深く潜れ(Dive Deep)! キネシオロジー&クラニオセイクラル・ワーク(クラニオ)の蒼穹堂治療室

「ココロとカラダ」再生研究所、蒼穹堂治療室が送る、マニアックなまでに深く濃い、極私的治療論とお役立ち(?)情報の数々。

2023年秋アニメの感想と評価 3

2023-12-29 14:04:47 | 趣味人的レビュー

2023年秋アニメについての、ネタバレなしの感想と評価。途中切りしたものや1月も放送が続くものについては「1」、「2」で述べたので、この「3」では放送を終えたものについて述べる(『川越ボーイズシング』だけは、最終話となる第12話が放送されていない(放送時期も未定だ)が、ここに入れた)。

ちなみにアニメの評価については、私の場合、何より物語が面白いことが重要で、作品全体の評価の少なくとも半分はそれで決まる。逆に萌えやエロといった要素にはさほど興味はないし、作画崩壊も(目に余るほどヒドくなければ)問題にはしない。

以下、並びは50音順で、評価はA~E。

『アークナイツ』2期「冬隠帰路」

RPGが原作で、鉱石病という不治の病が発生し感染者に対する激しい差別が広がる世界で、感染者救済を謳うテロ組織“レユニオン・ムーブメント”に対して、鉱石病根絶を目指す製薬会社、ロドス・アイランドたちの戦いを描いた作品。1期「黎明前奏」の後半から、ロドスは龍門(ロンメン)でレユニオンの侵攻を阻止すべく戦っていて、2期はその「龍門編」?の続き。
1期と同じ全8話。Yostar Pictures制作のアニメーションは美麗で素晴らしいが、空気感が陰鬱な上にストーリーなかなか進展しない。加えてゲーム原作の作品全般に言えることとして、(ゲームをやらない私のような一般視聴者には)登場人物がやたらと多い上に関係性もよく分からないために感情移入がしづらい。なので正直、見ていてもいまいち楽しめないが、2期もつき合って見た。2期は、レユニオンでスノーデビル小体を率いたフロスト・ノヴァやメフィストの物語に、それなりに見所があったと思う。
評価はC~C+。

『アンダーニンジャ』

実は現代日本にも人知れずそこここに忍者が活動している、という話で、以前放送された『忍の一時(いっとき)』と似た設定の作品だが、個人的には『アンダーニンジャ』の方が断然面白い。忍者同士の謀略と殺し合いに一般人も巻き込まれて、多くの人間が次々に死んでいく、かなり血なまぐさいハードな作品なのに、登場人物たちのとぼけたやり取りが醸し出す絶妙の脱力感がたまらない。
花沢健吾の劇画調でリアルに寄ったキャラクタ・デザインがアニオタには今一つ受けないのか、あまり話題になっていない感はあるが、個人的には面白さで今期イチオシの作品。特に最終回の展開は「思ってたのと違う。この発想はなかった」という、ただただ意外の一語に尽きる。ネットでは一部に「ひどい投げ出しエンド」という意見もあるようだが、そもそも原作はまだ連載が続いているし、私はここをエンドに持ってきたのは制作陣の英断だったと思う。『ミギとダリ』と並んで今期の掘り出し物と言える作品。
評価はA-~A。

