SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その20 ピアノ協奏曲編1)

2006年12月20日 01時04分22秒 | オーケストラ関連
★ショパン&リスト:ピアノ協奏曲第1番
                  (演奏:ユンディ・り (p) 
                         サー・アンドリュー・ディヴィス指揮
                             フィルハーモニア管弦楽団)
1.リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調 S.124
2.ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
                  (2006年録音)

これは差込の記事です。当初の予定にはありませんでした。
あと多分にやっかみが入りますのであらかじめお断りしておきます。(^^)/

さて、このディスクですがジャケットが違うというお声があるかもしれません。
そう、違うんです。。。
これは内ジャケ!!
外ジャケはこれです。別に勿体をつけるようなことではありません。


「何でそんなことするんだ!」という声はないと思いますが、多分にこの記事を書いてる私のほうに思惑があるもので。。。

実は、このディスクは私の所有ではありません。
  誰のものか・・・?
    かみさんの。。。です。
  イ・ムジチを除けばクラシックのディスクは5枚位しか持ってないかみさんの!?

16・17日の土日に留守宅に帰ったのですが、かみさんが見せたいものがあると言って見せてくれたのがSMAPのポスター。。。ホントに嬉しそうで結構なこってす。
なんでも、DVDだかCDだかを買ったらもらえたといって大事そうにしまってありました。
「ポスターなら飾れよ!」とも思いましたが、その場では本能的に言い忘れるという選択をしました。

もう一枚買ったCDがあると言って見せられたのが、このユンディ・リくんでした。
デパートのCD売り場でかかっていたのを聞いて、店の人にどれかを聞いて買い求めたのがこれだったそうです。だとしたら、かみさんの性向からしてリストのほうだったろうなぁ。
本人に「かかってたのは、この盤のどの部分?」と聞いたけどすでに「判らない」と言っているくらいだからアヤシイものです。

それで何を言い出すかと思ったら、
「外ジャケより、内ジャケの写真のほうがロマンチックでいい!」
ということでした。。。

「あっ、そ!」ってなもんですが、嬉々とした顔で訴えるかみさんを認識して、本能的にここは聞き役に徹するべしという第六感が働き、そのミッションを遂行しました。要はそんないきさつがあったもので、愛する妻が好きな内ジャケを冒頭にしたわけです。

さて、あいづちは打つもののかみさんが話す言葉をまったく耳に入れることなく、視覚的情報からかみさんの台詞が収束したのを確認して「俺もちゃんと聴くために東京に持って帰りたいから貸せ!」という趣旨の内容を親しみを込めた言い回しで伝えてみたのですが、「だめ! 私もちゃんと聴いていないから!」だって。

「きみはディスクを購入した後に、まず何を鑑賞するのだね?」と言いかかったのですが、私の賢明な体の中でエマージェンシー・コールが響いたかと思いきや、突然リセットキーを押すという選択がなされたようで、暫く無言で立ちすくむだけで事なきをえました。

さて「ごちそうさま」と言われない先に痴話げんかめいた話は止めて、肝心の演奏の感想に移ります。ちなみにディスクマンにパソコン専用スピーカー(一応音楽用)を繋いで聴きました。いつものコンポじゃないので、そこはご容赦を!

まずリストは相変わらず伸びやか・しなやかとしか表現できないような演奏。適度に迫力もあるし、特に気づいた点は彼の右手が「ヨーイドン!」でジェリーのように走り回る。それが若干のタメの後に美しい音色でしなやかというか本当に自然に駆け回るので耳をそばだてさせられるのは分ります。確かに、この点はユンディ・リでしか聴けない部分(美点)です。

でも私の総評はユンディ・リ“を”聴かなくてはいけない事情がある方はいざ知らず、ユンディ・リ“で”聴かなくてはいけない理由は余りないかもね。。。というもの。
もちろん第一級の演奏だと思いますよ。この奏楽で楽しめないということは一切ありません。
でもこの世界、“超一級”の演奏ってのもあったりするもんで。。。

翻ってショパンは、また訳のわからない例えで恐縮ですが“中国の霊峰の霞の向こうから聞こえる優雅なショパン”という感じ。
間違いなく東洋人の感性に基づいた歌だと思わせられました。
これは紛いないユンディ・りの個性が発揮された演奏であると。。。

いずれの演奏にも華があって大器であることは認めますが、冒頭の写真はねぇ~~~
オジサン許せません。キミはアイドルのアクターではない。
ツィメルマンはゼッタイしなかったぞっ!!!

といいつつ、初期の仲道郁代さんの一連のショパン盤のジャケットに掲載されているフォトを、毎度楽しみに見ていた自分を思い出している私。。。

女性はいいの!!  オトコはダメなの!!!  というのが結論!

あと気づいたのはオケが凡庸。どこまでもリ君に屈託のない笑顔で寄り添っているばかり!
A.ディヴィスって本当はいい指揮者なのに。。。
プロデューサーから「リを立てて、丁々発止するな」とでもいわれたのかしらん。

もう一つこの記事を書くに際して(かみさんがディスクを貸してくれなかったので)、ユンディ・リの公式サイトから情報を取ったのですが、曲順がディスクではリスト→ショパンなのに、ディスク紹介の曲順はショパン→リストになっているのも気になる疑問。
 ♪なんでだろう~~♪

やっかみが入ると、あたしゃシツコイよぉ~~~。
ちなみに、ウチのかみさんはヨン様も好きです。

★アルゲリッチ:5大ピアノ協奏曲 (2枚組)
                (演奏:マルタ・アルゲリッチ (p) 
                     デュトワ(1) アバド(2~5)指揮
                     ロンドン交響楽団(1~3)ベルリンフィル(4.5))

1.チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番
2.ショパン:ピアノ協奏曲 第1番
3.リスト:ピアノ協奏曲 第1番
4.ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調
5.プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番
                  (1968年録音:ショパン・リスト)

このディスクは20年近く前に紙パック包装の廉価盤で手に入れたのですが、必然的にジャケットがないために当初はこの特集記事に載せず“封印”しようと思っておりました。しかし、他でもないユンディ・リのお陰でいかにも“廉価盤の中ジャケ”という風貌で蘇ってもらうことになりました。

それは2つの理由によります。
ひとつ目はリ君もアルゲリッチもショパコンの優勝者であるということ。
ちなみにリの優勝は2000年、アルゲリッチは1965年優勝ですから35年の月日を経ての後継者ということになります。
そのときリは1982年生まれなので18歳、アルゲリッチは24歳でした。
リスト&ショパンのコンチェルト録音はリが23歳、アルゲリッチは27歳位のときです。

そこで演奏の聴き比べですが、アルゲリッチは王道です。
リストは泰然自若。久しぶりに聴きましたがアルゲリッチの才気煥発といったイメージは余りなく、きちんと弾き進めていく姿に却って空恐ろしいものを感じました。本当に、曲との一体感がこのピアニストの場合恐ろしく高い。その曲がそのようにあるべき姿で、寸分の違いもなく収まるべきところに収まっているということに改めて驚かされました。
座りがいいって言うのはこういうことを言うんだといわんばかりの内容です。

逆にアバドがいろいろやってるのが笑えました。
トライアングル協奏曲などと揶揄されたこの曲ですが、曲の終わり際なんかティンパニ協奏曲(!)になっています。
録音のせいというには最後だけやたらティンパニが目立つというのも。。。
ちなみにショパンでも、管のオブリガートを強烈に吹かせてみたり「若いのぉ」と。。。

ショパンのコンチェルトはショパコン本戦のライブが、演奏に傷があろうが会場ノイズがしようが、“興奮のルツボ”やら“熱狂の嵐”の中では関係ない、って感じでかつては好きでした。その勢いたるや、連戦連勝のジャンヌ・ダルクの進軍というか、むしろアレキサンダー大王の東征みたいなイメージ。向かうところ敵なしでした。
しかし今すでに脂の抜けた私には、その3年後のスタジオ録音を聴いてルツボや嵐よりもむしろ、アルゲリッチのリを遥かに凌ぐ強靭なしなやかさと他にない安定感こそ正に“王道”であると再確認させられました。

ここでもアルゲリッチは音楽と一体になっているだけです。同じショパコン優勝者とはいえ音楽の“質量”が違う。。。
風格があるうえさらに若々しい演奏といったらいいでしょうか?
り君はあと3・4年で、アルゲリッチのこの境地に匹敵するところまでたどり着けるんでしょうかねぇ?
もちろん時代も、本人の資質、求めるものも違うので、健やかな彼自身の境地の開拓を祈りたいものですが、ここまでの訴求力を身に付けようと思うとまだまだ大変だぁ~というのが、私の率直な実感です。

アルゲリッチ・ポセイドンに蘇ってもらった2つ目の理由は、他ならないユンディ・リのコメントにあります。

日ごろ(国内盤しかないものを除き)輸入盤ばかり購入しているので、ライナーは読まない(読めるわけねーだろーが!海外レーベルの代表はこぞって日本の音楽市場はデカいと言うが、ライナーに日本語訳を入れないのはマーケットをナメてるかないがしろにしている証拠だ(!)、と思っています)私ですが、たまさかかみさんが日本盤を購入したので何気に読んでみました。すると、次のようなユンディ・リの発言が目に止まったのです。(意訳します)

「私はショパコン優勝者ということでショパンを一方の中心に据えて演奏しているが、他方でラヴェルやプロコといった作曲家の作品にも惹かれている。その意味で、小さなころから慣れ親しんできたリストとショパンのコンチェルトをディスクに出来たのは自分のその両面を披露できて意義がある・・・。」云々

要するにラヴェルやプロコの協奏曲も自信アリってことね!!

アルゲリッチは1967年ですから26歳位のときに、上記曲目のとおり演奏しています。
まったく持って大した度胸じゃない?
この演奏を超えようと思ったら、とんでもなく大変ですよぉ・・・。
ユンディ・リには競争する気なんてさらさらないでしょうが、私が比べてしまう。善し悪しを云々する気はないけれど、出てきてしまったら「比べるな!」って言うほうがムリですよ!

ラヴェルはグラモフォンにアバドと再録して、そちらのほうが整っているけど生きの良さではこっちでしょう。プロコフィエフはこの目くるめく高揚感と最後の盛り上がりは、この曲の最良の演奏です。

更にまた、いずれの曲も夫婦だったこともあるデュトワと最近EMIに再録しています。
これもこれで文句の付けようのない演奏だけれども、私にはアルゲリッチのお母さんが演奏しているような気がしてしまって。。。
35年も経ればそうなるほうが当たり前なのかもしれませんが、少しこなれたというか老獪な色が感じられます。それを叡智の証と見るか、何の思い入れもない無垢な魂の翳りと見るかで評価は変わるのだと思います。

ムカシのも今のも持ってて、気分によって聞きわけるなんてなんてゼータク!!
私がどちらをチョイスすることが多いのかは、ご想像にお任せします。

そしてユンディ・リ君には、自身が愛するレパートリーで聴き手の私に「マイッタ!」と言わせてくれることを心から期待しましょう。
確かに彼こそ、そう言わせてくれるだろうピアニストの最右翼であることにはまったく異論はありませんからね。(^^)v

直接対決を避けて、ラヴェル・プロコとも左手一本で勝負なんてのも一興?
いやいや、ここは真っ向勝負あるのみでしょう。