中国の活動家・胡氏逮捕 政権転覆扇動容疑で公安当局に
2007年12月29日19時31分
エイズウイルス感染者の権利擁護をはじめ人権問題や民主化運動に取り組む北京在住の活動家・胡佳氏(34)が、中国公安当局に逮捕されたことがわかった。妻の曽金燕氏(24)と11月に生まれた長女・謙慈ちゃんも自宅に軟禁され、外部との連絡ができない状態に置かれている。
中国の人権侵害や民主化運動に対する弾圧状況を伝えるウェブサイトの維権網や胡氏の知人によると、公安当局者約20人が27日、胡氏の自宅を訪れ、国家政権転覆扇動容疑で逮捕すると通告し、胡氏を連行した。自宅には当局者数人が残り、妻子を監視。外部との連絡を禁じ、胡氏の逮捕後に自宅を訪れた母親の携帯電話も取り上げた。胡夫妻の携帯電話も自宅の電話も29日現在、不通状態が続いている。
胡氏は中国各地の人権擁護や民主化運動に取り組む活動家と連携し、当局による弾圧状況などを電子メールで海外に発信してきた。今年、欧州議会が優れた人権活動家に贈るサハロフ賞の候補に挙げられた。妻の曽氏も自身のブログで胡氏の活動を支えて今年、米タイム誌に「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。
胡氏は06年2月にも公安当局に拘束されたことがあるが、この時は今回と違って拘束理由や容疑などが示されず、41日後に解放された。
2、『読売新聞』
中国当局、人権活動家の胡佳氏を拘束…妻は自宅軟禁に
【香港=吉田健一】29日付の香港英字紙サウスチャイナ・モーニングポストは、中国の著名な人権活動家・胡佳氏(34)が今月27日、国家政権転覆扇動容疑で国家安全省に身柄を拘束された、と報じた。
具体的な容疑事実は不明。
同紙などによると、胡氏は北京市内の自宅から当局に連行され、妻で同じく人権活動家の曽金燕氏も自宅軟禁下に置かれたという。胡氏夫妻は今年5月、国家安全危害容疑で自宅軟禁下に置かれるなど、中国当局は夫妻の動向に神経をとがらせていた。
胡氏夫妻は、中国のエイズウイルス感染者支援活動や民主化運動の旗手として知られる。夫妻は今年、欧州議会が人権や言論の自由の擁護に貢献した人や組織に授与する「サハロフ賞」の最終選考に残ったほか、曽氏は、米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。
(2007年12月30日18時59分 読売新聞)
3、『産経新聞』
中国の著名活動家逮捕 反体制分子を根こそぎ“浄化”
2007.12.30 18:15
このニュースのトピックス:中国
胡佳氏(左)と妻の曽金燕氏と生まれたばかりの長女(12月初旬、北京市内の自宅で) 【曲阜(山東省)=野口東秀】中国の著名な民主活動家で、HIV感染者の支援などで知られる胡佳氏(34)が国家政権転覆扇動容疑で逮捕されたもようだ。複数の民主活動家が明らかにした。胡氏は国内で幅広く人権活動を展開しており、当局は最も厳重な監視態勢を敷いていた。中国では民主・人権活動家の拘束が相次いでおり、胡氏の逮捕は、来年の北京五輪を前に影響力のある反体制派分子を根こそぎ摘み取る“浄化作戦”の一環とみられる。
関係者らによると、27日午後3時、20人ほどの当局者が自宅を訪れ逮捕を通告、連行した。妻の曽金燕さん(24)は自宅で軟禁されているという。胡氏の携帯電話は30日午後現在、不通になっている。
胡氏は中国各地のほぼすべての民主活動家や人権派弁護士、欧米大使館員らと連携して当局の弾圧状況などを電子メールで発信。昨年7月から今年2月まで当局に拘束されていた。曽氏は夫が拘束された際、国際社会に支援を呼びかけ、今年、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。胡氏も欧州議会が人権活動家に贈るサハロフ賞の候補の一人だった。
反政府活動家に対する当局の弾圧は広範囲に及んでおり、これまでも強制中絶の被害者支援で知られ、マグサイサイ賞の候補ともなっていた盲目の活動家、陳光誠氏が逮捕されたほか、著名な人権派弁護士、高智晟氏も国家政権転覆扇動罪で執行猶予付きの有罪判決を受けている。さらに人権活動家である郭飛雄氏が11月に非合法経営罪で懲役5年の実刑となったほか、強制堕胎事件への支援で知られる李和平弁護士は最近、身元不明集団に拉致され暴行された。
胡氏はこれら著名な活動家らと太いパイプがあり、その中核的な存在だった。北京の元弁護士は「五輪で国際社会の注目が集まる前に、活動家の動きを封じ込めようという当局の狙いがある」と話している。