放った「カワイイ区との連動」である。
福岡市が広報活動に利用するカワイイ区がファッション産業の振興とどう連動するのか。全くもってわからない。まして、事業開始から3年も経つ事業にも関わらず、どれほどの効果を生んでいるか、今もって見えないのである。
ここにも推進会議が何かに付けてタイアップを画策するのは、利害関係者が福岡市から「別枠の予算」を引き出そうとの思惑が透けて見える。
ただ、これには落とし穴があった。事業それぞれで委託業者が違うのだ。 ファッションウィーク福岡は広告代理店のH社、 福岡アジアコレクションはRKB毎日放送、そしてカワイイ区は2年目以降、代理店のBJ社(経緯は以下にhttp://www.data-max.co.jp/2014/06/25/post_16457_dm1718_2.html)になっている。
カワイイ区は昨年7月、カナダ人のミカエラ・ブレスウェート氏が区長に就任した。起用の理由は同氏が自身のブログで福岡の情報を発信し、アクセスが40万件以上あったとの触れ込みからだった。しかし、彼女も初代区長の篠田麻里子同様に、東京の芸能事務所に所属するれっきとした「タレント」である。
篠田麻里子の場合、事業費は約1000万円だったのに対し、ブレスウェート氏の場合は7月16日から今年の3月31日までの7カ月程度で約1000万円。さらに14年度は約1300万円と300万円もアップしている。これはBJ社が出した見積もりを福岡市がそのまま受け入れた形だ。
内訳はWeb・SNSプロモーション費377万円、Webサイト・SNS企画管理費325万5,000円などとなっているが、Web関連の制作・管理にそれほど費用がかかるとは思えない。タレントの氏名使用や肖像権料を名目上、転嫁したと思われる。
しかも、代理店との委託契約外の内容は個別対応、「市主催のイベント出演」も委託契約外ならギャラが発生するという契約になっている。(詳細はhttp://www.data-max.co.jp/2013/09/30/1000_23_dm1718_1.html)
つまり、推進会議がファッションウィーク福岡などでブレスウェート氏を起用すれば、必然的に福岡市が応分の「ギャラ」を負担しなければならなくなるのだ。
当然、このギャラからマージンを抜くのはBJ社だろうから、H社はどんな思いか。また、それを多くの代理店を集めたファッションウィーク福岡のオリエンで、のうのうと宣った企画運営委員長は、タレント事務所の営業代行をしているとしか思えない。
推進会議のすべての事業がこうした委託会社丸投げである限り、ファッション産業の振興などといった「公共投資」とは、かけ離れたことが行われるのは言うまでもない。それはRKB毎日放送が仕切る今回のフォーラムとて同じだ。ファッション業界は全く不在なのである。
RKB毎日放送にとってフォーラムでの活動報告は単なる添えもので、メーンの収入源は講演会だ。今回はベンジャミン・アーサー・ウエストウッドなる人物が呼ばれ、15時40分から16時30分まで50分の講演がセッティングされている。
同社にとっては、その講演ギャラのマージンをはねられるわけだから、これほど「おいしい事業」はないのである。
裏を返せば、H社が携わったファッションウィーク福岡は、ガイドブックなどの広報ツールにしても、ファッションマーケットにしても、制作他はすべて下請業者へのオール外注だから、代理店にとって管理に手間がかかるわりに利益は薄い。
だから、委託業者側にしてみると、右から左でマージンが取れて利益率が良いタレントを事業に起用するのである。
本当に推進会議が講演会を「地元ファッション産業の振興のため」と言うなら、地元業界が求めるテーマやビジネスノウハウであるべきだ。しかし、それをファッション音痴のRKB毎日放送はじめ、代理店に理解できるはずはないのは、地場ファッション業界から見ればよくわかる。
これまで起用されたタレント講演者の顔ぶれをみても、芸能事務所から送られてきたカタログとギャラ一の一覧表をもとに人選しているだけだろう。地場ファッション産業の振興など、これぽっちも考えていないことがよくわかる。
ベンジャミン何ちゃらという御仁のプロフィールを見ても、いかにも企画運営委員長の専門学校のミーハー学生などが好みそうなキャラクターだ。当日は同校が夏休みに入っているため、学生が動員させられるわけだろうが、彼らがこうした事業の内情など知る由もない。
民放が報道しないからNHKに要請
