比喩
二月の月が空の天辺にのぼる時間、
私の部屋の窓から見えるビルの裏側にもう一つのビルがあって、
その三階の角の窓は破れている。
夜になるとその部屋のなかの闇は外よりも暗くなり、
壁に黒い穴が開いているように見える。
壁にまでたどりついた月の光は割れたガラスの縁のところで拒絶され、
部屋のなかに入ることができない。
その下の上り坂を通りながら、私は考える。
私が私の部屋にいて、私の窓からは見えないこの窓についてことばを動かすとき、
あの暗い穴は私の比喩だろうか。
それとも私があの暗い穴の比喩なのだろうか。
*
「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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壁にまでたどりついた月の光は割れたガラスの縁のところで拒絶され、
部屋のなかに入ることができない。
その下の上り坂を通りながら、私は考える。
私が私の部屋にいて、私の窓からは見えないこの窓についてことばを動かすとき、
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それとも私があの暗い穴の比喩なのだろうか。
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![]() | 谷川俊太郎の『こころ』を読む |
クリエーター情報なし | |
思潮社 |
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ヤニス・リッツォス | |
作品社 |
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2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。