HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

イベントに来店促進力があるのか。

2015-03-25 05:49:03 | Weblog
 ファッションウィーク福岡2015が3月22日の「福岡アジアコレクション(FACo)」をトリに終了した。

 今年は主催者の福岡アジアファッション拠点推進会議に対し、福岡商工会議所、福岡県、福岡市が事業予算を削減したと言われる。ただ、昨年同様に中心部への集客、来店促進、販促という「大義」で開催されたイベントも、?がつくものばかりだった。

 過去、事業企画を丸投げされた広告代理店が、商業施設をスポンサーにして子飼いの制作会社に作らせたパンフレットは無し。代わって、SP会社に発注したであろう「ルーバービラ」がメーン会場である岩田屋本館北側の壁面で頼りなく旗めいた。

 パンフレットを制作するのであれば、販促ツールとしての切り口を変えなければ、レベルの高いものはできない。しかし、代理店や制作会社レベルのファッションリテラシー、ノウハウでは土台無理と言うものだ。

 結局、今年のファッションウィークでは、情報発信ツールはサイトやFacebookのみに落ち着いている。集客対策も天神を中心に仮設のステージが設けられ、パフォーマーやミュージシャンのライブイベントなどで、お茶を濁したに過ぎない。

 純粋なファッション事業では、地元で活動するクリエーター数名のポップアップショップが岩田屋、キャナルティ博多、博多阪急の3カ所で開催された。

 ただ、施設側がほとんどショップ情報を発信していないため、お客は身内による来店に留まったと思われる。まして、商業施設側に売上げ貢献したなんてことは考えにくい。

 また、一部の専門学校によるファッションショーもあるにはあったが、福岡アジアコレクション(FACo)がトリに控えている関係で、大々的なものは行われていない。

 つまり、「ファッションウィーク福岡」と言いながら、主催者側の穿った解釈で「糸へん」「ウエアや雑貨」「ショップ」をクローズアップする純然たるファッションからは外れ、単なるブツ切れイベントの集合体に成り下がってしまったのである。

 この程度の企画内容なら、RKB毎日放送が高島宗一郎福岡市長を抱き込んで催した「クリエイティブラボ」、毎秋に開催されている「ミュージックシティ天神」と、どこが違うのか全くわからない。

 一方、筆者がこのコラムで第1回目のファッションウィークから提唱してきた「販促ためのポイント付与」。いわゆるプレミア商品券のスマホ版的な企画は、今回ようやく「ショプリエ」という形で実現された。

 ただ、「期間中に参加店舗から、総額1000万円のボーナス」がもらえるというギミックにどれほどの人間が登録し、いかなる額が実際に商品の購入に利用されたかが公表されるかどうかはわからない。

 例年、夏に開催される「福岡ファッションフォーラム」で、イベント効果らしきデータが公表されている。だが、今回のように店舗側が売上げに触れるものになると、オープンにされることは非常に難しいだろう。

 そもそも、ファッションウィーク福岡は福岡への来店促進、商業者への販促に繋げる目的でスタートし、実施されてきたはず。そのためのショプリエなのだから、当然、税や組合費の再配分ということでは、まず地元の商業者に還元されなければならない。

 つまり、総額1000万円のボーナス分が実際に購入に利用されたポイント応分の額を補助することを最優先されるべきなのである。それが来店促進や販促にとってはいちばん有効な手段だからだ。これは全国津々浦々のイベントでも実証されている。

 しかし、実際にはパフォーマーやミュージシャン、あるいはストリートからメジャーデビューしたが、最近すっかり名前を聞かなかった「ケイタク」を呼んだわけだから、事業資金の多くがそのギャラにも消えたことになる。

 それでも、企画に携わる代理店がこうした「タレント」を客寄せイベントに起用するのは、ギャラの上前がはねられ、自社の利益にしやすいからだ。

 事業の企画運営委員長が「専門学校のファッション部長」であることから、企画を自校の学生や入学予備軍の目線でしか考えていないこともある。「ピンク一色」のイベントカラーが何よりそうだ。

 また、露天のイベントは、有料コンサートのチケットのように具体的な数字が表に出ず、動員やレスポンスの指標がハッキリしない。だから、商工会議所や県、市への報告書を出す際、非常にごまかしやすいということになる。

 言い換えれば、それらが福岡への来店促進、店舗の販促に繋がったかどうかは、検証しなくて済むという逃げ道を企画の段階から作っているのだ。これは完全な確信犯で、事業の恩恵を受けるべき多くの「ファッション事業者」「商業者」への裏切りである。
 
 一方で、代理店の企画力なんて、その程度だと言うこともできる。だいたい、気候が良くなった春先、どこの街でも大小いろんなイベントが開催されている。スポーツなどの参加型イベントの方がはるかに人気が高く、これは集客にも貢献する。

 マーケティング効果も高いことから、スポンサーの確保もしやすくなっている。

 なのに若者相手のチンケなイベントの集合体であるファッションウィーク福岡が、爆発的な集客力、高い次元での情報発信力を持つとは考えにくい。なおさら、販促効果に寄与することなど、ほとんどないだろう。

 第1回目から企画は大した効果も発揮できず、ほとんどが失敗と言えるシロ物。企画運営委員長は「試行錯誤」的な言い訳で乗り切ってきたが、地元ファッション業界が諸手を上げて「評価」していないところが、この御仁の凡庸さ、無能さを表す。

 であるからこそ、地元ファッション業界にとって「成功」といえる事業にするには、ファッション業界での経験に乏しい企画運営委員長、ファッション音痴の代理店、その取り巻きの利害関係者に退場していただくことが、いちばんの早道かもしれない。

 ところで、地元メディアの反応はどうか。例年、RKB毎日放送は、翌月曜日の早朝ニュースでFACoの模様を報道していた。だが、イベント内容に目新しさがないため、放送していない。昨年、そのお鉢が回ったNHKも、今年は報道を控えていた。

 代わって、ファッションウォーク福岡については、主催者側から地場メディアに報道依頼があったようで、FBS福岡放送が夕方のニュースで放送していたのを発見した。

 内容はファッション専門学校の学生(企画運営委員長の学校ではない)や男性スタイリスト、主催者側の担当者へのインタビューをもとに構成した「提灯レポート」だった。

 学生は、当日のファッションショーに向けての作品づくりや打ち合わせの模様が事前に取材されており、「将来は福岡に自分のお店がもちたい」とコメント。まあ、デザインを勉強しているのだから、「ブランドショップ」の出店ということだろう。

 スタイリストは、「東京で6年仕事をした後、今は福岡で活躍している」とのこと。だが、ファッション雑誌が売れず、CM制作費も削られているのがメディア界の現状。仕事の奪い合いに破れ、「都落ち」したと見られなくもない。

 問題は主催者のコメントである。当日、FBSの取材に対し、地元ファッションのポテンシャルについて、「福岡はファッションを勉強している学生、そしてアパレルメーカーが多い」と答えていた。推進会議発足時の趣意書に書かれたものと全く同じ内容である。 


 イベント主催した福岡商工会議所にはアパレル部会があり、そこには地場メーカーが所属している。これも意識したのだろうが、「メーカーが多い」というのは、何を基準に言っているのか。また、それがどれほどのポテンシャルをもつというのか。

 はっきり言って、こうした報道は視聴者に全くの誤解を与える。まずアパレルメーカーとは、トヨタやソニーのような自社で工場を抱え、製造まで行うものではない。メーカーとは言うが、実体は「卸」だ。

 昨今はアジアのアパレル工場に生産を委託をするところが大半で、福岡も例外ではない。だから、地域雇用の受け皿や経済発展に結びつくものではない。

 営業のやり方はサンプル商品を作り、展示会で小売りのバイヤーに仕入れてもらい、ロットをまとめて工場で生産して小売店に卸し、納期ごとに店頭に並ぶ。

 ユニクロなどSPA(製造小売り業)の台頭で、このシステムも時代遅れになりつつあるが、業界では厳然と残っている。

 ただ、現実的には福岡のアパレルメーカーは、衰退していると言う方が正しいだろう。もともとは博多区の店屋街がその名の通り、問屋街だった。そこで産声を上げたアパレルもあるが、流通センターや福岡ファッションビルの誕生で分散していった。

 卸や問屋では福岡リブ、岩久、ベルソンジャパンなど倒産し清算されたところは、枚挙にいとまがない。ファッションビルとて空き室が多く、九州外のメーカーの出張展示会で食いつないでいるのが実情だろう。

 筆者の知人である関西のメーカーも、今月末にファションビルで展示会を開催する。資本力が弱く、SPA化が難しい中小零細アパレルは、そうでもして市場を拓かないと非常に厳しいのだ。