講演会の後にはオプションで「懇親会」が行われていたが、今回はそれがない。フォーラムは参加無料だから、学生は参加できても、有料の懇親会となると話は別。それが実施されないということは、いかに一般参加者が少なく、動員がやらせに近いかということである。
フォーラムをプロデュースするRKB毎日放送は翌日の早朝、おそらくTBS「朝チャン」枠内のニュースをパブ枠にして、フォーラムの模様を放送するだろう。1分ほどの時間に、小川県知事や高島市長、末吉会頭の挨拶風景、企画運営委員長「Y氏」や参加者のアップを中心に「推進会議はいかにも立派な活動をやっていますよ」と、偏向報道する。
昨年はたった30分の「活動報告や取り組み発表」をクローズアップするために、講演会、講演者の映像はインサートされなかった。果たして、今年はベンジャミン何ちゃらという御仁は、映し出されるのだろうか。それとも、肖像権料をよこせと言われるかもしれないから、躊躇しているのか。
まあ、フォーラムは実質的にRKB毎日放送の事業だから当然、他局が報道することはあり得ない。推進会議は事業について市民の注目を集めるため、今年の福岡アジアコレクションの模様はNHKにニュース報道させたが、今回のフォーラムもそうするのか。
ただ、ほとんど公共性がない事業ということを考えると、地場業界どころか、他のメディアまで白けるのも無理はない。
そんなことを思っていたら、2009年に福岡県が国の「緊急雇用対策基金」27,931,000円を利用し、制作した福岡県ファッション情報発信システム、「ファッションサイト福岡」も、2,700万円もの資金を使いながら、ほとんど機能せずにず7月16日をもってサービスを終了している。
これについても、予算を出した福岡県の商工部が企画コンペで業者を募集した。でも、審査には推進会議がお歴々も参加し、なぜかRKB毎日放送の子会社であるWeb制作会社が委託業者に選定されるという不可解さだ。
企画書には「ブランディング」だの、「ITインテグレーター」だのと謳い文句が並んでいるものの、でき上がったサイトは福岡のファッション情報の発信とは、かくも地場ファッション業界って薄っぺらいものなのかと思わせる白物だった。
おまけに制作には企画運営委員長の学校が参加しているのだから、これは完全に癒着以外の何ものでもない。というか、学生レベルの情報がファッション産業で役に立つと、平気で思うWeb会社のコンテンツ制作能力の低さを物語る。
サイトを見ると、「2012年から全く更新されていない」のだから、呆れ返るものだ。しかも、薄っぺらい企画書を読めば、単に「単年度事業として仕事を得られればいい」という考えしかないことが容易に想像できる。
Web制作会社は県の指定通り、「Ruby」仕様を取り入れ、プログラムに注力したと言っているようだが、情報発信サイトの中身が「すこすこ」でユーザーが利用すると考える方がおかしい。まあ、提案された企画書を注視してみると、「アパレルメーカー、縫製工場が服を生産するための材料選ぶ場合」の項目に、なぜか「ベルクロ」なる靴資材が登場する無知ぶりだ。
ファッション用語が思いつかないから適当に書いたのは良いが、「資材なら他にもいくらでもあるのに」と、ここでも素人レベルのまやかしに思わず失笑してしまった。制作会社はWeb技術者の雇用に務めたと言い訳したところで、全く機能しないWebコンテンツなど、カネの無題使い以外にはない。
どちらにしても、地場ファッション産業の振興など全く眼中にない、まやかしの活動報告とまやかしの報道が1週間後になされるのは、こうした水面下の事情、利害関係の構図を見ても間違いなさそうである。
といっても、平成25年度に同推進会議が行った活動を「さもありなん」と身内に報告したり、利害関係者の取り組み(予定)を発表するもので、あとは東京から呼んだ「タレント」の講演でお茶を濁す内容だ。
今年は活動報告、取り組み発表の時間が例年の30分から40分に拡大された。その前に小川洋福岡県知事、高島宗一郎福岡市長、末吉紀雄福岡商工会議所会頭の挨拶が入るだろうから、正味30分というところだろうか。
活動報告は例年、推進会議の企画運営委員長「Y氏」が自分で作ったパワポの資料を淡々と見せるだけで、事業の客観的な評価や分析がなされているわけではない。自分たちの利害だけで行った事業について、自分たちの都合の良いように報告するのだから、不公正極まりない。
そもそも、福岡アジアファッション拠点推進会議は、25年度に地場ファッション産業の振興のためにどんな活動を行ったのか。ホームページでは定期的に情報がアップされているが、地場業界には、その実態も効果もほとんど伝わってこない。
