★礒絵里子ヴァイオリン・リサイタル “ベルギー・コレクション”
《デビュー10周年記念 礒 絵里子
ヴァイオリン・リサイタル・シリーズ 第1回》
(演奏:礒 絵里子(vn)、岡田 将(P))
《前半》
1.ヴュータン:失望 作品7-2
2.イザイ:遠い過去 作品11-3
3.イザイ:悲劇的な詩 作品12
4.ヴュータン:ラメント 作品48-18
5.ヴュータン:ロンディーノ 作品32-2
6.ヴュータン:アメリカの思い出 作品17
(ヤンキー・ドゥードゥルによるおどけた変奏曲)
《後半》
7.ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調
《アンコール》
8.イザイ:子供の夢 作品14
(2007年11月27日、東京文化会館小ホール)
こうみえて(見えないか・・・)私とてちゃんと仕事に就いている。
今回のリサイタル、何としても聴きたいと思っていたが、今日に至るまで行けるかどうか判らなかった。
ともあれこうして出向くことができ、念願だった礒さんの演奏によるルクーのヴァイオリン・ソナタを堪能することができて本当に満足している。(^^)/
昨晩はこの時間を作るためにほとんど完テツ状態で作業をした。
おかげで今日の昼間は眠くて仕事にならなかった・・・が、とにもかくにもリサイタルには行けてよかったということである。
東京文化会館小ホール前の案内板・・・前半はこのドレス。(^^;)
この圧倒的な睡眠不足は、きっとリサイタル中の私の状態にも影響を及ぼしていたであろう・・・。
オチはしなかったが、前半は礒さんの音を漏らさず「浴びた」記憶はあるものの脳があまり適切に反応していなかったようである。
否、脳への伝達系に問題があったのかもしれない。
要するに、いつもは個々の曲へのコメントをくどくど書いているが、前半は多分はじめて聴いた曲ばかりだし、次の総論的な印象以外にどうしても文章にできない・・・ここまでの字数を使ってその言い訳をしたいだけである。(^^;)
このリサイタルは多佳子さんたち、あるいはデュオ・プリマとしてのコンサートのときとは違って、最初から最後まで1言もなく純粋に音楽だけを発信する体裁(こっちが普通なのかな?)で行われた。
もちろん、礒さんは気合の入った圧倒的な演奏で聴衆を唸らせたわけであるが。。。(^^)v
前半で気づいたこととして、まず最初楽器の響きがあまり伝わってこなかったように思えたことがある。
雨が降っていなかったからか・・・と思いもしたが、イザイの半ば辺りからだんだん音に艶も張りも出てきたような気がして、ヴュータンの楽曲に戻って後は、いつもと同じ私が「この音」と思って止まない音色が現われたので安心したことが上げられようか・・・。
前半をしりあがりに盛りあげていくことによって、後半のソナタに気分を高めるという意味では、それも綿密な計算のうち・・・なのかもしれない。(^^;)
そして楽曲については、それぞれに独特なメランコリーを湛えており『知られざる名曲』というに相応しいものばかり。
ベルギーに留学をされていた礒さんならでは・・・かどうかは知らないが、間違ってもお手軽な曲ではないけれど晦渋でもない。。。
一見禁欲的にも思えるが、よく聴くと退廃的とも聴こえるしエロス&タナトスを感じるとも言えるし固有の味わい深さをもっていた。
特にイザイの曲などヴァイオリンとピアノでポリフォニックにびみょ~にずれたことを言っているようで、そのあわいにたち表れる感情の揺れみたいなものに、きっとベルギーってこんなイメージなんだろうな・・・という思いを感じた。
もちろんヴュータンの曲も聴かせるものだったし。。。
もっとベルギーの・・・というよりこの2人の・・・音楽を聴いてみたいと思わせられる楽曲であったし、そう思わせられる演奏でもあった。
ヴュータンの“アメリカの思い出”は新津美術館で多佳子さんと演ったときに、アンコールで奏されたもの。
新津ではアフターアワーズで思わず会場を気楽かつ盛大に沸かせるように楽しく弾かれていたのに対し、今回は、気分が盛大に盛り上がったのは同じだが、なぜか随分格調高く弾かれているように思ったのは思い過ごしだろうか?
やはりプログラムの本割り・・・それも前半の締めくくりに配されている曲であるから、余韻を残したかったんだろうとは察しがつくのだが・・・。
下の写真は、礒さんのサイン入りプログラムである。(^^;)
冒頭写真は、そのサインをいただいている時に撮らせていただいたもの。談笑中の素敵な笑顔のところでシャッターを切ったはずなのだが、携帯なんでシャッターのタイミング、解像度、手振れ補正などさまざまな点において限界があった模様・・・。
後半はこの衣装にお召しかえであった!(^^)/
さて、前半最後にヴィルトゥオジティ全開で盛り上がった気分・・・どれほど盛り上がったかは、休憩時間に入った手洗いで「アルプス一万尺」をハナウタで歌ってた人が2名もいたことから明らかである・・・を引き継いで、メインディッシュというべきルクーのヴァイオリン・ソナタに期待がいや増す状況となっていた。
そして果たしてその演奏には全編完全にノックアウトされたと言ってよい。
主催者へのアンケートに「来てよかった」とまで書いたぐらい、気に入った・・・。(^^)v
この曲だけはずいぶん前から知っていた。
それも結構しっかりと・・・グリュミオーの2度録音したうちの後の録音のほう(伴奏がヴァルシのもの)を随分昔から持っていたから。
ただ、この演奏はひたすらセンシティブで美しいグリュミオーのヴァイオリンの音色に対して、必ずしもピアニストが鋭敏に反応していない・・・他にもアルペジオが強いと思われたり、伴奏というよりも、自分勝手に思うとおりに弾いているようなところがあるのも事実。
礒さんたちはそれをどのように解釈してくれるのか、今日はそれがもっとも関心ある楽しみであった。
聴衆のいる生演奏、NHKが録画しているなどの緊張感(演奏中は感じなかったけど、礒さんが気にしていないわけはないと思う)であることが幸いしてか、グリュミオーが考え抜いて出した弱音から若々しさがやや聴き取りにくかったことに比して、礒さんはずっとストレートに曲の機微を伝えながら若々しさも感じさせて素敵であった。
冒頭の夢見がちな若者の空想をたどっているようなところ、半ばピアノとともに盛り上がって語りかけてくるところ、(会場に聴きに(応援に?)来ていた)高橋多佳子さんが「泣けそうにいい」と評した第2楽章・・・(中略(^^;))・・・最後の高らかな終結に至るまで、雄弁でありながら礒さんの伴奏であることを止めなかったピアノと有機的に反応してモニュメンタルな演奏を聴かせてもらうことができた。
もちろんグリュミオーとはちがった流儀ではあるが・・・私には礒さん流のほうが好みだな。日本人だから・・・かもしれないが。(^^;)
ちなみに、私は出だしの入りの瞬間にゾクッと来て、それで最後まで参ってしった。(^^;)
そして、アンコールはイザイの“子供の夢”であったが、これも件のグリュミオーとヴァルシのアルバムに収められていたので知っていた。
ただテンポがぜんぜん違ったために、最初はそれとわからず印象的な子守唄だな・・・と思ったが、いやどこかで聴いたような・・・という感じで思い出したのである。
タイトルからすれば“子守唄”であって何ら可笑しくないと思われるが、礒さんと岡田さんのコンビはアンコールであるにもかかわらず、入念で入れ込んだ表現を聴かせてくれて、この曲も新しい魅力を教えてもらったような気がするブラヴォーな演奏が圧巻であった。
これほどの内容のリサイタルであったから、終演後に、シャイ・・・だと思う・・・な礒さんが「終わった・・・ホッ。」という表情ではなく、あれだけの笑顔で来場者と談笑し、満足そうにしてられたのも頷ける。
10周年記念のメモリアルとして、会心の演奏ができたと感じているのに違いない。
礒さんおめでとう。(^^)/
素晴らしい演奏をありがとう。
そしてこれからも頑張って、素晴らしい音楽を届けてください。
《デビュー10周年記念 礒 絵里子
ヴァイオリン・リサイタル・シリーズ 第1回》
(演奏:礒 絵里子(vn)、岡田 将(P))
《前半》
1.ヴュータン:失望 作品7-2
2.イザイ:遠い過去 作品11-3
3.イザイ:悲劇的な詩 作品12
4.ヴュータン:ラメント 作品48-18
5.ヴュータン:ロンディーノ 作品32-2
6.ヴュータン:アメリカの思い出 作品17
(ヤンキー・ドゥードゥルによるおどけた変奏曲)
《後半》
7.ルクー:ヴァイオリン・ソナタ ト長調
《アンコール》
8.イザイ:子供の夢 作品14
(2007年11月27日、東京文化会館小ホール)
こうみえて(見えないか・・・)私とてちゃんと仕事に就いている。
今回のリサイタル、何としても聴きたいと思っていたが、今日に至るまで行けるかどうか判らなかった。
ともあれこうして出向くことができ、念願だった礒さんの演奏によるルクーのヴァイオリン・ソナタを堪能することができて本当に満足している。(^^)/
昨晩はこの時間を作るためにほとんど完テツ状態で作業をした。
おかげで今日の昼間は眠くて仕事にならなかった・・・が、とにもかくにもリサイタルには行けてよかったということである。
東京文化会館小ホール前の案内板・・・前半はこのドレス。(^^;)
この圧倒的な睡眠不足は、きっとリサイタル中の私の状態にも影響を及ぼしていたであろう・・・。
オチはしなかったが、前半は礒さんの音を漏らさず「浴びた」記憶はあるものの脳があまり適切に反応していなかったようである。
否、脳への伝達系に問題があったのかもしれない。
要するに、いつもは個々の曲へのコメントをくどくど書いているが、前半は多分はじめて聴いた曲ばかりだし、次の総論的な印象以外にどうしても文章にできない・・・ここまでの字数を使ってその言い訳をしたいだけである。(^^;)
このリサイタルは多佳子さんたち、あるいはデュオ・プリマとしてのコンサートのときとは違って、最初から最後まで1言もなく純粋に音楽だけを発信する体裁(こっちが普通なのかな?)で行われた。
もちろん、礒さんは気合の入った圧倒的な演奏で聴衆を唸らせたわけであるが。。。(^^)v
前半で気づいたこととして、まず最初楽器の響きがあまり伝わってこなかったように思えたことがある。
雨が降っていなかったからか・・・と思いもしたが、イザイの半ば辺りからだんだん音に艶も張りも出てきたような気がして、ヴュータンの楽曲に戻って後は、いつもと同じ私が「この音」と思って止まない音色が現われたので安心したことが上げられようか・・・。
前半をしりあがりに盛りあげていくことによって、後半のソナタに気分を高めるという意味では、それも綿密な計算のうち・・・なのかもしれない。(^^;)
そして楽曲については、それぞれに独特なメランコリーを湛えており『知られざる名曲』というに相応しいものばかり。
ベルギーに留学をされていた礒さんならでは・・・かどうかは知らないが、間違ってもお手軽な曲ではないけれど晦渋でもない。。。
一見禁欲的にも思えるが、よく聴くと退廃的とも聴こえるしエロス&タナトスを感じるとも言えるし固有の味わい深さをもっていた。
特にイザイの曲などヴァイオリンとピアノでポリフォニックにびみょ~にずれたことを言っているようで、そのあわいにたち表れる感情の揺れみたいなものに、きっとベルギーってこんなイメージなんだろうな・・・という思いを感じた。
もちろんヴュータンの曲も聴かせるものだったし。。。
もっとベルギーの・・・というよりこの2人の・・・音楽を聴いてみたいと思わせられる楽曲であったし、そう思わせられる演奏でもあった。
ヴュータンの“アメリカの思い出”は新津美術館で多佳子さんと演ったときに、アンコールで奏されたもの。
新津ではアフターアワーズで思わず会場を気楽かつ盛大に沸かせるように楽しく弾かれていたのに対し、今回は、気分が盛大に盛り上がったのは同じだが、なぜか随分格調高く弾かれているように思ったのは思い過ごしだろうか?
