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アニメ『うる星やつら』への小うるさい意見と感想

2022-12-23 10:28:32 | 趣味人的レビュー

アニメ『うる星やつら』第1クールの放送が終わったのを機に、小うるさいことをいろいろ言わせてもらおうと思う。

正直言って「高橋留美子が“来てる”わけでもないのに、なぜ今『うる星やつら』?」というのが疑問だった。『ゲゲゲの鬼太郎』の前身である『墓場鬼太郎』をアニメ化した頃のフジの「ノイタミナ」枠は、バリバリに「攻めてる感」があったが、今回の『うる星』にはそうしたものが全く感じられない。ましてやこれをやった後は『るろうに剣心』のリメイク版をやるとなれば尚更。もしかしたら、あの『約束のネバーランド2期』の大失敗によって、「ノイタミナ」枠は企画が立てられなくなりつつあるのだろうか?

私は大学時代、押井守らが監督をやった『うる星』の旧アニメ版をリアルタイムで見ていた。私の場合、『うる星』はアニメから入ったクチで、アニメを見てマンガも読むようになったが、旧アニメ版を知っている人はご承知の通り、旧アニメ版は高橋留美子のマンガ『うる星やつら』を原作にしながらも内容はかなり改変されてて、マンガを読み始めた当初はアニメとのあまりの違いに戸惑ったものだ。そのうちアニメとマンガは別物と割り切れるようになったが、私にとって『うる星』はアニメが主だっったため、アニメが終了とすると、自然にマンガも読まなくなってしまった(押井が『うる星』の卒業制作として作った劇場アニメ『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』を見たことも大きかったと思う。あの映画はまさに『うる星』ワールドを解体して見せたものだったから)。

そんな原作から外れて好き勝手に暴走した押井らの旧アニメ版は、当の原作者である高橋留美子にとっては不愉快この上ないものだったようで、今回の新アニメ版はその反省を踏まえて(?)原作から選りすぐりのエピソードを集めた「原作準拠」を標榜している(とはいえ、原作者の意向に沿ったアニメが視聴者から高く評価されるとは限らないことは『GUNSLINGER GIRL』が証明している)。

ちなみに高橋留美子のマンガ『うる星やつら』は、マンガ史的には学園ラブコメというジャンルを確立した画期的な作品と位置づけられる。それまで少年マンガ誌の学園ものと言えば、ちばてつや、本宮ひろ志、車田正美らが描いてきたような番長ものが定番だったし、出てくる女性キャラも無茶をする主人公を陰ながら支え、やさしく見守る、聖女のような少女ばかりだった。そこに高橋留美子は、一見清楚な美少女だが、実際は男たちとガチで渡り合い、あけすけで嫉妬深く腹黒い、二面性のあるキャラクタを物語に次々に登場させて、新しい時代の到来を見せつけた(実際、男女雇用機会均等法が施行されたのも、ちょうどその頃だ)。そういう意味で、『うる星やつら』は(あの時代において)先進的、革命的な作品だったことは間違いない。


さて、新アニメ版第1クールを見ての感想。今はジェンダー平等だとか何だとか、いろいろかまびすしい中で、原作のテイストを損なわない形で(合わせて、旧アニメ版を見ていた人にも違和感を抱かせないように)上手く作られている。制作したdavid productionはいい仕事をしていると思う。この新アニメ版が昭和のあの頃に放送されていたとしても、何ら不自然さは感じなかっただろう。

その反面、見るたびに「これって今の人が見て面白いんだろうか?」と思ってしまうのだ。旧アニメ版を見ていた私は懐かしさもあって何とか見ていられるが、正直、ギャグアニメとして全く面白くない。もちろん第1クールは登場人物たちの顔見せ的な要素が強いので、あまり面白くないだろうことは織り込み済みだったが、それでもさすがにこれはちょっとひどい。元々私は高橋留美子のギャグが合わないせいもあるが、これが「原作からの選りすぐりのエピソード」だとすると、旧アニメ版で押井守らが勝手に原作を改変してしまった理由がよく分かる。旧アニメ版だって毎回傑作だったわけではないが、間違いなく神回と言える回があって、ギャグもストーリーも少なくとも今回の新アニメ版より上だった。

何より、昭和に書かれた原作を令和の現代にも合うように作られていはいるものの、物語を見ていても今、『うる星』をリメイクする意味や必然性が全く見えてこない。どうせやるなら、『おそ松さん』のように昭和、平成を経て老人になったラムやあたるたちの今を描くとか、一応「原作準拠」ということにしながら押井守のように物語をぶっ壊すくらいに暴走して高橋留美子を激怒させるとか、『うる星』ではそういう先鋭的なことをしないと、やっぱりダメなんじゃないかと思う。

そんな思いを込めて、最後に『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』のエンドタイトル・シーンを(ネタバレにはならないのでご安心を)。ここで流れる「愛はブーメラン」は、いつも私には『うる星』へのレクイエムのように聞こえるのだ。


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