SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

リスト没後120年特集 (その12 小品集ほか1)

2006年12月09日 00時44分02秒 | ピアノ関連
★リスト・リサイタル
                  (演奏:リーリャ・ジルベルシュテイン)
1.2つの伝説
2.6つのコンソレーション(慰め)
3.BACHの主題による幻想曲とフーガ
4.バラード 第2番 ロ短調
5.4つの忘れられたワルツ 第1番 嬰ヘ長調
6.即興曲(夜想曲) 嬰ヘ長調
                  (1995年録音)

清々しくもとてもスケールの大きな演奏をする、とても好感度の高いピアニスト、ジルベルシュテイン。
このディスクも私にとっては、決して外すことの出来ないもののひとつです。
とりわけ“コンソレーション”については、全曲を通してこれほどの温かみと強い集中力を湛えた演奏を他に知りません。もちろん3番もじっくりしたテンポで左手はどこまでも静謐に、右手はこの上なく慈愛に満ち溢れた音色ながらくっきりと歌い、癒されるという以上に(タイトルどおり)慰められる演奏です。
これをご紹介できたことは、この特集の白眉のひとつと信じています。

“2つの伝説”も特筆もの。それぞれの聖フランチェスコが見事に弾き分けられているし、他の曲も申し分のない演奏であり、これ以上の説明は無用に思います。
あとは聴いていただければ分かる、と。

★リスト・ピアノ作品集 「ラ・カンパネッラ」
                  (演奏:小山 実稚恵)

1.パガニーニによる第練習曲集より第3番 「ラ・カンパネッラ」
2.巡礼の年 第3年より 第4曲 「エステ荘の噴水」
3.巡礼の年 第2年「イタリア」より 第5曲 「ペトラルカのソネット104番」
4.ウィーンの夜会より 第6番(第1版)
5.超絶技巧練習曲集より 第11番 「夕べの調べ」
6.4つの忘れられたワルツより 第1番 嬰ヘ長調
7.ハンガリー狂詩曲 第2番
8.夜想曲「夢の中に」
9.超絶技巧練習曲集より 第5曲 「鬼火」
10.メフィスト・ワルツ第1番 「村の居酒屋の踊り」
                  (1995年録音)

我が国で人気の高いリストの小品といえば、ほぼここにある曲で網羅されてしまうのではないでしょうか? 
そんな意味でもとてもお買い得だと思ったこのディスク。(^^)v
ただここに愛の夢第3番がないのは、これ以前のポプリ集で録音されているからではなかったかとは思いますが。。。収録時間のせいかな?

しかし、これも随分と前のディスクになってしまいました。
これが発表されたころ私は長崎に住んでいて、福岡のナディアパークでの小山さんのリサイタルをかみさんと長女と一緒に聴きました。その時分の最新盤だったのに。。。
95年10月10日付けのサインはそのときのものです。そのとき1歳の長女は握手もしていただきましたけど、その後あまりあやかることはできなかったなぁ。

当時の小山さんは新進から中堅へなろうかという途上だったと思います。リストを中心にしたプログラムでしたが、ラフマニノフの前奏曲とかもあったような。。。
エステ荘の噴水がとても生気に溢れたフレッシュな演奏であったことは、よーく覚えていますけど。
全般に極めて安定感のある演奏だったということと、演奏前に実に優雅な身振りで中空の一点をずっと見つめて集中されていた様子が印象に残っています。
他の細かいことは忘れちゃいましたが、とても素晴らしかったとの記憶はありますです。

その後は、横山幸雄さん・有森博さんの子供向けのリサイタルに行ったことを除いて、昨年の高橋多佳子さんのリサイタルではじけちゃうまで実演に触れる機会がなかったのは、子供を連れて聴きに行くと、夫婦のどっちかが犠牲になっちゃうから。。。
もちろん子供がゴネれば、子供の選択によりかみさんが泣くことになってしまうのですが。
また、かつては私一人だけで聴きに行こうと思わなかったため、「わざわざそこまでの思いをして・・・」という気持ちになってしまっていたのでした。

さてさて、このディスクの演奏はとにかくフレッシュです。清潔だし。。。
これが出た当時は、正直やや薄味だという第一印象を持ったような気がしますが、今聴くとやはり小山さんは我々の世代の旗手の一人という感を新たにします。ホントに私の感覚にフィットする演奏だと(今では)思えるのです。
もちろん現在の彼女であればもっと深みも、味わいも表現できるのかもしれませんが、このころの彼女ならではの新鮮味は、それはそれで貴重で価値あるものだと思います。
久しぶりに聴いてみて、とても楽しいひとときが過ごせました。
最新盤のシューベルトなどと比べると曲の性格の違いもあるとは思いますが、無邪気さ、天真爛漫さに溢れていることがとても印象的です。

