詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

ダビッド・プジョル監督「美食家ダリのレストラン」(★★)

2024-08-25 16:36:51 | 映画

ダビッド・プジョル監督「美食家ダリのレストラン」(★★)(KBCシネマ、スクリーン2)

監督 ダビッド・プジョル 出演 ホセ・ガルシア、イバン・マサゲ、クララ・ポンソ

 主人公の設定は、スペイン人なのか、フランス人なのか。よくわからないが、なんとも「フランス味」の強い映画だ。妻は出てこないが、娘が出てきて、フランス語でやりあうが、もしかすると登場しない妻がフランス人なのかも。というような、映画とは関係ないことを思ってしまうなあ。
 私は、ダリの作品はそんなに多く見ていないのでわからないが。
 映画の、ひとつの見せ場に、主人公が「ダリの魅力」を語るところがある。これが、さらに輪をかけて「フレンチ」の味。フランスから来たグルメ評論家がダリを批判するので、それに対して反論するのだが、そのことばの動きが「フランス現代思想」っぽい。と言っても、私はその当時のスペインの思想(さかのぼってのスペインの思想)もフランスの当時の思想も「現代思想」も知らないのだけれど。
 なんとなく。
 いやあ、スペイン人は、こんなに「論理的」には話さないだろうなあ。だからこそ、このシーンがスペイン語ではなく、フランス語で交わされるのかもしれない。
 ひるがえって。
 フランス語で論理が展開されたから、フレンチと感じたのか。これは、少し重要な問題かもしれないなあ。
 私は最近スペイン語を学んでいるのだが、「読んだらわかる」でも「書くことはできない」文体というものがある。「Te gusto?」というのは、読んだときはびっくりするが、まあ、理解できる。しかし、それを言ったり書いたりするとなると、ちょっと恥ずかしくて言えない。書けない。そういうことが、どの言語にもあって、そういうことは「思想の文体」「論理の文体」にも影響していると思う。そして、行動(肉体)の文体にも。
 その「行動の文体」で言えば、シェフの弟が反フランコ運動(?)で逃亡するとき、兄が一緒に逃げるのがスペインぽいかなあ。フランス人は、弟思いの兄でも一緒に逃げたりはしないだろうなあ。「お前のかって」がフレンチの兄弟関係かなあ、とかって想像している。
 結婚式の披露宴の料理(デザート?)にチュッパチャプスをつけるというのは、まあ、スペインぽいが、女がシェフの愛を知って、厨房でセックスをする、というのはフレンチかなあ。その二人がウェデングケーキにまみれるというのはスペイン風か、フレンチか、よくわからないが。セックスをのぞいた男が告げ口をするというのは、スペインかも。フランスでは、「他人のことは知ったことではない」だろうし、これがイギリスなら知っていても本人が言わない限り「なかったこと」になるだろうなあ。
 これも、かってな想像だけど。
 バルセロナ(舞台の近くがバルセロナ)とマドリッドでは、それぞれのひとの人格もずいぶん違うと思うが、シェフの生真面目な感じは、これはバルセロナだね。新しい料理を思いついて、そのたびにノートをとる、というのはスペイン人というよりはバルセロナ人かなあ。碁盤の目のようなバルセロナの通りと、マドリッドの勝手気ままな道路の交錯の違いなんかも思い出した。
 ほかにも、ガラがロシア人(だったっけ?)という関係もあって、スペイン語、フランス語、ロシア語が飛び交う映画なのだが、もしかするとロシア人の「特徴」も見えるようになっているのかもしれない。アラカルト料理のように、アラカルト人種の違いを教えてくれる映画かもしれない。その土地その土地に、その土地の味(料理)があるように、その土地その土地に、そこにふさわしい人間がいる。
 というのは、「日本人風の見方」かもしれないが。


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