極論すれば、メーンの事業は昨年10月14日~16日、韓国・釜山で開催された「福岡アジアコレクションin釜山」、今年3月8日~23日に実施された販促キャンペーン「ファッションウィーク福岡(F.W.F)」と、しんがりの客寄せ興行「福岡アジアコレクション(FACo)2014」くらいだ。
快進撃を続けるSPA企業の社長講演などもあるにはあった。でも、ほとんどがファッション情報の発信の名を借りた「イベント事業」と広報ツールの制作程度で、地場ファッション業界である「糸へん」への影響や効果と言えば、「ほとんど無い」というのが正解だろう。
まず、福岡アジアコレクションin釜山があるが、これに出展されたブランドは「NB」が主体で、モデルも蛯原友里や押切もえなど東京から呼んだタレントが中心。何かに付けて強調される「福岡発信」は、イベント経費に福岡市の「税金」を拠出させる口実に過ぎない。
おまけにこのイベントには、「福岡市政の破壊者」と呼び声高い高島宗一郎市長も、一泊二日の出張扱いで参加している。この出張費にも福岡市民の税金が使われている。しかも、帰国後に「市議会」が開かれたにも関わらず、市長はこれを「欠席する」という体たらくだ。
市議会野党のみならず、市幹部からは「議会よりイベントが大事なお人だから」と揶揄されるなど、笑えないオチがついた。
企画力の無さを露呈したイベント
今年で2回目となるファッションウィーク福岡は、初回の「大失敗」を反省し、コンペ形式にして企画案が募集された。その結果、広告代理店の「H社」に委託されたようだ。と言っても、推進会議側が事前に用意した項目に沿って、キャンペーンの広報ツールやイベント企画を提案されたに過ぎない。
事業予算が700万円しかなかったため、でき上がったツールはしょぼいデザインのガイドブック、ポスター、Webサイトで、代理店にとって旨味のあるマス媒体は一切使えなかった。
それどころか、代理店に委託されたのは、ツールの制作・印刷費を捻出するための「スポンサー集め」や他業界のキャンペーンとの抱き合わせだったのだから、コンペ参加に二の足を踏んだところもあったようだ。
独自のイベントは、3月15日に市役所前広場で開催された「ファッションマーケット」のみ。これはフリマではなく、地元で活動するクリエーターや個店の出展を狙ったものだ。参加募集の要項にも「バザーではありません。洋服・雑貨・アクセサリーなどのファッション発信の場となります」がきちんと謳われていた。
ところが、屋外というリスク、1日限定、15,000円という高額な出展料が禍して、思うように参加者は集まらなかった。推進会議の母体である福岡商工会議所が地場の「卸」や「アパレル」に声かけして、「小売り」させるという禁じ手で、何とか体裁を整えたかたちだ。
しかも、募集要項にあったルールはあっさり変更され、結果的に「バザーOK」になっている。そのバザーで「古着」を販売したのが、何を隠そう推進会議の企画運営委員長がファッション部長を務める「大村ファッション専門学校」の学生なのだから、空いた口が塞がらない。
また、ファッションウィーク自体にも参加企業、参加店舗が少なかったため、対象はファッションのみならず、「ビューティ」「ネイル」「カフェ」「インテリア」などの業種にも拡大。その割に、今回も企画運営委員長は、推進会議発足総会の時に自ら宣ったキャッチコピー「服岡」を強調している。
専門学校のファッション部長を名乗るレベルだから、冗談にもコピーのセンスは褒められたものではない。代理店のH社からすれば、「コンセプトが大甘ですね」ではなかろうか。
自分たちがファッション業界の不文律を無視した稚拙な企画しか考えきれないのに、参加者が集まらなければ平気でルールを変える。もはや「公職」に就く資格はないというものだ。
今回のフォーラムでは、一体何を説明するというのか。例年、報告と取り組み説明に終始するだけで、それに対する質疑応答はないのだから、今回も適当に取り繕って終わる公算が高い。その頃には自治体のトップ2名は退席しているのだから、どうしようもない。
もっとも、ファッションウィーク福岡のスポンサーとなった百貨店やファッションビルも、内心穏やかならぬ気持ちのようである。今年も昨年同様に大した販促効果はなく、商工会議所の顔を立てるスポンサーで終わったからだ。
拠出した資金が販促効果どころか、ガイドブックなどの制作・印刷費に消えたのだから、「推進会議はいったい何をやっているのか」「広告代理店や印刷会社のためにやっている事業か」と、クレームの一つでも付けたくなるのは、わからなくもない。
