HAKATA PARIS NEWYORK

いまのファッションを斬りまくる辛口コラム

阪急MEN’S TOKYOに見た百貨店の限界。

2011-10-19 19:21:14 | Weblog
 久々に東京出張があったので、時間を作って銀座に寄った。愛用のダイアリー「NAVA settegiorni」は伊東屋しか扱ってないので、この時期に出張があれば必ず店で購入している。せっかくだから、百貨店業界が起死回生を狙う「阪急MEN’S TOKYO」も覗いてきた。
 率直な感想を言えば、エントランス上部にスーツ姿の市川海老蔵を大写しにした写真をドーンと飾り、ジェットセッタースタイルストアと銘打って、有名なラグジュアリーブランドをずらりと並べるなんて、バブル時代そのまま。「これって、今の東京で本当に売れるの」と、思わず口から出てしまった。
 有楽町マリオンの開業をリアルタイムで知っているものとして、クリエイティブの西武と格式の阪急のシンクロはそれなりに評価していた。しかし、時代ともに百貨店が衰退し、一向にデフレが収束しない日本で、バブル再来を望むかのようなラグジュアリーストアは、何とも滑稽に感じる。
 それとも、百貨店が起死回生と狙うターゲットとは、銀座を訪れる中国人の富裕層なのだろうか。そうであれば、多少の期待はできるかもしれないが、4階を占めるクリエーターズブランドやスタイリスト野口強氏がセレクトする「ガラージュD.エディット」は、バブリーでセンスレスな中国人にはそぐわないと思うし、理解できないだろう。
 さらに5階以上は普通の百貨店と何ら変わらないので、百貨店がメンズオンリーで1館作り上げるのは「これが限界です」と、青息吐息状態と言えなくもない。自らをファッショニスタと言うのはおこがましいが、DCブランドやインポートを着こなし、もはやファッションに対する感性も欲望も成熟(自分オリジナルを求める境地)してしまった人間にとって、ついに買いたいものには出会えなかった。
 売場や商品展開として参考になったのは、ダイアリーを買った伊東屋がユナイテッドアローズと共同で仕掛けた「伊東屋WITHユナイテッドアローズ」。箱入りのエンベロップは伊東屋らしい舶来イメージを出したかったのだろうが、ビジネス用に使うにはもったいない代物。
 かといって、コンケラーのような洋封筒はすでに使いつくされ、目新しくはない。紙の質感で勝負するなら、ハグルマ封筒の製袋を加えてはどうだろうか。UAのトラッドニュアンスというより、スタイリッシュなイメージだが。
 ビジネス的に総括すれば、商品はオリジナル編集や洋品の一部を除き、委託&消化仕入れになると思う。伊勢丹がメンズ館を立ち上げた頃から、ブランドのハコを取っ払って商品を編集する手法が取られてきたが、これでブランド派遣のスタッフは自社の商品だけ売りきれるのだろうか。お客さんはそんなことを考えて買い物に来ているわけじゃないし。
 また、売上げや在庫の管理はブランド横断の売場では非常に手間がかかり、かえって残業などコストがかかるのではないか。大きなお世話かもしれないが、小売り専門店を経験したものとして、商品は買い取るから自由に編集できるのだし、一生懸命売りきらなければならないのだ。でも、委託&消化仕入れが慣例の百貨店にそれができるとは思えない。
 阪急を後にして羽田空港に向かう道すがら、改めて東京らしい店とは何だろうと考えた。それは銀座から地下鉄で数駅の裏日本橋や御徒町あたりにヒントがあると思う。リノベーションしたビルの一室でひたすら創作に励むクリエーターの作品こそ、どれも刺激的だし、江戸技の復活と時代の息吹を感じさせる。
 そんなみずみずしい感性を完成度の高い商品としてプロデュースする方が、よほど今の時代に合っているように思う。そう感じるのは決して私だけではないだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする