HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

デザイナーになりたいなら。

2009-07-20 17:32:38 | Weblog
 あるファッション系メディアが来春卒業予定の専門学校生に行った「就職意識調査」に
よると、多く学生は希望職種にデザイナー、パタンナーを上げているという結果だった。
 しかし、業界全体が構造不況で、売れ筋に走らないと生き残っていけない現状、
企画職を採用するアパレル企業はそれほど多くない。それゆえ、大半は企画職には
就けないまま卒業ということになる。
 最近、デザイナーになるために専門学校に入ったのに、求人がないから
諦めるしかないという学生の声が多く聞かれるが、では、アパレル企業の前に
学校や担当講師は今の業界の状況を学生にどう説明しているのか。
 「夢はかなう」「絶対プロになる」などといった在り来たりなキャッチコピーで学生を集め、
一通りの専門知識や技術を教えると、「あなたならきっとなれるわよ」「頑張りなさい」との
精神論で「ハイ、終わり」にしているのはないだろうか。
 アパレル企業にとっても奇をてらったものづくりより、市場のニーズを嗅ぎ取って売れる
商品企画の方が重宝なのだから、若い才能がそれほど重要視されるはずもない。
 ある記者はコラムで「企画職志望でも採用がなければ、多くは販売職になるだろう。
では、店頭で彼らの技術や能力を生かす手はないか。例えば、商品の最終加工を客の目の前で
行うとか、顧客の服を少しカスタマイズしてあげるとか。何か現実的なアイデアや手法があれば、
店頭は販売する場から新たな価値を生み出す場に変わるかもしれない」と書いていた。
 学生に夢を諦めさせないエールともとれるが、いかにも部外者のメディアらしい
理想論である。私の経験から言わせてもらえば、そんなことは所詮無理な話。
採用側は企画志望の私をうまく使うために、面接の時に記者のような話を匂わせたが、
入社を決め売場に配属された途端に「売上げ重視」だった。
 売場には売れない、数字を上げられない販売員に要はないという空気が蔓延していた。
四の五の言わずに売場にある目の前の商品を売り切ると、ピリピリしていた。
それが企業風土であり、それを受け入れた社員によって屋台骨が支えられていた。
 だから、私はそんな企業はあっさり退社し、クリエイティブ力を徹底して磨いた。
売上げが結構あった時期でもそうだったから、厳しい昨今ならなおさらだと思う。
記者のような思いつきに「いいアイデアですね」と感心するような余裕は、
いまのアパレル企業にはないだろう。
 では、経験者としてデザイナー志望の学生にアドバイスするとしたら、「どうしても
デザイナーになりたかったら、クリエイティブ能力をさらに磨けと、そしてどんどん
自分で服を作れ。経験に勝る能力開発はない」のだということ。
 その中で、出来がいいものものをレップに営業してもらうなど、後の手法はいくらもある。
デザイナーになりたいなら、自らアパレルを起こすくらいの気概がないと、厳しい
ファッション業界では生き残れないのである。 

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スタイリストと水引。

2009-07-02 18:29:55 | Weblog
 先日、近所の若者が結婚するというので、お祝いしようということになった。
贈り物は何か適当に選べば良いのだが、やはりメッセージはカッコ良く決めたい。
そこでオリジナルのカードを作って、贈り物に添えることにした。
文面のコピーは本人に合わせて書くとして、
デザインは「寿」をイメージする「水引」をモチーフにしようと考えた。
 東京時代なら情報が豊富だったので、知り合いのカメラマンやスタイリストと
簡単な打ち合わせして、素材を見つければ良かった。でも、こっちはカメラマンは
撮影するだけだし、スタイリストは服を借りるのが仕事だと勘違いしている。
 だから、全く当てにならず、思い通りの作品にするには、すべて自分で素材から
探さなければならない。で、はたと思った。水引そのものがどこに売っているのか。
文具店か、紙屋か、ご婚礼用品店か、それとも結納用品を売るお茶屋さんか。
インターネットで調べるとこれが意外や意外。水引はディスプレイツールの
カテゴリーに入るようで、「店研創意」という専門店にあることがわかった。
ここなら知っている。母校旧奈良屋小学校の近くにある。
 早速出かけて注文し、赤と白を取り寄せた。水引は紙の細い紐で表面が
オイルコーティングされ、非常に結びにくかったが、なんとか結び目を作って、
無事撮影は完了した。写真は出来上がったメッセージカードの表紙である。
 クリエイティブな仕事をする人間なら、このくらいのこだわりは当然だし、
気の利いたスタイリストなら、むこうから提案してくれるし、作るのも厭わない。
ディレクターの意図をくんでくれるから、CMや映画など仕事の幅も広がり、
高いギャラがもらえるのだ。
 九州のスタイリスト諸君よ、スタイリストとは決して服を借りて、
コーディネートすることにあらず。「どこに行けば、どんなものが揃う」という
きめ細かな情報をもとに、なければ素材から探して自分で創る。
それが真のスタイリストの仕事なのだ。

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