そんな不満があるからだろうか。デベロッパーからは「H社が来年のファッションウィークもルーチンで引き受けているようだが、あの程度の企画では…」との話が漏れ伝わってきた。
これが事実なら、事業資金の大半を負担している福岡市は、推進会議に完全に舐められていることになる。また、市議会は「高島市長が言い出した」市発注の公共事業に対し、その費用対効果をきちんと検証しているのかということである。
身内レベルの適当な活動報告ではなく、事業を主導している企画運営委員長を市議会に呼んで、きちんと説明させるべきだろう。
カワイイ区連動は予算獲得が目的か
それどころか、推進会議は県や商工会議所からの支援が削減されたことで、これまで以上に福岡市に強力にアプローチしている。それがファッションウィーク福岡のコンペ説明会で、企画運営委員長が言い放った「カワイイ区との連動」である。
福岡市が広報活動に利用するカワイイ区がファッション産業の振興とどう連動するのか。全くもってわからない。まして、事業開始から3年も経つ事業にも関わらず、どれほどの効果を生んでいるか、今もって見えないのである。
ここにも推進会議が何かに付けてタイアップを画策するのは、利害関係者が福岡市から「別枠の予算」を引き出そうとの思惑が透けて見える。
ただ、これには落とし穴があった。事業それぞれで委託業者が違うのだ。 ファッションウィーク福岡は広告代理店のH社、 福岡アジアコレクションはRKB毎日放送、そしてカワイイ区は2年目以降、代理店のBJ社(経緯は以下にhttp://www.data-max.co.jp/2014/06/25/post_16457_dm1718_2.html)になっている。
カワイイ区は昨年7月、カナダ人のミカエラ・ブレスウェート氏が区長に就任した。起用の理由は同氏が自身のブログで福岡の情報を発信し、アクセスが40万件以上あったとの触れ込みからだった。しかし、彼女も初代区長の篠田麻里子同様に、東京の芸能事務所に所属するれっきとした「タレント」である。
篠田麻里子の場合、事業費は約1000万円だったのに対し、ブレスウェート氏の場合は7月16日から今年の3月31日までの7カ月程度で約1000万円。さらに14年度は約1300万円と300万円もアップしている。これはBJ社が出した見積もりを福岡市がそのまま受け入れた形だ。
内訳はWeb・SNSプロモーション費377万円、Webサイト・SNS企画管理費325万5,000円などとなっているが、Web関連の制作・管理にそれほど費用がかかるとは思えない。タレントの氏名使用や肖像権料を名目上、転嫁したと思われる。
しかも、代理店との委託契約外の内容は個別対応、「市主催のイベント出演」も委託契約外ならギャラが発生するという契約になっている。(詳細はhttp://www.data-max.co.jp/2013/09/30/1000_23_dm1718_1.html)
つまり、推進会議がファッションウィーク福岡などでブレスウェート氏を起用すれば、必然的に福岡市が応分の「ギャラ」を負担しなければならなくなるのだ。
当然、このギャラからマージンを抜くのはBJ社だろうから、H社はどんな思いか。また、それを多くの代理店を集めたファッションウィーク福岡のオリエンで、のうのうと宣った企画運営委員長は、タレント事務所の営業代行をしているとしか思えない。
推進会議のすべての事業がこうした委託会社丸投げである限り、ファッション産業の振興などといった「公共投資」とは、かけ離れたことが行われるのは言うまでもない。それはRKB毎日放送が仕切る今回のフォーラムとて同じだ。ファッション業界は全く不在なのである。
RKB毎日放送にとってフォーラムでの活動報告は単なる添えもので、メーンの収入源は講演会だ。今回はベンジャミン・アーサー・ウエストウッドなる人物が呼ばれ、15時40分から16時30分まで50分の講演がセッティングされている。
同社にとっては、その講演ギャラのマージンをはねられるわけだから、これほど「おいしい事業」はないのである。
裏を返せば、H社が携わったファッションウィーク福岡は、ガイドブックなどの広報ツールにしても、ファッションマーケットにしても、制作他はすべて下請業者へのオール外注だから、代理店にとって管理に手間がかかるわりに利益は薄い。
だから、委託業者側にしてみると、右から左でマージンが取れて利益率が良いタレントを事業に起用するのである。
