goo blog サービス終了のお知らせ 

詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

こころは存在するか(20)

2024-03-02 12:34:19 | こころは存在するか

私は多なる一であり、一なる多である

 このことばがベルグソンのなかに出てくる。「なる」を「即」と「誤読」すれば「多即一、一即多」であり、「多」を「色」と、「一」を「理(空)」読み替えれば「色即是空、空即是色」になるだろう。このとき「なる」は英語で言えば「be動詞」になるのかもしれないが、「なる」を「なす」、つまり「為す」あるいは「生す」と読み替えれば、それはすべて「私」という「肉体」によって誕生する世界になる。
 私がベルグソンに親近感を覚えるのは、こういう「誤読」を誘ってくれるからである。ベルグソンのことばのどこかに、私が知らずになじんできた「東洋」のことばがある。
 「多」を「色」と私は書き換えたが、これは「私が出会った、私以外の存在」であり、それは「意識が存在として分類しているもの」というものであり、「私(肉体)」を抜きにしては存在し得ない。意識は単独では存在せず、常に「肉体」とともにある。むしろ「肉体(いのち)」が理解しているものを「ことば」にしたものが「意識(知性)」である。

 こんなことばもある。

直観は生命の方向に進み、知性は逆の方向に進む。

 「直観は生命の方向に進む」とは、直観はいのちを維持・継続・持続させることを目指す、ということ。そのために「知性」をつかう。つまり、「知性は逆の方向に進む」とは、知性は「もの」の方に進むということ。「もの」を「無機物」と言いなおすと(ほんとうは有機物も含むのだが、とりあえず)、それは、人間は「もの」を解体し、別のもの(いままで存在しなかったもの)をつくるとき、そこには知性が働いているということである。簡単に言えば、鉄鉱石から鉄をつくり、その鉄から橋をつくる、ビルの骨組みをつくる、あるいはさまざまな機械をつくる。鉄鉱石を鉄鉱石ではなくしてしまう。そうすることで、「いのち」の維持・継続・持続をはかる。「生きやすく」する。
 しかし、「人間」は解体できない。解体すると「殺人」である。鉄鉱石から、武器をつくり、戦争を有利に進めるということも、人間はしてしまうのだが、これは少し脇に置いておく。
 実は、「殺人」以外の、「人間の解体」も、あるには、ある。「いのち」を「労働力」に解体し、「肉体」を拘束することができる。ひとつの方向に「限定」して動かすことができる。しかし、これもまた別の問題である。
 ベルグソンが言っているのは、直観は持続を目指し、知性は切断を目指すということである。そして、その接点に「肉体」があると、私は考えている。「存在するのは肉体だけ」というのは、そういうことである。


**********************************************************************

★「詩はどこにあるか」オンライン講座★

メール、googlemeetを使っての「現代詩オンライン講座」です。
メール(宛て先=yachisyuso@gmail.com)で作品を送ってください。
詩への感想、推敲のヒントをメール、ネット会議でお伝えします。

★メール講座★
随時受け付け。
料金は1篇(40字×20行以内、1000円)
(20行を超える場合は、40行まで2000円、60行まで3000円、20行ごとに1000円追加)
1週間以内に、講評を返信します。
講評後の、質問などのやりとりは、1回につき500円。

★ネット会議講座(googlemeetかskype使用)★
随時受け付け。ただし、予約制。
1回30分、1000円。(長い詩の場合は60分まで延長、2000円)
メール送信の際、対話希望日、希望時間をお書きください。折り返し、対話可能日をお知らせします。

費用は月末に 1か月分を指定口座(返信の際、お知らせします)に振り込んでください。
作品は、A判サイズのワード文書でお送りください。

お申し込み・問い合わせは、
yachisyuso@gmail.com


また朝日カルチャーセンター福岡でも、講座を開いています。
毎月第1、第3月曜日13時-14時30分。
〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前2-1-1
電話 092-431-7751 / FAX 092-412-8571

オンデマンドで以下の本を発売中です。

(1)詩集『誤読』100ページ。1500円(送料別)
嵯峨信之の詩集『時刻表』を批評するという形式で詩を書いています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072512

(2)評論『中井久夫訳「カヴァフィス全詩集」を読む』396ページ。2500円(送料別)
読売文学賞(翻訳)受賞の中井の訳の魅力を、全編にわたって紹介。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073009

(3)評論『高橋睦郎「つい昨日のこと」を読む』314ページ。2500円(送料別)
2018年の話題の詩集の全編を批評しています。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168074804


(4)評論『ことばと沈黙、沈黙と音楽』190ページ。2000円(送料別)
『聴くと聞こえる』についての批評をまとめたものです。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168073455

(5)評論『天皇の悲鳴』72ページ。1000円(送料別)
2016年の「象徴としての務め」メッセージにこめられた天皇の真意と、安倍政権の攻防を描く。
https://www.seichoku.com/user_data/booksale.php?id=168072977

 

 

問い合わせ先 yachisyuso@gmail.com


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「転落の解剖学」(3) | トップ | Estoy Loco por España(番外... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

こころは存在するか」カテゴリの最新記事