HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

馴れ合いで接客が磨かれるか。

2011-04-24 13:24:05 | Weblog
 博多大丸と福岡パルコが先日、接客の腕を競う「合同ロールプレーイングコンテスト」を実施した。両社は1月に「母と娘」を
テーマにした共同販促をスタートさせ、JR博多シティへの対抗戦略を展開してきた。
 しかし、いざふたを開けると、博多大丸は博多シティとMDが被るヤングの売上げダウンは否めなかったようで、トップはおざ
なりの「接客サービスの向上」に軸足を移すしか打つ手がないようだ。

 パルコにしてもイベント戦略の強化という自社のポジションはあるものの、歩合制のデベロッパーにはやはり売上げダウンは、
きつい。せっかく、販促で手を結んだのだから、接客でも提携し、メディア向けに話題を振りまこうということだろう。

 駅ビルの勝ち組、ルミネはとうの昔からCS(顧客満足)向上に取り組み、全社規模でロールプレイングコンテストを実施し、
テナントのモチベーションアップに取り組んでいる。当然、博多シティ側も展開を考えているだろうから、両社としては先に
手を打っておこうということだ。

 しかし、小売業の経営トップが必ず叫ぶ「商品やブランドで大差がないなら、お客は接客サービスの良い店に行く」という単純
な論理は、昨今のファッション業界では通用しない。
 ルミネが好業績を達成したのは、徹底したCSの陰で入店前研修やショップマスター研修、サブマスター研修、特別研修など、
テナント教育に関する目を見張るようなシステムとカリキュラムがあるからだ。
 その中で修練されたスタッフがさらにトップを目指すのがルミネスト。いわゆるロールプレイングコンテストは「徹底顧客主義」
の単なる一手段に過ぎない。

 博多大丸はかつて日曜日の開店前、売場ごとに担当を決めてロールプレイングを実施していた。でも、その内容は当たり障りの
ない、あるいは在り来たりのマニュアル的フレーズの応酬で、「百貨店は現場レベルでもこの程度か」と唖然としたことがある。
 福岡パルコにしてもヤング系セレクトをリーシングすれば、ある程度の集客は果たせる。あとはそれらのテナントスタッフが売
ってくれればいいわけで、所詮「他人のふんどしで相撲をとっている」に過ぎない。
 そのテナントが博多シティにも出店したのだから、限られたパイの取りあいは生まれるわけで、売上げダウンは当然のこと。
ただ、ヤングのセレクト系で「コレ下さい」的なショップが多い中で、どれほどの接客レベルの向上が売上げにつながるかは懐疑
的である。

 東京の専門店系アパレルで、都内のブティックや地方の高級専門店と取り引きし、「1億円プレーヤー」と呼ばれるプレミアFA
(ファッションアドバイザー)の接客をまざまざと見せつけられてた人間からすれば、博多大丸や福岡パルコの接客レベルなんて
J2クラスに過ぎない。

 現代は、百貨店やファッションビルがやっているブランドの入れ替えやテーマを揃えたショップの集積、またはブランドのハコ
を取っ払った編集売場なんかでは売上げを見込める時代ではない。だから、経営トップは接客サービスに力を入れようとしている
のだろうが、接客に必要なホスピタリティや笑顔はその人間の置かれた環境で育まれ、物理的、精神的な余裕あって初めて花開く。
持って生まれたあるいは成長過程で養われた能力がなければ、なかなか表現できないし、身に付かないのだ。

 当然、カジュアルを売る店、高級品を販売する店で接客術は変わってくる。言い換えれば、ストアロイヤリティと同時に接客サ
ービスも進化、向上していなかければならないのである。その意味で、飽和した市場で百貨店もファッションビルも経営戦略で打
つ手がない中、小手先の戦術をくり出したところで、戦況が良くなるはずがないのは明白だ。

 これは博多シティにも言えること。今、売上げ好調なのは、「くうてん」という飲食エリアへの来店客が尽きないのと、博多阪
急のHAKATA SISTERSに並ぶドロシーズやラグナムーン、デビー・バイ・フリーズショップが天神では買えないからだ。決して
接客サービスが良いからではない。

 広告代理店のOL崩れのタレント審査員が、顧客満足やスタッフのモチベーションをあげるES(従業員満足度)なんて分かる
はずもない。この辺も両社が取り組む「接客サービスの向上」が単なる小手先の戦術と思う所以なのだが。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする