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SJesterのバックステージ

音楽関連の話題中心の妄言集です。(^^)/
もしよろしければ、ごゆっくりどうぞ。

野田恵 初リサイタル再現 (後半)

2006年11月11日 00時44分30秒 | のだめカンタービレ
ブノワ家主宰の、のだめさん初リサイタル再現後半です。

☆アルゲリッチ・ピアノ・リサイタル ~ ラヴェル:水の戯れ
                    (演奏:マルタ・アルゲリッチ、写真は記事冒頭)

この曲も名演が目白押し。
かみさん所有の“のだめカンタービレ セレクションCDBook 2”なる公式攻略本(?)によると小山実稚恵さんの演奏が収録されていました。ほほぉ~。。。
これもとっても胸のすく快演ですよね。ラヴェルが楽譜の冒頭に記したように「河の精」がいたずらする・・・間違いなく清流の情景。でも、我が国の深山の川の源流のほとばしりって感じがする。。。

でも、ブノワ伯爵は海をイメージしたんだから、やっぱアルゲリッチだね、ってなノリです。
(これも前記事同様、ジルベルシュタインと迷いました。フレーズの弾き始めの音を少しだけ引き伸ばすような感じが、独特の水の流れを生み出しています。ジルベルシュタインはアルゲリッチの主催する音楽祭に定期的に出演するなど、アルゲリッチとは親交が深いようですね。)
アルゲリッチの演奏では、この曲中の最高音からグリッサンドで落ちてきた水の流れは、普通は滝つぼに落ちたような感じの揺らぎの中で次の進み先を確かめるようなイメージが浮かぶのですが、この演奏のスケールは仮に滝つぼだとしてもナイアガラの滝みたい。というより海のふところに落ちて飲み込まれていくさまが大胆にして巧みなペダル操作で現出され、そしてその後は川ではなく波のうねりや飛沫がイメージされるような展開。かといって、決して演奏そのものは肥大した印象を与えない。。。
アルゲリッチ19歳のとき、ショパコン優勝前の演奏ながら、やはりこの方はとんでもない才能の持ち主だということをいやというほどに知らしめる一枚であります。

ただ、このディスクに収められているショパンの「舟歌」で歌い上げられる愛の歌では共同生活はムリ。凄い演奏だけど、凄すぎてこれではオトコがついていけまっしぇん。。。

☆シューベルト・ピアノソナタ全集 
          ~ シューベルト ピアノソナタ第16番 イ短調 D.845
                    (演奏:イリーナ・メジューエワ)

この曲は以前紹介したフィルクスニーのいぶし銀のような演奏が忘れられませんが、のだめさんが弾いたとなると、うーん、やっぱ若い女性よね。。。ということでのセレクト。
いかにもスタインウエイというピアノの音もとっても印象的です。
マンガの中で“シュベルトは。。。とても気難しいヒトみたいで一生懸命はなしかけてもなかなか友達になれ”ないという実感を持ったノダメさんが、その2年後にどこまでシューベルトと和解できたかを考えるとき、メジューエワの演奏には同じ悩みをくぐりぬけたうえでの奏楽というイメージがあります。
気難しいことはそのまま一旦受け入れて、ところどころ無骨とも思われる表現でもって、美しいところもあり、無理をして笑っているようなところもありという気紛れだけれども概ねそこはかとない悲しみが支配しているこのソナタを彫琢していきます。
ことに第1楽章からは人恋しさ、思い通りにいかない人間関係へのいらだちといった感触が聴き取れます。
でも私は思うんですが、シューベルトと仲良くしよう、ましてやその世界に遊ぼうなどと思うと、命にかかわるのではないかと。。。
この人は、恐ろしく疑り深いというか他人を心から信用できなかった人ではないかと思います。自らのうちにとてもピュアな心を持っているのは認めますが、その部分をむき出しにして痛い目にあったことに起因する、よほど強烈なコンプレックスとか恨みとかを内に秘めていないと、各曲のどこかしらに顔を出す辛辣な音楽の表情は生み出されえなかったのではないかと思えます。
グルダも、それこそがウイーン気質であるとして「笑いながら自殺する」というイメージを表明していますが、確かにそれらしきただならぬ気配を感じます。彼らの微笑みは心の中の怒りや虚無感の表明ではないかと。。。

シューベルトの音楽には、確かに正常な判断能力を損なわせる麻薬のような効能がありせんでしょうか?近づきすぎると幸せになれないような気がするのに、そばに寄らずにはいられないって感じでしょうか。
多くのシューベルト弾きがおのおのその世界に惹かれて、シューベルトと交歓していますが、メジューエワは同級生あるいはわずかに年上のお姉さん的な立ち位置でお付き合いしていますね。リサイタルでののだめさんはどうだったのでしょうか?

<番外編:ブノワ家シャトーでの音楽祭でのターニャさんの演奏曲>
☆モーツァルト・ピアノソナタ全集 ~ モーツァルト:ピアノソナタ第8番 イ短調 K.310
                    (演奏:クラウディオ アラウ)

これも1枚に絞れといわれると酷ですねぇ。
純粋に好みからすると断然ペライアなんですが。。。ターニャさんがネットリと超ロマンティックに演奏したとなると、うーん。
ここはまったく別の意味で、こゆ~い演奏のアラウを選択しておきましょう。私がPC上の出先でお名前をお借りしてお世話になっているかたでもあるし。。。
このブログにはお初ですよね。そのうち特集しなくっちゃ!

ところでこれは、唯一無二のモーツァルト演奏だと思います。濃厚ではなく重厚のようでいて決して重くもヤボでもなく、底光りするようなピアノの音色から深い世界が描き出されていくようなイメージです。まさに名のある大家の演奏です。
この曲などは、本当に音に聞こえたツワモノがこぞって録音しているので、それぞれの言わんとするところを聞き比べたら楽しいと思います。

ひととおり並べて、このとおり再生してみました。
水の戯れの後、前後半の休憩をいれたんでしょうねぇ。どうも一旦ソデに引っ込んだとしても、ラヴェルからシューベルトっていうのはムリがある。
きっちりと流れを断ち切るべく、時間をあけたほうがいいような気がします。
リサイタルの曲の流れとしてはどうなんだろうなぁ。好きな演奏を並べたからかもしれませんが、結構興味深いリサイタルだとは思いますケド。
モーツァルト演奏から舞台に出ずっぱりでリストっていうのは、ちょっとチャレンジなのかなとも思いますが。。。
のだめさん、ブノワ伯爵のご様子を伺ってリストをチョイスしたのか、選曲はされていたけど出だしをわざと“fff”にしたのかは不明ですねぇ。私としては、ぜひともそこらへんインタビューしたいですね。

テレビのドラマでこのコンサートをフルバージョンでやらないですかねぇ。画面の役者さんはだれにやっていただいても構いませんが、もちろん演奏は高橋多佳子さんで!
最近、モーツァルトやリストはリサイタルにもかかっているし。。。ラヴェルもオンディーヌを弾いてみたいと仰っている。水つながりの曲じゃんか(^^)/
シューベルトも4手でりかりんさんと弾くときのイメージづくりということでどぉだろぉかなぁ~。。。

もちろん一時間では収まりませんから、最終回近くの90分スペシャル番組とかで。。。
この手のドラマって3ケ月ぐらいのサイクルで回るんでしょ。そのときは、かみさんにいって録画しておいてもらおう!

しかし、リサイタルを再現して楽しんでるってかみさんに話したら、やっぱりという顔をして「そういうモンじゃない!」邪道であると怒られそうな気がする。
「勝手じゃんか!!」と思っても反論するとやっかいだから、黙っておくことにしよう。(^^)/
こっちこそ意地になって、人選を変えてまたこのリサイタルを再現したりして。。。
故人もいるので実現は不可能ですが、このメンツでコンサートを開いたらギャラはいくらになるんだろうなどと考えるのも小市民にとってはたわいもない楽しみですねぇ。プロモーターも思いのほか難しいものじゃぁ~☆

そういえば、かみさんは15巻のどこが面白いと思ったのだろう?
モーツァルトのナンネルへの手紙だったりして。。。
エグイ(最近ではキモイというのだろうか)ようにみえるけど、このころの人たちはモーツァルトに限らずこんな手紙をフツーにやりとりしてたようですね。

野田恵 初リサイタル再現 (前半)

2006年11月10日 23時56分32秒 | のだめカンタービレ
一人暮らしの私にとって、バックステージでの相方はどうしてもPCとなってしまうわけですが、その画面を通した世界でいま最も話題になっているのは「のだめカンタービレ」ではないかと思います。まぁ、このブームは私だけのことではないでしょうが。。。

ところで私は、テレビドラマに疎く、漫画の原作も知らなかったので興味を持ちつつも傍観者を余儀なくされておりました。
(そもそも夜はテレビを見ないので、東京の住処には録画設備がないのだ。。。)
しかし留守宅の家族がはまっていて、なんとコミックスを16巻まで持っている(聞いていたより1冊増えていた・・・)ので、先週末帰ったときかみさんに読みたいから貸してくれといってみました。
私との付き合いが長いかみさんは、「う・・・」と一瞬の間をおいた後こういいました。
「あのねぇ、これはそんな意気込んで読むような話じゃないの!それこそ、トイレに持ち込んでキラクにさらっと読み飛ばすようなカンカクで読まないとよさがわからないわよ!!」
なおも私が、ポケモンやゲームの話題についていけないとお友達に仲間はずれにされると訴える子供のように迫るのをみて彼女は、
「じゃあ、私には15巻が面白いと思ったからそれを読んでみてよければ他のも読んだらどう?ゼッタイにかしこまって眉間にしわを寄せて読んじゃダメよ!!」と念押ししたうえで15巻をよこしました。

感想を言う前に私はかみさんに感謝しなければならないと思っています。さすが、私の妻。私のことをホントによくわかってくれている。。。と。

そして、この物語は「理解するもの」ではなくて、そこにホンの微かに漂う雰囲気というか気配というか見えない何かを「感じるもの」なのだろうという感想を持ったものです。
もっと簡単に言っちゃえば、この雰囲気は私には合わない。。。残念ながら。
かみさんの懸念どおりこのマンガ本来のよさは私にはほとんど伝わっていないと実感しています。もちろんマンガが悪いはずはなく、読者の私にレセプターがないというのが原因であるということもハッキリしています。理詰めの話でないということも私には不向きです。
でも、楽しめましたよ。話題がクラシック音楽だから。。。
作者からすればあまり歓迎したい読み手ではないでしょうが、中にはそんなヤツがいても仕方ないでしょう(笑)。それに、こういったムードに惹かれてクラシック音楽を好きになる人が増えるのはたいへんに良いことだと思うので、とっても存在意義のある作品であるとも思っています。。。あまりフォローになっていないですね。。。

というわけで、ボチボチ読むからとりあえず貸せと1~3巻を借りて東京にもってきました。1ケ月ぐらいのウチに読めるといいな。そんなこんなで、読み進めていくうちに面白さがわかってくるかもしれないし。。。

そうはいいつつも、実は私は少女マンガは嫌いじゃありません。
これまでに楽しんだ作品は、「つる姫じゃぁ~」「はいからさんが通る」「スケバン刑事」「パタリロ」など、「エロイカより愛をこめて」にはずーっとはまっています。
こんな嗜好にあいそうな作品が他にあれば教えてくださいませ。


ところで“のだめカンタービレ15巻”では、のだめさんがブノワ家に招かれて<教会>で初めてのリサイタルを開くという展開になってますよね。
そのプログラムがなかなか興味深くて、実際に自宅でオトとして聴いてみたくなり、ウチにあるディスクでリサイタルを再現してみました。

☆鍵盤音楽の領域Ⅵ  ~ モーツァルト:きらきら星変奏曲 ハ長調 K.265
                  (演奏:武久源蔵)

これのみ現代ピアノでのディスクを持っていないので、古楽器の演奏で。。。マンガでものだめさんはリサイタルに先立ちシュタインのピアノを弾いているので、まぁいいかということで。。。
だたし、ここで武久さんが使用している楽器は、アントン・ヴァルターの楽器のレプリカのようですが。
理屈っぽくないことと軽さでマンガどおり子供が浮き浮きするような演奏です。オープニングにはぴったりなのかもしれない。

このディスクでは随所に装飾音が加えられるなどこの曲以外もとても即興性にあふれ、インスピレーションに富んだ演奏が展開されています。オーセンティックな楽器を使っているとはいえ、のだめの気取らず飾らない、しかし凄いという雰囲気が感じられます。またディスクに併収されているヴァイオリン・ソナタも素敵です。
なお、このディスクではターニャさんが夜の音楽会で弾いたK.310のソナタも-時代楽器による演奏で-聴くことができます。

☆モーツァルト:ピアノソナタ第16・17番、幻想曲ハ短調 
                    ~ ピアノソナタ第17番ニ長調 K.576
                  (演奏:フリードリヒ・グルダ  写真は記事冒頭)
マンガではピアノソナタ18番で最後のピアノソナタとありますが、ニ長調のK.576はこの曲なので17番で間違いないでしょう。当初目論見どおり完成されたピアノソナタは確かにこれが最後ですし、18番ソナタは確かに存在しますが後から別の作品を組み合わせてソナタとしたものですから。。。
こんなこと、大半の読者にはどうでもいいことなんでしょうけど。。。気になったので・・・
自分で書いてても“ヤ”なやつだと思いますが、一応情報発信者として発信内容を吟味しているぞということでご容赦を!
私の知らないところでこのニ長調を18番という数え方をすることがあるかもしれないし。。。もし間違ってたら教えてくださいね、ということで。

グルダの演奏は本当に自由闊達。モーツァルトの精神に最も近いのではないかと思います。何の変哲もない解釈に聴こえ、テンポもまったく標準的(ブノワ伯爵こだわってましたね)でありながら、これぞインスピレーションにあふれた演奏の代表だと思います。佳演名演がひしめくなかでも際立った、「のだめ」にぴったりの演奏のような気が、私はします。

☆リスト:詩的で宗教的な調べ 他 
       ~ リスト:波の上を歩くパオラの聖フランチェスコ 2つの伝説 No,2
                  (演奏:アルド・チッコリーニ)

これは私が大好きな曲。ブレンデル、ジルベルシュタイン、セイジマン、青柳いずみこさんほか幾多の名ピアニストのいずれ個性的な演奏が聴かれますが、ここではチッコリーニ盤をチョイスしました。
最も厳かさと壮麗さを併せ持った演奏効果が上がっているもので、チッコリーニ本人がこのころのリストについて非常な自信を持っていること、理屈っぽくないうえ精神性も非常に深いものがあるので、のためさんの演奏がモーツァルトから別世界に引き込んだというのに相応しいと思ったものです。
ところでこの2枚組CDの中の「孤独の中の神の祝福」の演奏はアラウのそれと並んで最高のこの曲の解釈であると思います。よどみなく自然に流れていきながら、敬虔な気分にさせられる、そんな演奏でおすすめです。
チッコリーニは年齢的にそのキャリアの最終章にあると思いますが、ショパンのノクターン、モーツァルトのソナタ集、グリーグの叙情小曲集、シューマンのウィーンの謝肉祭の道化他ととても感銘深いディスクをリリースしてくれています。幾久しい活躍をお祈りしたいと思います。
(セレクトに関しては、最後までジルベルシュタインと迷ったけど・・・、彼女は次の水の戯れの演奏者と親しいし。。。)

というわけで、この記事は前半3曲でおしまいです。      

To be continued…