 当然、関東や関西のアパレルに攻められると、地場メーカーがあおりを食うのは言うまでもない。しかも、地場メーカーは取引先の小売店を意識するため、表に出ることはほとんどない。

 つまり、福岡に多いのはアパレルではなく、「小売り」なのである。それは博多が商業都市として機能してきた中世から、少しも変わっていない。雇用の受け皿としても、そちらの方が圧倒的に大きい。

 だが、小売店が多いから、アパレルに有利かというとそんなことはない。バッティングの問題から、卸先は限られてくる。だからこそ、逆に関西や関東に販路を拡げなければならない。当然、支店を出せばコストもかかるし、市場が大きい分、競争も激しくなる。

 小売店で力をもつところは、地場アパレルではなく、地場以外や海外のメーカーから直接仕入れている。だから、競争に勝てないところは、閉店し退店していく。

 生き残るのはブランドショップを含め一部の専門店か、ナショナルチェーンか、グローバルSPAだ。それが福岡の実態なのである。

 一方で、 若者には販売職は敬遠され、小売店はスタッフ不足に悩んでいる。福岡も同じで、優秀な販売員の育成は進んでいない。FBSでさえスタイリストの方を取り上げるのだから、若者が販売職なんかに興味を持たないのはわかっているはずだ。

 それをアパレルのポテンシャルなんぞという言葉で、大げさに語るのはあまりに無責任極まりない。

 本当にアパレルメーカーが多いのなら、なぜFACoはじめとする事業に参加するところが限られるのか。なぜ、ファッションウィーク福岡にアパレルではなく、パフォーマーやミュージシャンを呼ばなければいけないのか。ここに事業の大きな矛盾がある。

 メディア側も担当者のコメントを流すだけで、何の裏も取っていない。これでFBSもRKBや代理店同様にファッション音痴であることがこれでハッキリした。それが筆者が「提灯レポート」と断じた理由である。

 こんなファッション事業を続ける限り、福岡のファッション業界は、ポテンシャルをもつことなどあり得ない。また、チンケなイベントなんかやったところで、小売りの街、福岡の来店促進力が高まるはずもないのである。
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小売日本一+奇抜世界一に勝算は?

2015-03-18 07:19:32 | Weblog
 パリコレでは70年代からその奇抜さで注目を集め、日本のオンワード樫山もライセンス契約を結んでいたジャン=ポール・ゴルチェ。このほど、日本一の小売業と呼び声高いセブン&アイとカプセルコレクションを開催したと、ファッションメディアが報じた。

 カプセルコレクションとは、定期開催されるメジャーなコレクションとは違い、イレギュラーで他の企業やアーチストなどと組む小規模なコレクションを指す。

 ゴルチェ氏自身は、90年代終盤からオートクチュールに専念するため、プレタポルテを発表していない。エルメスのレディスではデザインを手がけていたが、その活動ぶりは耳にしなかったので、報道を聞いたときは意外だった。

 しかも、メディアが「セブンイレブン」にスポットを当てた点を見ても、瞬間にゴルチェ氏のクリエーションより、セブンイレブンのノウハウを活かしたビジネスモデルの登場ではと思ったほどだ。

 記事によると、すでに新会社が設立されており、32ドルから250ドルの低価格な商品を売り出すという。日本はデフレの影響でファッション消費が変わり、高額なブランドにそれほど投資する層がすっかり少なくなったのだから、これはしょうがないことだ。

 まして、ジャン=ポール・ゴルチェと言っても、クリエーションやテイストを知るのは、50代以上。20代の若者にピカソに触発されて、ボーダーのカットソーを好み、髪をパツキンに染めたフランスのデザイナーと言ったところで、ピンと来ないだろう。

 セブン&アイ側が注目したのも、ゴルチェ氏の奇抜な作風というより、デザイナーとしてのエッセンス、パリコレ流の色出しの良さなど、日本のアパレルブランドにはない部分ではないか。

 傘下にはスーパーのイトーヨーカドーと、百買店のそごう・西武をもつ。ゴルチェ氏を起用したファッション衣料は、レディス向けのPB「ジャンポールゴルチェ フォーセット プルミエ」として発売されるというから、なおさらだ。 

