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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ポール・バーホーペン監督「ブラックブック」

2007-04-29 22:01:50 | 映画
監督 ポール・バーホーペン 出演 カリス・ファン・ハウテン、セバスチャン・コッホ、トム・ホフマン

 深刻なテーマをあつかっている。そのせいだろうか。演出がきわめてよくいえばオーソドックス、悪くいえば古くさい。おもしろい映像がひとつもない。映像と音楽の融合もない。
 知らない役者ばかりのせいか、唯一知っている(見た記憶がある)セバスチャン・コッホが印象に残った。「善き人のためのソナタ」で劇作家(脚本家)を演じた。目に特徴があり、善良さと哀愁がまじりあう。虐殺はもうやめにしたい。だが、とめることができない。そういう苦悩がにじみでる。いわば弱い部分だが、その弱さをつかれて最後はナチスによって処刑されてしまう。その死によって、善良さが浮かび上がる。ナチスなのだが、ナチスにもそういう善良さをかかえこんだ人間がいた、善良さゆえに死んでいくしかなかったという役どころである。もうけ役といえばもうけ役だが、そういう役どころをつかみとる顔をしているのだろう。
 カリス・ファン・ハウテンはアメリカ(ハリウッド)の役者と違って不透明である。肉体を、これは肉体であって精神ではない、ときっぱり断言できる強靱さも兼ね備えている。その強靱な不透明さがこの映画では重要な要素となっているが、あまりに強靱すぎてはらはらどきどきが伝わって来ない。殺戮を思い出し嘔吐したり、罵られて糞尿を浴びせられても、そこに弱さが見えて来ない。彼女の痛みが痛みとして伝わってこない。(私だけかもしれないが)。ケイト・ブランシェットのような透明感のある女優が演じると、もう少し違った映画になったのではないかと思う。



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