これ以前に出た小山さんのシューマンのディスク評に“コンピューター世代の演奏”というものがあって、そのときはネガティブなイメージで捉えられていたものだと思います。
今振り返れば、それはそのときの彼女の演奏が“次世代の演奏流儀の萌芽”であったということの裏返しでもあったのだと思えます。
もちろんその演奏自体、現在に至るまで進化も深化も遂げていることもあるでしょうが、かつての演奏スタイルの延長線上に確立された今の彼女の世界は、時代を代表するポジティブな意味での“コンピューター世代の演奏”にほかならないのではないでしょうか?
これからも私たちの世代を中心にシンパシーを感じることが出来る活動をされ、ディスクも出し続けてくれるに違いありません。
とても楽しみです。

★リスト:超絶技巧練習曲集全曲
                  (演奏:横山 幸雄)

1.超絶技巧練習曲集全曲
                  (1998年録音)

私にとって“超絶技巧練習曲集”は“鬼火”と“夕べの調べ”の2曲以外は、残念ながら魅力的なものと思われないのです。確かに演奏効果は凄いと思いますけれど。。。
またその“鬼火”とて、音楽性ということになるとそれほどの深みがあるとも思えないくらいで。。。
現にアシュケナージ(名演!)もキーシンも野島稔さんも、全曲ではなく抜粋でしか録音してません。そうそう、上の小山さんのだってそうでしょ!
したがって唯一、全曲を飽きさせずに聴かせてくれるこの横山幸雄さんのディスクのみ紹介させていただければ済んじゃうのではないかと。

これは名高いヴォルフ・エリクソンのプロデュースで、彼が演奏者として横山さんを指名したと聞いています。そして、エリクソンの思惑通りにピアニストのヴィルトゥオジティが縦横に発揮されたこの上ない快演が展開されているのです。
多分誰もこのように弾けないのではないか、と思われるほどの鮮やかさで、初めて聴いたときは唖然としました。アジアの若い男性ピアニストについては、大抵の場合私のやっかみが入るので評が辛口になるのですが、こればかりは諸手を挙げて礼賛したものです。
切れ味の鋭さはいうまでもなく、件の“夕べの調べ”も深刻にならず、ほのぼのとした程よい味わいでゆったりと聴けました。テクニックの凄さを武器に、あくまでも華麗に、切迫感なく、ゆとりすら感じさせる安心感に溢れた演奏でキメてもらえたのが勝因だと思います。

横山さん自身も当時、この曲集を若いうちに録音出来てよかったようなことを仰っていましたが、彼の文句なしの最高作だと思います。これほどまでに、このころの彼にピッタリのレパートリーは他になかったのではないかと、エリクソンの卓見に舌を巻くばかりです。

ところで、先に書いたとおり横山さんは正確無比のテクニックを誇っています。
でも、彼の“音色”は美しく必要な箇所では迫力もあるけれど、実は“私”には何故か深みを感じ取ることができにくいタイプなのです。したがって、出来上がった音楽もきれいではあるのですが、表面的に聴こえてしまうことがある。だからこそ、この曲集が胃にもたれないように弾き上げられている。。。そんな気もします。

彼のコンサートにも家族で行って聴いていますが、そのときも私は凄いテクニックと思いつつも、やはりそのような食い足りなさを感じました。しかし、かみさんはとても感激してファンになりました。そんなこんなで、サインをもらったことは言うまでもありません。このディスクが出る以前、ショパンのディスクなのですが。。。

というわけで、実は1990年のショパコンでは、後に私たち夫婦がそれぞれにファンになる邦人演奏家2名が入賞していたということになります。もちろん、もうお一人は高橋多佳子さんです。
この年に、かつて高校の同級生だった私たち夫婦が、久しぶりに再会し交流を再開したんじゃなかったかなぁ。インネンかもしれません。

その前回(1985年)では小山さんが入賞し、この次の回(1995年)では現在デュオ・グレースとして高橋多佳子さんとユニットを結成されている“理香りん”さんこと宮谷理香さんが入賞しているわけですよねぇ。
私たち世代の邦人ショパコン入賞者には、夫婦ともども随分お世話になっているものだと再確認した次第であります。

入賞されたみなさんと輩出してくれたショパンコンクールにお礼を言わなければいけませんね。
いつもお世話になりありがとうございます。 今後ともよろしくお願いいたします。(^^)/
って、リストの特集じゃなかったっけ!?