 また、セブンイレブンはコンビニビジネスで蓄積した売れる商品の見極め、情報システムによる物流管理までの精度アップで、日本一の小売業と言わしめるまでになった。

 目下、オムニチャンネル戦略を推進しているから、コルチェPBは従来型の量販店衣料に見られるような大量仕入れ、大量消化には与しないものと考えられる。

 現にそごう・西武が販売しているリミテッドエディションは、セブンイレブンで培った単品管理のノウハウで精緻なデータ分析を品ぞろえにフィードバックし、年商規模を1000億円にまで拡大させたという。

 セブン&アイとしてはこれに手応えを感じたから、ゴルチェPBでも行けると踏んだのではないか。

 ただ、懸念材料も少なくない。イトーヨーカードーを含め、スーパーの衣料品改革は業界ではずっと言われてきた。また、百貨店のファッションも一部の人気ブランドを除き、大多数のNBは苦戦を強いられている。

 ユニクロなどのSPAに食われて、ファッション衣料はもちろん、最近では実用衣料までお客を奪われている。

 かつてイトーヨーカドーは、伊勢丹のバイヤーだった故・藤巻幸夫氏を衣料事業部長に据え、改革に臨んだ。しかし、百貨店出身者の遺伝子や経験と量販店の風土やマーケット、お客の購買動機とのギャップは埋めらず、成果を出せずに終わった。

 それを考えると、いくらPBと言えイトーヨーカドーに投入したところで、どれほどの競争力をもつのか。まあ、武蔵小杉のオープンした新店舗は、百貨店からも注目を集めているので、販売のテストケースにはなるかもしれないが。

 むしろ、商品づくりにゴルチェ氏のネームバリュウや感性を生かすなら、リアルタイムのゴルチェを知る客層が多いそごう・西武といった百貨店の適正だと思う。でも、適当な売場づくりでは、せっかくのゴルチェブランドは生かせない。

 もっとも、そごうは水島錬金術、西武は堤イズムと、ともにバブルの繁栄を謳歌した百貨店である。土地の確保やブランドづくりに派手な投資を行った結果、バブル崩壊とともにその方向性を見失い、凋落した。

 だから、いくらセブンイレブンのノウハウで、PBのリミテッドエディションが売れていると言っても、これは百貨店本来の姿ではない。

 セブンイレブンでも、セブンプレミアがヒットしているのは、いかにもそのビジネスモデルが正しいかのように受けとれられている。しかし、その考え方は非常に危険だ。

 お客がセブンイレブンのブランドを評価するのは、コンビニエンスストアとしてのロイヤルティだ。今、セブンプレミアが売れているのは、デフレでNBが売れないだけかもしれないし、景気が回復すればお客はNBに寝返ることも十分考えられる。

 これはゴルチェPBを販売するそごう・西武にも言えることだ。百貨店が販売するのはあくまでNBやインポートブランドであって、PBはその間を埋める商材でしかない。

 このまま景気が回復すれば、いくら高級品が売れないと言っても、百貨店を訪れるお客がPBなんかに期待するはずはない。買いたいのは、上質でしっかり作り込んだブランド品だ。つまり、ゴルチェが復活するなら、プレタポルテなのである。

 量販店とデザイナーのコラボでは、米国のディスカウントストアの「ターゲット」が有名だ。アイザック・ミズラヒなんかとコラボして商品を売り出していた。デザイナー側もロイヤルティやライセンス料が入るので、経営的にはメリットがある。

 しかし、長い目で見ると、PB展開はブランドイメージのプレステージ性がバジェットレベルに落ちていくリスクもはらんでいるのだ。

 さらにセブンイレブンのシステムを生かすがあまりに利益優先になると、ゴルチェPBの原価率を下げしまう恐れが無きにしも有らずだ。これはユニクロがジル・サンダーとコラボした「+J」でも感じられたことである。

 ユニクロ側はジル・サンダーにデザインのロイヤルティを支払うが、ユニクロとしても適正利益を出さなければならないため、素資材などの原価率を下げているような「代物」に見えてしまう。

 ユニクロはレギュラー商品の方がはるかにクオリティは高い。これではせっかくのクリエーションが生かせないし、ブランドとしても根付いていかない。

 また、売場づくりやVMDについても、ユニクロの店舗では、ジル・サンダーの世界観を表現できるとまでにはいかなかった。 一応、+Jは昨年秋と今春に復活しているが、商品のクオリティも売場づくりも、従来のままである。

 量販店、コンビニのDNAで仕掛ける限り、ゴルチェPBも同じ轍を踏むのではないかということである。これでは往年のゴルチェファンの期待を裏切り、新しいファンを獲得するとまでには行かないと思う。

 ユニクロとセブン&アイでは、衣料品製造のキャパが違う。生産ロットはユニクロの比ではないだろうから、なおさら効率を追及するとファッションとしてはどうなのか。

 +Jという先例があるだけにシステム頼みのPBは、非常に難しいケースになるのではないか。旬のゴルチェを知る人間としては、心配は尽きない。
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イベントさえできればいい。

2015-03-11 06:37:25 | Weblog
 3月5日、22日に開催される福岡アジアコレクション(FACo)の記者発表が福岡商工会議所で行われた。

 主催者側は、ショーに参加する地元のメーカー・卸、個人デザイナーが14ブランドと発表した。しかし、集客とショーの尺を埋めるためにアズールバイマウジー、ヴィッキーなどのNBも12ブランド(マリエッタは地元メーカー、ダブルハートは地元通販企業)も登場する。

 FACoは福岡県や福岡市、商工会議所などから支援を受けているため、どうしても「福岡」「地元」を強調するが、観客を呼ぶには全国的な人気ブランドに頼らざるを得ない。そこがプロデュースに当たるRKB毎日放送の能力の限界を示す。

 一方、FACoを主催する福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、昨年8月の福岡ファッションフォーラムで、推進会議の活動についてファッションだけでなく、「食やコンテンツ制作と連携」もあると公言した。

 フォーラムにゲスト主演していた地元芸能事務所ジョブ・ネット所属のLinQは、地元企業のいろんなキャンペーンに参画する。また、ゲームソフト「妖怪ウォッチ」が大ヒットし、数々の賞に輝いたレベルファイブは、地元のコンテンツ制作会社だ。

 現状、レベルファイブは別としても、LinQが今年のFACoに出演する。このことを考えると、企画運営委員長、FACoプロデューサーの意図は、だいたい想像がつく。

 つまり、実質のRKB毎日放送の自社「事業」であるFACoを「ファッションのみに限定して」いては、予算の出所がジリ貧になるからだ。いや、もうなっているからだ。

 会場の福岡国際センターのキャパは限られる。いくらスーパーアリーナ席が完売しても、チケット収入はこれ以上増やせない。前年度の観客をメルマガなどで囲い込むとしても、気移りの激しいF1層を確実にリピートさせることは容易ではない。

 それは出演するタレントの顔ぶれを見てもわかる。蛯原友里や押切もえは2月28日の東京ガールズコレクションに出演したため、この時期の地方営業は余裕だろう。昨年、レコード大賞の新人賞に輝いた西内まりやは、地元に凱旋するという大義がある。

 ただ、筧美和子はテラスハウス以降、タレントとしての立ち位置が明確でないし、モデル体型ではないことは多くが知っていることだ。事務所に無理矢理ねじ込まれたか、それとも予算の都合でそうなったのかと言っても、過言ではない。

 言い換えれば、タレントしか打つ手がないローカル放送、FACoプロデューサーの事情が垣間見える。だから、スポンサーを確保できないと、自社の利益は出せなくなるのだ。

 一昨年は、福岡市が財源にしている福岡競艇の元締め、「ボートレース振興会」をFACoのスポンサーに付けていた。ファッションとギャンブル。それだけを見ても、すでに何の接点もない。

 イベントには10代の未成年者も来場するのに、競艇がスポンサーとは恐れ入る。Jリーグでさえ、酒類メーカーやパチンコ産業などのスポンサードは、レギュレーション上で厳格化されているのに。

 この辺がRKB毎日放送の凡庸プロデューサーぶりを露呈するが、あっさりスポンサーが外されているところを見ても、営業の迷走ぶりが窺い知れる。




 今年は持ち帰り弁当のホットモットを展開するプレナス、結婚式場ノートルダムマリノアを運営する愛グループ、美容整形のヴェリテクリニック福岡院などが、地元企業としてスポンサーについている。

 プレナスは代理店の「H」の大口スポンサーでもある。RKB毎日放送を系列傘下に置くTBSはここ数年、DからHに急接近している。考え過ぎかもしれないが、Hが系列放送局の事業にスポンサー確保に動くことは、無きにしも有らずだ。

 愛グループはこれから婚礼期を迎える層と観客がリンクする。名簿を入手することは、法的に厳しいが、婚礼予備軍に社名やブランドをアピールすることはできる。

 ただ、同社の婚礼組数は延べ550組程度。700組というダントツの実績、企業としての人気度ではアイ・ケイ・ケイに大きく水をあけられている。とすれば、FACoなんかスポンサードより、別のマーケティング手法を考えた方がいいのかもしれない。

 明暗を分けるのは、スポンサーの常連だったHRKとストーンマーケットだ。

 地場化粧品メーカーのHRKはスポンサーを降りている。こちらも同社のターゲットとリンクするが、年商は12年9月期の80億9,800万円から13年9月期で77億6,000万円とダウン。協賛しても何のメリットもないことがはっきりしたということだろう。

 ストーンマーケットはスポンサーを継続するが、年商は2年連続で下降している。14年3月期は売上高約73億円で、営業利益はわずか1%台の7,464万円。有利子負債は33億円にも達する。とても客寄せ興行を支援するほど、余裕があるとは思えない。
 
 こうしたスポンサー事情を考えると、FACoを継続するには、行政ほかの資金的後ろ盾が欠かせないことが明白だ。でも、名目は公金が拠出される「ファッション事業」で有りながら、7回目を迎えても「地元ファッション産業へのリターン」はほとんどない。

 商工会議所の関係者から漏れ伝わってくる話では、推進会議自体の「経費削減」が言われているようだ。個々の事業が何の効果も無いのだから、当然である。

 先日、RKB毎日放送は早朝ニュースをパブ枠にして、改めてFACoの記者会見を報道した。モデル2名とLinQが推進会議の会長を務める末吉紀雄福岡商工会議所会頭を囲んだVTRを流しながら、「九州最大のファッションイベント」を強調した。

 九州最大という「ブランド力」を上げないと、安定したスポンサーを確保できず、イベントの継続はままならない。だが、毎年、目紛しく変わるところを見ると、スポンサーにとってはいかにメリットがなく、マーケティング効果が薄いということがわかる。

 今回、LinQを出演させるのは、地元タレントでギャラの安さもあるが、JA福岡の苺「あまおう」のキャンペーンに参画していたこともあるだろう。これは企画運営委員長がいう「食」との連携にも合致する。

 その裏には大手、中堅、地場を問わず新規スポンサーの確保したい、また行政にも経済以外の部局にまでの予算獲得の道を拡げたいと、なりふり構わぬFACoプロデューサーの思惑が透けて見える。

 実際にイベントを仕切るのは、神戸コレクションをプロデュースし、このほどニューヨークコレクションに「東京ランウェイ」で参加したアイグリッツだ。同社が企画する「神戸コレクション」には大阪毎日放送、兵庫県、神戸市が協賛している。

 企画運営委員長がクールジャパン・フクオカ、福岡の知名度向上、集客促進とご託宣を並べたところで、 イベントフォーマットはアイグリッツに頼らざるを得ず、所詮、FACoは神戸コレクションのコピーに過ぎない。

 RKB毎日放送の役割と言えば、行政とスポンサーとの顔つなぎでしかないだろう。

 イベント資金を拠出する福岡商工会議所は、一連の事業の大義を地元ファッション産業の振興としているが、真の狙いは若年のファッション事業者、商店経営者などから「組合員を募集する」ことに他ならない。

 現時点では、その両方とも達成していないと言える。ファッションウィーク福岡を含め稚拙な企画内容、客寄せ興行が続く限り、組合員の募集なんて永遠に無理だろう。

 いよいよイベントさえできれば良いイベントであることが鮮明になった。地元ファッションの振興なんて、当初から絵空事に過ぎない。言い換えれば、FACoは先が見えてきたということである。
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シティプロモーションというまやかし。

2015-03-04 05:52:46 | Weblog
 福岡市が2012年8月に始めたネット上の行政区「カワイイ区」事業が3月末で終了する。地元メディアは市の発表を受けて、高島宗一郎市長や担当部課長を取材し、夕方のローカルニュースで一斉に報道した。

 本人や担当者のコメントは概ね、「シティプロモーションのあり方は、どうあるべきかを考えないと。事業費1,000万円は高いと言われれば確かにそうだが、 岡山の1億円、香川の5000万円に比べると安いのではないか」というものだった。

 これを受けてか、事前収録か、某局は、ご丁寧に福岡市と両都市のプロモーション予算を比較したフリップまで用意し、市民に街頭インタビューを行っていた。

 しかし、事業が始まった経緯や陰で暗躍した利害関係者には一切触れていないし、報道もしてない。だから、費用面だけを見せられれば、市民が下す結論は自ずと想像がつく。

 福岡市から別に「事業」をもらっているからか。高島市長に飼いならされているのか。地元メディアは自社にとって都合の悪い報道はせず、市民を世論操作しているように感じてならない。また、福岡市が「事実」を公表しているかにも、疑問がある。

