2年ほど前、かつて付き合いがあったメーカーから「メンズのコートをデザインしませんか」とのオファーが舞い込んだ。「えっ、メンズのコート?」「オレはレディスが専門だから」って一瞬ためらった。
でも、「たまにはいいじゃないすか」「レディスのテイストは無視していいのですから」と頼まれ、それじゃと引き受けてしまった。スタイル画レベルで10枚ほどデザインを描いたが、結局、サンプルまでを作ろうとなったんは1点だった。
こっちもせっかくのメンズデザインだから、レディスの感覚は捨て頭を切り替えて臨んだつもりだったが、無骨、堅牢、定番、機能性等々、いくらキーワードをあげても、メンズのデザインでは遊べない。
インスピレーションが枯渇したかって思い始めた瞬間、誰もがとるメンズデザインの定石、ミリタリーが思い浮かんだ。これならイケるかもと、世界のミリタリーデザインでいちばん颯爽として、質実も秀逸、そして存在感を醸し出すドイツの軍服を参考してみた。
ただ、単にドイツ軍のトレンチコートではあまりにベタなので、将校が着るブルーグレーのコートを究極までデフォルメしてでき上がったのがこれである。モードの匂いを出すために内襟のポケットのフラップの色を替え、袖をレザーに切り替えた。
生地はイタリア製フランネルのスーパー150’Sと袖の革には軽めのラムを使った。素材はすぐに手に入り、パターン製作、サンプル手配と順調に進んだものの、なんせメンズの展示会でこんなデザイン優先のコートを付けるバイヤーなんてそうそういない。結局、オーダーは取れずVOIDになってしまった。
あれから2年、今年の秋冬トレンドではメンズもレディスも異素材を組み合わせたアイテムを発表しているデザイナーは多い。例えば、グッチのフリーダ・ジャンニーニ然り、NYコレクションのケネス・コール然り。パリのメーカーもジャケットやコートでバイマティリアルをいくつも企画している。
まあ、デザイナーなんて考えることは一緒だな…と思い切って完全に商品化してみることにした。運良くメーカーの作品資料として残っていたので、それを買い戻し、ディテールまで完璧に作り上げることにした。
ただ、メンズのコートで肩のラインをきちんと出すのは簡単そうにみえて、実は難しい。ソフトな素材は肩山にぐし縫いを入れて丸みをつくっても、素材の甘さによって時間を経ると型くずれしやすくなる。
さらに問題は袖の切り替えである。フランネルとレザーという異素材の組み合わせになると、それぞれの生地の収縮率が違うし、袖はレザーだからアイロンでいせこみをするわけにはいかない。ここら辺の問題をどうクリアするか。工場の担当者と詰めるのに時間を要したのである。
いつも、難しいデザインばかりで申し訳ない。詳しい縫製仕様を説明するには、時間が足りないのでき上がったときに解説するとしよう。この時期冬物の製造が一段落した工場が閑散期に入るため、快く引き受けてくれた。あとは上がりを待つばかりだ。
いつもコラムで業界のアレコレにブツクサばかり言っていると、時々、「ど~も我々アパレル関係者に批判的なご様子。ワタシの友は、現役が多いのであまり愉快ではありませんね」「批判、問題定義も結構ですが、打開案を示して実行される様子なら関心も湧きますが、ど~も違うご様子」なんぞ、百貨店系アパレル、NBの企画担当者などからコメントをいただく。
あまり自分の作品をひけらかしたくないのだが、そう言うならこの場を借りて誤解を解いておこう。そして、ひと言言わせていただく。専門店系マンションメーカー出身の感性と企画力は、売れ筋狙いの大手アパレルとは違うし、アンタらなんかに負けるかということを。
でも、「たまにはいいじゃないすか」「レディスのテイストは無視していいのですから」と頼まれ、それじゃと引き受けてしまった。スタイル画レベルで10枚ほどデザインを描いたが、結局、サンプルまでを作ろうとなったんは1点だった。
こっちもせっかくのメンズデザインだから、レディスの感覚は捨て頭を切り替えて臨んだつもりだったが、無骨、堅牢、定番、機能性等々、いくらキーワードをあげても、メンズのデザインでは遊べない。
インスピレーションが枯渇したかって思い始めた瞬間、誰もがとるメンズデザインの定石、ミリタリーが思い浮かんだ。これならイケるかもと、世界のミリタリーデザインでいちばん颯爽として、質実も秀逸、そして存在感を醸し出すドイツの軍服を参考してみた。
ただ、単にドイツ軍のトレンチコートではあまりにベタなので、将校が着るブルーグレーのコートを究極までデフォルメしてでき上がったのがこれである。モードの匂いを出すために内襟のポケットのフラップの色を替え、袖をレザーに切り替えた。
生地はイタリア製フランネルのスーパー150’Sと袖の革には軽めのラムを使った。素材はすぐに手に入り、パターン製作、サンプル手配と順調に進んだものの、なんせメンズの展示会でこんなデザイン優先のコートを付けるバイヤーなんてそうそういない。結局、オーダーは取れずVOIDになってしまった。
あれから2年、今年の秋冬トレンドではメンズもレディスも異素材を組み合わせたアイテムを発表しているデザイナーは多い。例えば、グッチのフリーダ・ジャンニーニ然り、NYコレクションのケネス・コール然り。パリのメーカーもジャケットやコートでバイマティリアルをいくつも企画している。
まあ、デザイナーなんて考えることは一緒だな…と思い切って完全に商品化してみることにした。運良くメーカーの作品資料として残っていたので、それを買い戻し、ディテールまで完璧に作り上げることにした。
ただ、メンズのコートで肩のラインをきちんと出すのは簡単そうにみえて、実は難しい。ソフトな素材は肩山にぐし縫いを入れて丸みをつくっても、素材の甘さによって時間を経ると型くずれしやすくなる。
さらに問題は袖の切り替えである。フランネルとレザーという異素材の組み合わせになると、それぞれの生地の収縮率が違うし、袖はレザーだからアイロンでいせこみをするわけにはいかない。ここら辺の問題をどうクリアするか。工場の担当者と詰めるのに時間を要したのである。
いつも、難しいデザインばかりで申し訳ない。詳しい縫製仕様を説明するには、時間が足りないのでき上がったときに解説するとしよう。この時期冬物の製造が一段落した工場が閑散期に入るため、快く引き受けてくれた。あとは上がりを待つばかりだ。
いつもコラムで業界のアレコレにブツクサばかり言っていると、時々、「ど~も我々アパレル関係者に批判的なご様子。ワタシの友は、現役が多いのであまり愉快ではありませんね」「批判、問題定義も結構ですが、打開案を示して実行される様子なら関心も湧きますが、ど~も違うご様子」なんぞ、百貨店系アパレル、NBの企画担当者などからコメントをいただく。
あまり自分の作品をひけらかしたくないのだが、そう言うならこの場を借りて誤解を解いておこう。そして、ひと言言わせていただく。専門店系マンションメーカー出身の感性と企画力は、売れ筋狙いの大手アパレルとは違うし、アンタらなんかに負けるかということを。