『陰の実力者になりたくて』2期

ヒーローものというのは基本、主人公の成長物語なのだが、『かげじつ』の場合、主人公はほとんど成長しない。もう登場時点で最強だから。だが彼はヒーローではなく陰の実力者になることが目標なので、普段はミドガル学園の冴えない生徒、シド・カゲノーで通し、裏では謎の組織「シャドウガーデン」を率いて世界の闇と戦う怪人、シャドウとして暗躍している(が、その「世界の闇」も実は彼のでっち上げたもの)。
シド=シャドウは基本的に自分がいかにカッコいい陰の実力者になれるかしか頭にない自己チューの俺様キャラだが、部下である「シャドウガーデン」の面々が超優秀でシャドウの意図を勝手に深読みしてしまうため、いつも世界をあるはずのない危機が襲い、それをなぜかシャドウが見事に収めてしまう…ことになる。
2期は「無法都市編」、「偽札編」、そして1期からの続きとなる「オリアナ王国編」が描かれる。「無法都市編」では、シャドウは出会う者たちに「月が赤い。暴走が始まる。もう時間がない」と繰り返し口にする。それはもちろん、そのセリフがカッコいいから。だが本当に、1000年の一度という赤き月は昇り、覚醒の刻はキター!
シリアスなヒーローもの(実際、『かげじつ』の表の物語は結構シリアスだ)を、その舞台裏まで見せた上に、それを主人公の意味不明な無敵さでちゃぶ台返ししてしまう、という破壊力は相変わらず。しかもラストがあんなことになるとは!?
評価はA。次は劇場版かぁ…。

『カミエラビ GOD.app』1期

突然、スマホのアプリで神候補に選ばれた者たちが、ただ1つの神の座を賭けてデスゲームを行う話。候補者はそれぞれのスマホから、戦うための特殊な力を引き出すことができる。似たような設定の話は『未来日記』や『プラチナエンド』などがあり、後から作られる作品は、そうした先行作に対してどういった新しい視点/表現/落としどころを示せるか、が鍵だが…。
ストーリーラインが全体的に陰鬱なため、フルCGのアニメーションは暗さややるせなさを中和するためか、キャラデザも色使いも非常にポップな感じの作りになっている。けれども視聴者が望むのは、そんな小手先の配慮ではなく、神候補とは一体何で、彼らはなぜ選ばれ、物語は最後にどこに行き着くのか、という点だ。そういうことで言えば、この『カミエラビ』1期は内容がひどく観念的、抽象的で、結局明らかになったのは、特に望むものも持たない主人公のゴローがなぜ神候補に選ばれ、彼の能力とともに現れたラルとは何者なのか、ということだけ。全体として何だか「“やさしい世代”向け人道的バトルロイヤル・アニメ」みたいで、そのエセ・ヒューマニズム的な姿勢が見ていて気持ち悪かった。
評価はD~D+。2期があるみたいだが、1期のこの中途半端さをちゃんと埋められるものになるのだろうか?

『川越ボーイズシング』(全12話中、放送された第11話まで)

ウザい俺様キャラが災いして他人とコミュニケーションが取れず、オーケストラの指揮者をクビになった響(ひびき)春男。私立川越学園高校で校長をしている祖母から、その高校に「ボーイズ・クワイア部」を作り全国大会で優勝できたら指揮者に復帰できるよう口添えする、と言われ、イヤイヤながらその話に乗ることに。かくして部員を集め、クワイア部が発足するが…。
物語設定はいわゆる高校の部活ものだが、かなり奇妙な印象の作品。まず主人公がいない。普通、群像劇であっても主人公となる登場人物がいて、そのキャラクタを中心に物語が進んでいくが、『川越ボーイズシング』には(回ごとにフィーチャーされる人物はいるものの)固定された主人公が本当にいない。そのため作品としての軸が欠けているように見える。また練習風景が少ないし、あってもユルい。例えば『青のオーケストラ』では夏休みもほとんどの時間を費やして練習するシーンなどがあったが、『川越ボーイズシング』はまるで同好会のようで、とても全国優勝を目指している学校のそれではない。そして何より、クライマックスであり最大の見せ場であるはずの全国大会のシーンのアニメーションがショボすぎる。確かにオーケストラ部などと違って、クワイア部は舞台の上で人が歌ってるだけの地味な絵面だが、その地味な絵面でも(あるいは、それだからこそ)表現できるものはあるはずなのに、止め絵が使われていてアニメーションにすらなってない! 私は作画崩壊も含めて、あまり気にしないタイプだが、さすがにこれはひどいと思った(多分、アニメの制作体制が破綻して、これで精一杯だったのだろうが)。
通常の部活ものにはないユニークな回などもあって最後まで見続けたが、評価はD。後は最終話となる第12話が無事放送されることを祈る。

