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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

スティーブン・ソダーバーグ監督「サイド・エフェクト」(★★★)

2013-09-08 19:27:37 | 映画
監督 スティーブン・ソダーバーグ 出演 ジュード・ロウ、ルーニー・マーラ、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ、チャニング・テイタム



 この映画の色調、それから映像のソフトフォーカスの感じが絶妙である。鬱病患者の「頭の中に毒ガスの霧がかかったみたい」という台詞が出てくるが、そういう感じ。はっきりしない。私は目が悪いせいもあって、あ、検診にいかなければ……と思うくらいである。音楽もだらだらとあいまいで、すっきりしない。
 そういう映像のなかで、売れっ子のチャニング・テイタム(「ホワイトハウス・ダウン」「マジック・マイキー」の主役)が出てきたと思ったらすぐ殺されてしまう。それも包丁で。あ、これってヒチコックの「サイコ」そのまま。そうなんですねえ。「サイコ」をある意味でパクっている。別な言い方をするとヒチコックに敬意をはらっている。
 で、この段階で、この映画の殺人者(ルーニー・マーラ)が二重人格であること、つまり鬱病がほんものではなく、偽りのもの(嘘)であって、ほんとうの彼女は別にいるということが暗示されるのだけれど。
 いやあ、うまいなあ。ソダバーグは。
 最初に指摘した「色調」のせいで、ついつい彼女が鬱病なのだと思い込んでしまう。鬱病になると、世界が明確な輪郭をなくし、色もくすんで、世界と向き合っているのが重苦しいと感じてしまう。つまり鬱病の女性の視点で世界を見ている気持ちになる。
 すこし注意深く映像を見ていると、彼女が鬱病っぽい行動を起こす前に、必ず彼女が目撃されていることを彼女が確認していることがわかる。駐車場で自殺(?)しようとするときなど、わざわざバッグから小物を落として管理人(?)の注意を引いている。彼女は変だ――ということを目撃させている。地下鉄でも駅の監視人(?)とわざと目をあわさせている。手が込んでいるねえ。必要な「情報」をきちんと映像にしている。映像がていねいだねえ。
 さらにおもしろいのが、罠にかけられる精神科医にジュード・ロウという色男をもってきたことだねえ。男でも女でもいいのだけれど、美形が追い詰められ、苦しみ表情というのは魅力的である。もっといじめてみたい。もっと苦悩する顔をみてみたい。そういう気持ちをそそられるでしょ? バーグマンはそういう意味では、私にとっては永遠の美女だなあ。きっと苦悩する顔というのはセックスでエクスタシーを迎える寸前の顔に似てるんだね。なんだか興奮するでしょ? 脱線したかな?
 そして敵役(?)に、美女は美女なんだけれど、美女が嘘っぽい(?)感じのキャサリン・ゼタ・ジョーンズをもってきたのが絶妙だなあ。どこか美女を売り物にしているあやしさがあるでしょ? 悪役向きだよなあ。
 ここまで書いてしまうと、これはもうネタバレというものなんだろうけれど、映画はストーリーではないからね。ストーリーがわかっていた方がたっぷり映像をじっくりと見ることができるからね。私は実はサービスでネタバレを書いているんですよ。
 味付けがインサイダー取り引きというのが「現代風」ではあるのだけれど、これもね、よくよく考えれば「サイコ」のパクリ。「サイコ」の犠牲者(女)は、ふと目にした大金をくすねて逃走する途中で殺された。チャニング・テイタムがころされるきっかけになったのは、労働とは言えない労働(インサイダー取引)で手にした金と、その金で築いた生活が崩れてしまったことが事件の始まり。
 これは巧みにつくられた「サイコ2」だね。
(2013年09月08日、天神東宝1)

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