HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

売れ筋MD回れ右。

2009-11-04 11:35:15 | Weblog
 990円ジーンズ、パリへの進出、そしてジル・サンダーとのコラボ。このところ、業界での話題が尽きない
ファーストリテイリング。11月3日には、世界中で集客に結びついたという「+J」の第2弾が国内50店舗と
インターネットで発売された。
 10月に発売された第1弾は、予想を上回る売れ行きだったようだが、冬物商戦を前にして第2弾は既定路線。
アイテムは防寒用のダウンジャケットや厚手のセーター、そしてコート類。ユニクロでも販売している商品を
ジル・サンダーのフィルターで焼き直したものになっている。
 ただ、そこにはファーストリテイリング流のMD(マーチャンダイジング)戦略が透けて見える。ユニクロの
アイテムが売れるのは、着る人間を選ばないベーシックなデザインとバリエーションの豊富さ、値段を上回る
価値といったMDが機能しているからだ。
 990円ジーンズで話題を振りまいた「ジーユー」も、当初はトレンドデザインを追いかけ、ユニクロと別の
マーケットを狙ったが、競合が多く、徒労に終わった。そこでベーシック路線に立ち返り、価格軸を下げて再
デビュー。いきなりスタートダッシュとなっている。
 +Jも2006年のデザインプロジェクトの反省があり、コラボデザイナーは人選の段階から「ベーシックな」
アイテムを得意とするとの条件がついていたような気がする。それがラグジュアリーながら、ミニマルなデザ
インで表現するジル・サンダーだったのだ。
 ジル・サンダーは99年、プラダによって企業買収された。しかし、プラダグループの総帥であるパトリッツ
ィオ・ベルテッリとビジネスに対する確執を理由に、00-01秋冬コレクションを最後にデザイナーを辞任。そ
の後、03年5月に復帰。04春夏ミラノコレクションよりデザインを手がけるも、同年11月、再び辞任。現在は
デザインテイストは継承されたまま、ラフ・シモンズがディレクターとしてコレクションを行っている。
 メーンのコレクションを持たず、ライセンスなどのロイヤルティ収入もないジルにとって、ユニクロからの
オファーは願ったりだったのではないか。ユニクロにとってもさらにブランド力を上げていくには、コレクシ
ョンデザイナーのネームバリュウはのどから手が出るほど欲しかったはずである。
 そこでMD戦略の話に戻せば、ユニクロとジルはベーシックとミニマルという表現の違いこそあれ、お客から
見ればシンプルなデザインで、選びやすくコーディネートしやすい点は共通する。ビジネスを考えるとテイス
トが似通っていれば、ブランドは違っても生産効率を上げられる。つまり、MDは売れ筋回れ右していくという
わけだ。
 柳井正社長は否定するかもしれないが、ファーストリテイリングのMD戦略の背景には、「全天候型経営」が
あるといっても過言ではないだろう。
コメント
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