『最果てのパラディン』2期「鉄錆の山の王」

端正な作りの異世界ハイ・ファンタジーの2期。3人のアンデッドに育てられ、彼らから剣技と魔術と生き方を学んだウィルが、灯火の女神の加護を受け、自らの人生を全うするために仲間たちとともに、神々さえ怖れる邪竜を討伐する旅に出る。邪竜が巣くうは、かつてドワーフ族の都があった鉄錆山脈だ。
この手の異世界転生ものは、主人公が「俺強ェェェ!」となって無謀な戦いに打って出て、多くの仲間たちを無駄死にさせる、という展開があったりするが、『最果てのパラディン』に限ってはそんなことは起こらない。超正統派異世界転生ものであるがゆえに逆にテンプレ展開を逃れている、という不思議な作品。意表を突く展開や大きなどんでん返しがあるわけでもないが、見ていて退屈しないのは物語が王道ど真ん中であるがゆえか。また個人的には、主人公ウィルが不死神スタグネイトや邪竜バラキアカと交わす、表面的な礼儀正しさの裏に強烈な悪意や害意が込められたやり取りが好きだった。
評価はB。

『邪神ちゃんドロップキック』4期?「世紀末編」

花園ゆりねによって魔界から召喚されてしまった邪神ちゃんが、魔界に帰るためどうにかしてゆりねを亡き者にしようと、あの手この手を繰り出すが、毎回ゆりねに返り討ちに遭う話。ついでに邪神ちゃんにつられて?地上(というか東京の神保町界隈)にやって来た魔界、天界からさまざまな者たちが、騒動を巻き起こす。
いや~何だかんだ言って続くなー。邪神ちゃんやゆりねだけでなく、それぞれの登場人物のキャラがちゃんと立ってるから、どんなネタにも対応できて、ギャグアニメとして一定の水準を保てているのが強みだ。この「世紀末編」は連続アニメではなく、制作資金をクラファンで募った1回だけの特別編で、公式が違法アップロードを合法化しているww。
評価はC+。

『呪術廻戦』2期「渋谷事変」第2クール

『呪術廻戦』2期の「渋谷事変」後半。『呪術廻戦』には当代最強の呪術師、五条悟というチートキャラがいて、彼が自由に動ければそれだけで話が終わってしまうので、その五条をいかに封じるかが物語展開にとって重要になる。実際、それが「渋谷事変」の1期放送部分だった。そして2期ではハロウィンに湧く渋谷の街が呪霊たちによって、文字通り戦場と化す。
「渋谷事変」の凄い点は、多くの一般市民が無残に殺され、街が廃墟と化すところをしっかりと見せたところだ。その救いのなさ、残酷さは『進撃の巨人』もかくや、と思わせる(これだけのシーンを超短期間で上げることを強いられた制作スタッフにとっても、それは同じだったかもしれない)。とにかく、見ているこちらの予想を超えて、全てに対して情け容赦ない「渋谷事変」だった、のだが…
この『呪術廻戦』は元々、両面宿儺(すくな)の散逸した指を全て集めるまでの物語として構想されたのだと思われるが、人気が出て想定より長く連載が続けられることになり、宿儺の指を集めて終わる話は「渋谷事変」で放棄(実は残りの指は全て呪霊の漏瑚(じょうご)が持っていて、虎杖(いたどり)に食わせたことで、この件は決着)し、新たな物語が(アニメでは3期として)接ぎ木(?)されることになった。こういうことは「ジャンプ」系のマンガでは珍しいことではないが、例えば『鬼滅の刃』も当初構想していた物語に無理な建て増しを繰り返した結果、細部にいろいろおかしなところが生じてしまっている。多くの人は「『ジャンプ』のマンガだし、その辺はしょうがないか…」と目をつぶれるのかもしれないが、私はどうにも気になってしょうがない。それと同じことが『呪術廻戦』でも起こるのではないかと勝手ながら危惧する次第。
が、それはそれとして作品の評価はA。