 そもそもカワイイ区の発端は、確固としたコンセプトがあったわけではない。高島市長が篠田麻里子と会談した時、「橋下大阪市長が区長を募集しているから、私も区長になりたい」との「思いつき」に、市長がKBC九州朝日放送の局アナ時代からの飲み友達で、市の顧問にむかい入れた後山泰一氏(現在は顧問を退任)が食いついただけである。

 福岡市は事業を始めた経緯について、篠田麻里子側から市の秘書課に「高島市長に会いたい」との連絡(いわゆる営業の申し出)があり、会談をブッキング。そこで、「ファッションで福岡を盛り上げたい」との話からカワイイ区が実現したと説明している。

 しかし、後山氏は13年1月の「財団法人九州経済調査協会」主催の講演『福岡市に見るシティプロモーションのいまーカワイイ区の先にあるもの』で、先の篠田麻里子の要望について、「冗談で、カワイクなれるし、福岡の女の人達カワイイし、カワイクなれるカワイイ区でいいんじゃないですかっていう会話があった」と、語っている。

 この講演では「ファッションで福岡を盛り上げたい」などという市側のような説明は、一切出てきていない。つまり、市は後付けの理由を勝手に作り、正当な手続きを踏んで予算執行され、事業化されたごとく取り繕っているように思えてならない。

 
 また、福岡市はカワイイ区をシティプロモに活用する上で、「市の認知度が低い」からと答えている。その根拠として民間会社に委託した「都市認知度調査」を挙げている。

 認知度調査は、12年12月に市が委託した「戦略的広報に関する調査」で、公募、審査によって福岡市内の「マーケティング専門会社」に選定された。

 この企業が「首都圏在住者などの福岡市に対する認知度」と「市民の意識」を調べたのだが、内容は「3ヶ月という短い期間」「インターネット上の調査」だけである。

 40項目ほどの質問で、アプローチが可能な対象者に対し、首都圏、福岡市、九州圏で合わせて1,500サンプル、市民の意識調査では市内で1,500サンプルを収集。しかし、この程度の調査で、そもそもプロモーションする材料が得られるとは思えない。

 調査会社との契約料は600万円もかかっている。この程度のものに600万円もかかるのか。甚だ疑問である。これも市民の血税なのである。

 後山氏は自らの講演で「福岡のことをみんな知ってるっていう前提のもとにプロモーションとかしてないかな。そういうまず仮説的に自分達は違うんじゃないかなと思った」「福岡って場所を、地図上で指せた人って何人ぐらいいらっしゃると思いますか。…実は福岡って場所を指せた人は30%なんですね」 と語っている。

 では、福岡よりはるかに有名なパリやニューヨークの位置を正確にわかる人間がどれほどいると言うのか。こうしたコメントを見ても、最初から意味のない調査結果をあげ、「福岡市の認知度が低い」との情報操作を仕掛けたのではないか。

 つまり、最初から「福岡にはシティプロモーションが必要だ」との結論ありきで動いてるふしが見られるのだ。

 事業が始まって、市のHPにサイトにはカワイイとは、「容姿だけではなく、感情表現が豊か、明るく人なつっこい、いきいきと輝いている、情に厚いなど、考え方、話し方、振る舞いすべての要素に用いられるもので、人をいとおしい気持ちにさせるすべての魅力・センス」と言い訳じみたものが書かれている。

 これを読むと、市民には何が言いたいかわからない。結局、市民に配慮した「文言」は何の役にも立たず、一部の市民から「カワイイ区は女性差別」の抗議を受け、篠田麻里子区長はわずか半年で退任するという笑えないオチがついた。

 一部の篠田ファンからは、ブログで福岡市の怠慢を糾弾する書き込みがあった。だが、事業の経緯を見ると、政令指定都市として税金を使ってまで「やること」ことなのか。この辺を議論しなければ、シティプロモーションという言葉だけで、何の実効性もない。

 シティプロモーションなんてものは、市民がいろんな情報発信することであって、東京のタレントを使ったから達成できるわけではない。ネットのアクセス数が認知度の向上につながるということにも、飛躍があるし、無理がある。

