ダンナのぼやき

あられダンナの日々のぼやきです。
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CLASH OF THE TITANS

2010-05-02 19:40:26 | 映画
『タイタンの戦い』を観ました。

レイ・ハリーハウンゼントが最後に手掛けて、自らの現役引退を表明した81年の傑作『タイタンの戦い』をリメイクした作品。

個人的には子どもの頃、オリジナルを初めて観た時、あまりのカッコ良さと面白さに驚喜したのを鮮明に記憶している。
本当に大好きな映画であり、ファンタジー系の作品として最高傑作の一つとも言えると思う。



リメイクされると聞いて、最初はある意味で「聖域を侵す」ほどのハリウッドにおける深刻なネタ不足を嘆いた。
だが、それもリメイク版の最初の予告篇を観た途端、様々な懸念は一気に期待へと変化した(笑)。
かのホラー映画の最高傑作『悪魔のいけにえ』が、新世紀に『テキサス・チェーンソー』としてリメイクされた様に。
オリジナルに対して最大限の敬意を払いつつも、創意工夫によりまた別の意味で違う作品に生まれ変わる可能性も高い。

僕がそう思えた決定的な要因として、フランスが生んだ爆裂弾丸野郎ルイ・ルテリエが監督だから。

あの『インクレディブル・ハルク』を原作のアメコミらしさ持ちつつ、かのTVドラマ版『超人ハルク』の雰囲気を甦らせ、怪獣映画的として大胆に再生・映画化した豪快な手腕は素晴らしかった。
ルテリエの才能ならば、この難しい問題をクリアー出来ると確信めいたものがあった。

さて、実際にリメイク版『タイタンの戦い』を観た感想だが…コレが実に素晴らしかった。

ただハッキリ言うと、予想通りリメイク版はオリジナルとは全くの良い意味で“別物”になってます(笑)。
ぶっちゃけた話、コレはヒロイック・ファンタジーで味付けした怪獣映画だ。
だからこそ大好きだし、素晴らしい!と思えたのかもしれない(自嘲)。






(注意!:ネタバレ有り!!)






物語自体はオリジナルとあまり変化は無い、神と人間の間に生まれた勇者ペルセウスと、冥王ハデスの生み出した奇怪な怪獣達との戦いと冒険を描いている。
ただ昨今のジャンル映画でありがちだが、いわゆる主人公が「選ばれた者」である事が本作でも大きく影響している。



ペルセウスは大した苦悩や修練等を積む事もなく、いきなり強くて無敵状態だし、「神の子」モード全開でアイテムを獲得していくRPG感覚でサクサクとストーリーが展開される。
かの天界の天馬(ペガサス)にしても乱獲されておらず、前触れもなくペルセウスのもとに飛んできて、練習無しで乗れて飛べてしまう(笑)。
リメイク版のペガサスはオリジナルの白馬と違い、漆黒の黒馬っていうのはヴィジュアル的に非常にカッコ良いが、この「選ばれし者」というドラマは物語を薄くしているのは事実。



そのせいか主人公ペルセウスよりも、他のキャラの方が個性的で印象深いのは皮肉な効果だ。
武骨で冷静なアンドロメダ護衛隊の戦士ドラコ、武器調達と怪獣倒しの傭兵兄弟、リメイク版の新キャラである砂漠の精霊ジンの素朴な可愛さ。
そしてアンドロメダ姫ではなく、本作のヒロインである神の呪いにより不老となったイオの美しさが良い(肝心のアンドロメダ姫の存在が軽くなってしまったのは少し残念!)。



あの『アバター』以降、すっかり坊主頭のヒーローが板についたペルセウス/サム・ワーシントン。
野性的なペルセウスというオリジナルとは違うキャラを確立しているので、その内面的な苦悩や葛藤があっさりしていたのは勿体無い。
その男臭さをプンプンさせながら、激しいアクションをこなす大熱演だけにワーシントンが可哀想。
この人、本当にしっかりとした演技とアクションがこなせる逸材です。




オリジナルでもリメイク版でも、大きなテーマとしてあるのが「強欲で傲慢な神々との戦い」がある。
このリメイク版では、そこに冥王ハデスという明確な悪役を配置する事により、わかり易く「勧善懲悪」の図式が成り立っている。



それもあって諸悪の根源とも言える、全知全能の神であるゼウスの色ボケと傲慢さと親バカぶりが際立っているのもポイント(苦笑)。
更に、窮地において神への信仰をやたら煽る辺りは、欧米社会における宗教観の現れのように感じる。


しかし何と言っても素晴らしいのは、本作に続々と登場する魅力的な怪獣軍団の暴れっぷりだ。



ハデスの分身ハーピー、怪力(人間を引きちぎる!)を誇る獣人カリボス、何だか『スターシップ・トゥルーパーズ』っぽい巨大サソリ(戦うと体液まみれ:微笑)、オリジナルよりも妖艶な魅力に溢れた妖女メデューサ。
その生き生きとした情け容赦無い暴れっぷりと、キャラクター達が問答無用で秒殺されていく様は圧巻(笑)。

その中でも最も秀逸なのは、文字通りにクライマックスに登場する大魔獣クラーケン。



些か顔つきが今時のクリーチャー(『クローバーフィールド』の怪獣を彷彿する)っぽいのが残念だが、オリジナルを凌駕する堂々した大怪獣ぶりは最高。
特に海底から出現して街を襲撃していくのを、その巨大さと人間では絶対に立ち向かえないと印象付けるルテリエの演出の見事さも相俟って、惚れ惚れとする素晴らしい大怪獣ぶりに魂が震えました。
今製作中のハリウッド版『ゴジラ』にあって、ルテリエの監督起用が噂されるのも納得。
これだけのツボを心得た怪獣演出が出来るのだ、ファンとしてはルテリエの起用をお願いしたいです!!

あのクラーケンとの対決でルテリエがオマージュしたという『聖闘士聖矢』ではないが、ペルセウスの見栄の切り方といい、メデューサの首の出しタイミングといい、実に日本のアニメ的でした。
本作は単に怪獣演出が優れているだけでなく、ルテリエによるアニメ的でスピーディーかつ豪快なアクション演出が随所で冴えまくっていました。

ゼウスとハデスの因縁は未だあり、続編への伏線を残したまま本作は終わりを迎えます。
果たしてホンマに続編を作って、『タイタン』をシリーズ化しようと言う根性があるのでしょうか?!
興味深いです。

ちなみに元々2D映画として撮影された本作、その持ち味を堪能する為に3Dでは観ませんでした。
それでも充分に楽しくて面白かったです、怪獣映画ファンは先入観を持たずに劇場で体感して下さい。


「ペルセウスよ、決して神にはなるな!」