『ダークギャザリング』第2クール

母を連れ去った霊からその母を取り戻すために、強力な霊たちを集めている霊媒体質の小学生、寶月夜宵(ほうげつ やよい)、自らにかけられた呪いを解除し、同じ呪いを受けた幼馴染みの詠子も救いたいと願う幻橙河蛍多朗(げんとうが けいたろう)の元に、神に見初められ生贄になる運命を背負った少女、神代愛依が現れ、物語が加速していく。
夜宵が空亡(くうぼう)と呼ぶ、母を連れ去った霊を狩るため、そして愛依に憑いた神と対抗するため、夜宵、蛍多朗、詠子が準備を進める中、空亡と関わる別のグループも登場し、対決の時が近づく…というところで終了。
第1クールのレビューでも述べたが、この手のホラーは多くの場合、話がワンパターン化していくものだが、『ダークギャザリング』はホラー作品でありながら単純な怨霊退治ではなく、加えて異能力バトルの要素もあって、そうしたことでワンパターン化の罠から上手く逃れている。夜宵、蛍多朗、詠子という3人の関係性も面白く、毎回ワクワクしながら見ていた。
評価はA。原作マンガは連載が続いていてコミックも現時点で14巻まで出ているが、アニメでは2クールでコミック9巻(多分)まで消化してしまったので、仮に2期があるにしても当分先になるだろう。
作品評価はA。

『地球外少年少女』

かつて『電脳コイル』で一世を風靡した磯光雄が満を持して制作したオリジナルアニメ。ネトフリ限定だったが、全6話が3話ずつ前後編で劇場公開され、私はそれを見に行ってきた。なので、このTVアニメ版も既に物語を知った上で見たが、それでも超面白い。小説でも映画でもアニメでも、それを知る前と知った後では世界が違って見えるものがある。『地球外少年少女』は紛れもなくそんな作品だ。そういう意味で、2023年秋アニメのベスト1を選ぶなら、私はこの作品以外には考えられない。
AIが世界的に当然のように使われるようになった2024年。未成年宇宙体験キャンペーンに当選した3人の少年少女が日本の商業宇宙ステーション「あんしん」を訪れる。彼らを待っていたのは、人類初の月生まれの少年と少女。2人の頭には世界最高の知能と言われたAI「セブン」が設計したインプラントが埋め込まれているが、その隠れた不具合で多くの仲間を亡くしていた。そんな3人と2人の関係がギクシャクする中、「あんしん」にトラブルが発生。少年少女たちは生き延びるために協力せざるを得なくなる。
…と一応、粗筋らしきものを書いてはみたが、これは単なるパニックものではない。『電脳コイル』がコンピュータとオカルトの不思議な類似性を描いていたように、『地球外少年少女』が描くのはAIとオカルトの類似性の果てに待つ、人間の次の進化の姿である。だからこう言おう、「人間は2種類に分けられる。『地球外少年少女』を見た者と見なかった者だ」と。
評価はA~A+。