本当に推進会議が講演会を「地元ファッション産業の振興のため」と言うなら、地元業界が求めるテーマやビジネスノウハウであるべきだ。しかし、それをファッション音痴のRKB毎日放送はじめ、代理店に理解できるはずはないのは、地場ファッション業界から見ればよくわかる。
これまで起用されたタレント講演者の顔ぶれをみても、芸能事務所から送られてきたカタログとギャラ一の一覧表をもとに人選しているだけだろう。地場ファッション産業の振興など、これぽっちも考えていないことがよくわかる。
ベンジャミン何ちゃらという御仁のプロフィールを見ても、いかにも企画運営委員長の専門学校のミーハー学生などが好みそうなキャラクターだ。当日は同校が夏休みに入っているため、学生が動員させられるわけだろうが、彼らがこうした事業の内情など知る由もない。
民放が報道しないからNHKに要請
講演会の後にはオプションで「懇親会」が行われていたが、今回はそれがない。フォーラムは参加無料だから、学生は参加できても、有料の懇親会となると話は別。それが実施されないということは、いかに一般参加者が少なく、動員がやらせに近いかということである。
フォーラムをプロデュースするRKB毎日放送は翌日の早朝、おそらくTBS「朝チャン」枠内のニュースをパブ枠にして、フォーラムの模様を放送するだろう。1分ほどの時間に、小川県知事や高島市長、末吉会頭の挨拶風景、企画運営委員長「Y氏」や参加者のアップを中心に「推進会議はいかにも立派な活動をやっていますよ」と、偏向報道する。
昨年はたった30分の「活動報告や取り組み発表」をクローズアップするために、講演会、講演者の映像はインサートされなかった。果たして、今年はベンジャミン何ちゃらという御仁は、映し出されるのだろうか。それとも、肖像権料をよこせと言われるかもしれないから、躊躇しているのか。
まあ、フォーラムは実質的にRKB毎日放送の事業だから当然、他局が報道することはあり得ない。推進会議は事業について市民の注目を集めるため、今年の福岡アジアコレクションの模様はNHKにニュース報道させたが、今回のフォーラムもそうするのか。
ただ、ほとんど公共性がない事業ということを考えると、地場業界どころか、他のメディアまで白けるのも無理はない。
そんなことを思っていたら、2009年に福岡県が国の「緊急雇用対策基金」27,931,000円を利用し、制作した福岡県ファッション情報発信システム、「ファッションサイト福岡」も、2,700万円もの資金を使いながら、ほとんど機能せずにず7月16日をもってサービスを終了している。
これについても、予算を出した福岡県の商工部が企画コンペで業者を募集した。でも、審査には推進会議がお歴々も参加し、なぜかRKB毎日放送の子会社であるWeb制作会社が委託業者に選定されるという不可解さだ。
企画書には「ブランディング」だの、「ITインテグレーター」だのと謳い文句が並んでいるものの、でき上がったサイトは福岡のファッション情報の発信とは、かくも地場ファッション業界って薄っぺらいものなのかと思わせる白物だった。
おまけに制作には企画運営委員長の学校が参加しているのだから、これは完全に癒着以外の何ものでもない。というか、学生レベルの情報がファッション産業で役に立つと、平気で思うWeb会社のコンテンツ制作能力の低さを物語る。
サイトを見ると、「2012年から全く更新されていない」のだから、呆れ返るものだ。しかも、薄っぺらい企画書を読めば、単に「単年度事業として仕事を得られればいい」という考えしかないことが容易に想像できる。
Web制作会社は県の指定通り、「Ruby」仕様を取り入れ、プログラムに注力したと言っているようだが、情報発信サイトの中身が「すこすこ」でユーザーが利用すると考える方がおかしい。まあ、提案された企画書を注視してみると、「アパレルメーカー、縫製工場が服を生産するための材料選ぶ場合」の項目に、なぜか「ベルクロ」なる靴資材が登場する無知ぶりだ。
ファッション用語が思いつかないから適当に書いたのは良いが、「資材なら他にもいくらでもあるのに」と、ここでも素人レベルのまやかしに思わず失笑してしまった。制作会社はWeb技術者の雇用に務めたと言い訳したところで、全く機能しないWebコンテンツなど、カネの無題使い以外にはない。
どちらにしても、地場ファッション産業の振興など全く眼中にない、まやかしの活動報告とまやかしの報道が1週間後になされるのは、こうした水面下の事情、利害関係の構図を見ても間違いなさそうである。