やはりプログラムの本割り・・・それも前半の締めくくりに配されている曲であるから、余韻を残したかったんだろうとは察しがつくのだが・・・。
下の写真は、礒さんのサイン入りプログラムである。(^^;)
冒頭写真は、そのサインをいただいている時に撮らせていただいたもの。談笑中の素敵な笑顔のところでシャッターを切ったはずなのだが、携帯なんでシャッターのタイミング、解像度、手振れ補正などさまざまな点において限界があった模様・・・。
後半はこの衣装にお召しかえであった!(^^)/
さて、前半最後にヴィルトゥオジティ全開で盛り上がった気分・・・どれほど盛り上がったかは、休憩時間に入った手洗いで「アルプス一万尺」をハナウタで歌ってた人が2名もいたことから明らかである・・・を引き継いで、メインディッシュというべきルクーのヴァイオリン・ソナタに期待がいや増す状況となっていた。
そして果たしてその演奏には全編完全にノックアウトされたと言ってよい。
主催者へのアンケートに「来てよかった」とまで書いたぐらい、気に入った・・・。(^^)v
この曲だけはずいぶん前から知っていた。
それも結構しっかりと・・・グリュミオーの2度録音したうちの後の録音のほう(伴奏がヴァルシのもの)を随分昔から持っていたから。
ただ、この演奏はひたすらセンシティブで美しいグリュミオーのヴァイオリンの音色に対して、必ずしもピアニストが鋭敏に反応していない・・・他にもアルペジオが強いと思われたり、伴奏というよりも、自分勝手に思うとおりに弾いているようなところがあるのも事実。
礒さんたちはそれをどのように解釈してくれるのか、今日はそれがもっとも関心ある楽しみであった。
聴衆のいる生演奏、NHKが録画しているなどの緊張感(演奏中は感じなかったけど、礒さんが気にしていないわけはないと思う)であることが幸いしてか、グリュミオーが考え抜いて出した弱音から若々しさがやや聴き取りにくかったことに比して、礒さんはずっとストレートに曲の機微を伝えながら若々しさも感じさせて素敵であった。
冒頭の夢見がちな若者の空想をたどっているようなところ、半ばピアノとともに盛り上がって語りかけてくるところ、(会場に聴きに(応援に?)来ていた)高橋多佳子さんが「泣けそうにいい」と評した第2楽章・・・(中略(^^;))・・・最後の高らかな終結に至るまで、雄弁でありながら礒さんの伴奏であることを止めなかったピアノと有機的に反応してモニュメンタルな演奏を聴かせてもらうことができた。
もちろんグリュミオーとはちがった流儀ではあるが・・・私には礒さん流のほうが好みだな。日本人だから・・・かもしれないが。(^^;)
ちなみに、私は出だしの入りの瞬間にゾクッと来て、それで最後まで参ってしった。(^^;)
そして、アンコールはイザイの“子供の夢”であったが、これも件のグリュミオーとヴァルシのアルバムに収められていたので知っていた。
ただテンポがぜんぜん違ったために、最初はそれとわからず印象的な子守唄だな・・・と思ったが、いやどこかで聴いたような・・・という感じで思い出したのである。
タイトルからすれば“子守唄”であって何ら可笑しくないと思われるが、礒さんと岡田さんのコンビはアンコールであるにもかかわらず、入念で入れ込んだ表現を聴かせてくれて、この曲も新しい魅力を教えてもらったような気がするブラヴォーな演奏が圧巻であった。
これほどの内容のリサイタルであったから、終演後に、シャイ・・・だと思う・・・な礒さんが「終わった・・・ホッ。」という表情ではなく、あれだけの笑顔で来場者と談笑し、満足そうにしてられたのも頷ける。
10周年記念のメモリアルとして、会心の演奏ができたと感じているのに違いない。
礒さんおめでとう。(^^)/
素晴らしい演奏をありがとう。
そしてこれからも頑張って、素晴らしい音楽を届けてください。