『デッドマウント・デスプレイ』2期

異世界で稀代の死霊術師と怖れられた屍(かばね)神殿は「災厄潰し」の異名を持つ戦士に斃された後、元の力を持ったまま現代の新宿に四乃山ポルカの体を借りて転生。最初は勝手が分からず右往左往したポルカ=屍神殿も、周囲の人たち(もちろんマトモな堅気衆ではない)の協力で、今は新宿で占い師「屍神殿」をやっている。だが、彼の周囲では得体の知れない者たちが蠢(うごめ)き、かつていた異世界を髣髴とさせる紋章や言葉まで現れる。
1期からの仕込みに加えて、2期からはまた新たなキャラも加わって、物語の行方が益々混沌としてきた(←本作に関しては褒め言葉)。私は多くの登場人物がそれぞれの思惑で動き、互いが互いを巻き込み、巻き込まれながら、それが1つのうねりのようになって物語を動かしていく作品(例えば以前放送してたのものでは『デュラララ!!』とか)が好きなので、この『デッドマウント・デスプレイ』は今期、個人的に最も次回が待ち遠しい作品だった。連載も続いているので全ての伏線が回収されることはなかったが、これだけワチャワチャした物語を切りよく綺麗にまとめた最終回もよかった。
評価はA。

『東京リベンジャーズ』3期「天竺編」

一応3期となっているが、OPは2期と同じ(2期が1番、3期が2番)なので、実質的には2期の第2クールか。
『東リベ』は未来の破滅的な状況を回避するため、主人公、花垣武道(タケミッチ)が過去に戻って奮闘する話なのだが、1期からタケミッチが過去で命を削り体を張って状況を変えても、未来に戻ると、よくなるどころか益々ヤバい状況になっている。その謎が今回の東京卍會(トーマン)と横浜最大の不良組織、天竺との全面戦争である関東事変で明らかになった…のか?
基本、タケミッチが過去に戻ってヤンキーのチームと戦う、というストーリーラインの繰り返しなので、私も正直なところ2期の途中は見るのがしんどくて、もう切ろうとも思っていたが、トーマンのトップに君臨する「無敵のマイキー(佐野万次郎)」の抱える絶望的なまでの孤独が見えた辺りから気を取り直して、こうして3期も見ることにした。
相変わらずいろいろとツッコミどころ満点の作品だが、そんなアラもヤンキー同士の熱い戦いで全てチャラってことでww。原作はこの「天竺編」の後も相当続くが、一応これをもって1期から続くタケミッチと稀咲(きさき)鉄太の因縁の対決が決着したので、(まだ続きがあるような終わり方ではあったが)アニメはここまででいいのではないか。
評価はC~C+。

『はめつのおうこく』

かつて魔女と手を取り合って発展してきた人間は、ここに来て科学技術文明へと舵を切り、超産業革命(ぎあ・エクスパンジョン)を機に魔女の殲滅へと踏みだす。人間でありながら魔女クロエの弟子として、彼女から魔術の奥義を授けられたアドニスは、クロエが人間たちによって惨殺されるのを目の当たりにし、人間に復讐を誓う。
自分の前に現れる者を全て敵と見なして攻撃するアドニスが痛々しい。アニメでは、胸の内に強い絶望を抱え、立ちはだかる人間をただ殺しつくすだけの復讐鬼だったアドニスが、1人の少女との旅を通して人としての心を取り戻し、復讐者に変わるまでが描かれた。が、それと同時に、アドニスへの復讐を誓う者が生まれたところで物語は終わる(原作は連載中なので、『はめつのおうこく』という物語自体がここで終わるわけではないが)。
アドニスのみならず、主要な登場人物がそれぞれに二面性を持った存在で、それがこの作品を単純な「復讐もの」ではないものにしていたと思う。そういうところが私は結構好きだった。
評価はB-~B。できれば2期もやって欲しいが…。