 クリック回数が増えたからといって、情報を得たと言い切ること自体がまやかしだ。それが本当に正確、信憑性があると言うなら、どれほどの情報が把握されているかの目安も、きちんと提示すべきである。

 篠田麻里子に代わって2代目区長に就任したカナダ人のミカエラ・ブレスウェートは、「福岡を紹介するブログのアクセス数が40万件以上あった」という触れ込みで、区長に選定された。ここでも多くの疑惑が持ち上がっている。

 選定は業者を決める選定委員会においての「提案競技評価」。いわゆるプレゼンによるコンペで5社の中から1社が選ばれている。 業務を約1,000万円で委託されたのは、広告代理店「BBDO J WEST」だった。

 選定委員となった二名の職員は、広報戦略課の課長と総務企画局企画調整部の部長。両名は13年11月に催された後山氏の結婚披露宴に招待されている。 経済観光局文化国際・コンテンツ部の部長も出席しているが、こちらは部下の課長が選定委員になっている。 

 後山氏は福岡パルコがオープンする時に、BBDO J WESTとフリーペーパー制作の仕事をしている。この代理店とは懇意の間柄だ。同氏はこの時期には、カワイイ区以外では10件の事業コンペで、選考もしくは選定委員に就いているのだ。

 当時、後山氏自身が経営する会社の登記簿には、「広告代理業」の記載があった。つまり、同業者が同業者選びに関わるという「癒着」以外の何でもないのである。それでなくても、市の事業に関わる利害関係者が後山氏周辺にはあまりに多過ぎる。

 さらにBBDO J WESTとの契約では、「ミカエラ・ブレスウェートが区長業務以外に、福岡でイベントなどの事業に参画すれば、その都度、ギャラが発生する」とのオプションまでついている。

 ブレスウェートが福岡に来ただけで、BBDO J WESTと所属する東京の「吉田事務所」には黙っていても、カネが入るという裏取引まで行われていたのだ。これは市議会である会派の議員が追及して発覚した。

 福岡市はこうした契約内容があることを公表していなかったし、事業終了のニュースでもメディア各社は少しも触れていない。区長業務以外の「地方営業」にまで、税金が使われることを知ったのなら、市民感情だって変わってくるはずである。

 地元メディアはこうした数々の利害、思惑、疑惑を一切報道していない。それどころか、都合の良い要素のみを挙げて、市民に対し情報操作を仕掛けている。 

 こうなると、高島市長への取材における質問も、市長の答えもあらかじめ用意されていたのではないか。メディアの体を成さず、高島市長に飼いならされているとしか思えないのである。

 そもそも論として、「カワイイ区」と「ファッションで福岡を盛り上げたい」が連動するはずがない。タレントが、あるいはメディアがどれほどファッションをわかっているのか。まずそこがおかしい。

 さらに事業と言っても、サイトをつくり、あとはイベントを開催する程度のものだ。地元ファッションにアプローチするといっても、大型商業施設止まりだ。そんなことで、プロモーションにつながるはずはない。

 タレントによっては、契約上、郊外のショッピングセンターのイベントは、断る輩もいる。何様のつもりかと言うことだ。福岡のファッションを盛り上げるのは、地元ファッション事業者とお客であって、代理店でもなければ、タレントでもない。

 こうした事業が次々に生まれてくるのは、利害関係者が「タレント市長」に対して、何でも事業を仕掛けて予算措置、行政後ろ盾による芸能人へのオファー、事業獲得を画策しているのが、手に取るようにわかる。

 カワイイ区は年度末の3月31日までは継続される。14日からは「ファッションウィーク福岡2015」が実施されるが、 福岡アジアファッション拠点推進会議の企画運営委員長は、企画コンペのオリエンテーションで代理店を前に、ずっと「カワイイ区との連動」を呼びかけていた。

 当然、利害関係者はお仲間だろうから、こうした裏事情をご存知の上で、堂々と発言していたということになる。この御仁にも何らかのメリットがあるのでは、疑われても仕方ない。

 昨年からファッションウィークの事業者に選定された代理店の「H」は、自社のアカウントにはならないカワイイ区で、最後にサプライズを用意しているのだろうか。

 どちらにしても今月末でカワイイ区は終了する。これまで経緯を見ると、すでに水面下で別の事業計画が動いているだろう。その予算獲得に向け、高島市長の周辺で利害関係者が蠢いているのは、想像に難くない。
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