『ミギとダリ』

神戸にあるアメリカを模したオリゴン村に住む園山夫妻は、施設からある少年を養子として迎え入れるのだが、園山秘鳥(ひとり)と名づけられたその少年には、園山夫妻も知らない秘密があった。それは、秘鳥とは実はミギとダリという双子による二人一役である、ということだ。
この作品、最初は双子が二人一役で1人の養子を演じるという、ドタバタのシチュエーション・コメディかと思っていた。が、回が進むにつれて、彼らが二人一役というリスクを冒してまでやらなければならなかったことがオリゴン村の抱える闇とともに浮かび上がり、物語のトーンがコメディからサスペンスへと一変し、一気に『ミギとダリ』という作品の本当のテーマが明らかになる。これが素晴らしい。
ところでふと思ったのだが、ミギとダリの容貌やオリゴン村の異国風の町並み、物語の乾いたトーンなど、これは昔のTVマンガ(当時は「アニメ」などという呼び方はなかった)『妖怪人間ベム』へのオマージュではないのか?
原作は『坂本ですが?』と同じ佐野菜見。Wikipediaによると、彼女は
>『ミギとダリ』のアニメ化を2か月後に控えた2023年8月5日、癌により死去。36歳没。
とあり、この『ミギとダリ』は彼女の遺作のようだ。
評価はA。

『ラグナクリムゾン』前半

人間が竜の脅威に直面する世界。その中で唯一、竜を殺すことができるという銀剣を振るい、報酬を得る者たちが「狩竜人(かりゅうど)」だ。最弱の少年狩竜人、ラグナにとって、彼がバディを組む、若干12歳ながら天才の名をほしいままにする少女、レオニカ(レオ)は憧れだった。「強くなれなくてもいい。レオのそばにずっといたい」というラグナの願いは、しかし圧倒的な力を持つ上位竜の出現によって、あっけなく打ち砕かれた。だがその時、レオは自らの「強さ」とつながり、彼の唯一無二の盟友にして怨敵でもあるクリムゾンと「再び」出会い、彼らの「竜を狩る旅」が始まる。
──というのが初回1時間SPの内容。最弱だった主人公が何かのきっかけでいきなり覚醒して最強に生まれ変わる、というのは、この手の異世界ものの定番の展開で、定番過ぎてちょっと萎えてしまうが、この『ラグナクリムゾン』は最強になるまでの過程がとても興味深い。これは量子論における「時間対称化された解釈」に基づいているのでは?
この前半は、ラグナとクリムゾンが「銀器姫」の異名を持つスターリア・レーゼ率いる「銀装兵団」と手を組み、アルテマティアを血主とする竜の血族「翼の血族」との全面戦争に入るまでが描かれた。ラグナ&クリムゾン+銀装兵団も、翼の血族も、それぞれに弱点を抱える中でどのような戦いが繰り広げられるのか楽しみだ。
評価はA-。

『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』1期後半

昔の「ジャンプ」マンガの再アニメ化。ネットなどではほとんど話題になっていないように思われるが、私は原作も旧アニメも見ていないからか、結構面白く見られている。
「不殺」の誓いを胸に、るろうに(流浪人)として今は神谷道場に居候している緋村剣心。しかし、幕末、維新の動乱の時代の燃え残りたちによって、剣心の心は捨ててきたはずの「人斬り抜刀斎」だった頃に立ち戻らざるを得なくなりつつある。
幕末、維新のドラマは大抵、江戸城無血開城がクライマックスで、後はいきなり銀座辺りの煉瓦街を馬車が走っているシーンが挿入されて終わる、みたいな作りで、明治初期の日本がどうなっていたのか描かれることは少ないが、例えば『警視庁草子』などの山田風太郎の〈明治もの〉を読むと、相当に荒んだ時代であったことが分かる。そして『るろ剣』はマンガ/アニメ的にソフトになってはいるものの、確かにそんな時代の匂いを感じさせる作品である。
評価はC~C+。2期「京都動乱編」は2024年放送予定。


最後にアニメ本篇の評価とは別に、2023年秋期に放送されたアニメから、純粋に私の趣味で選んだベストOP曲とED曲を。

まず私が選ぶベストOP曲は『はめつのおうこく』の、Hana Hopeが歌う「消えるまで」。

そして私が選ぶベストED曲は『ミギとダリ』の、Nulbarichが歌う「Skyline」。


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