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詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記)

日々、読んだ本の感想。ときには映画の感想も。

「まだ可能かもしれない

2015-02-22 01:14:23 | 
「まだ可能かもしれない

「まだ可能かもしれないという考えが間違っている。そう自分自身に言い聞かせることをできるだけ先のばしにした」ということばがあった。
「だれのことばなのかわからなかったが、いま、私がしているのはそのとおりのことである」ということばが並んでいた。
「どうすることもできない苦しみがまといついてくるが、そう感じるとき苦痛ということばは甘い怠惰のようでもあった」ということばが、どこからともなくあらわれた。




*

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2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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外と内と、

2015-02-20 01:26:54 | 
外と内と、

「朝の六時から雨が降りはじめていた」ということばは、「三時からだった」ということばによってさっとかき消された。
テーブルの上の黄色い白熱球。その光が硝子窓に映っている。
互いのことばを憎んでいる二つの影は、
「無言のまま、海が灰色に変わるのをみつめていた」。
ひとりの日記にそう書かれたあと、
「悲しみの断崖」ということばと同じように記憶になってしまった。

遠くで鴎の鳴く声、近くで青いガスの花の開く音。
「外からやってくるのか、私のなかから聞こえてくるのかわかならかった」ということばは、風のない日に聞こえるあの音、雨が海に触れるの音のよう。

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ことばがあった

2015-02-19 06:00:00 | 
ことばがあった

「積み重ねられた本」ということばがあった。
「積み重ねられた本のあいだに挟まった手紙」ということばはそのあとにやって来たのに芝居の主人公のようにスポットライトを要求した。

「鍵を壊された引き出し」ということばがあった。
傍線で消して、「倒れた椅子の形を残して薄くひろがるほこり」ということばに書き換えようとするこころみがあったような気がした。
「女が、別の女に似てくると感じた」ということば書かれなかったが存在した。

「タンスの内側の鏡」というセンチメンタルなことばがあった。
「見る角度によって空っぽの闇を映した」ということばになったり、
推敲しあぐねて、丸められた紙といっしょに捨てられたりした。



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空き缶

2015-02-17 00:54:51 | 
空き缶

最終の地下鉄が走り去ったあと、
遅れてきた一本が
仕方がないというように動き出す。
吊り輪が白い光のなかで
さらに白くなっている。

通路に空き缶が転がる。
飲み残しの液体を
だらしなく漏らしながら
座席の下の鉄板にぶつかり
押し返され、方向を変える。

進行方向にまっすぐに、
連結部分まで行って、
また戻る。扉のところで
革靴でしずかにけられる。

何もかもわかっているさ。

それから、
誰とも口をきくものかと決めた
未熟な若者のように、
泣きそうになる。
回送列車がすれ違うとき、
はげしく揺れる。








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暗い人

2015-02-16 00:29:40 | 
暗い人

二時を過ぎると路地の向こう、電車通りをトラックが通り抜ける音が聞こえる。
バスもタクシーも走らなくなったためにトラックの音が聞こえるのか、
電車がいなくなってトラックが集まってくるために聞こえるのか。

暗い人は、いま書いたことばをベッドサイドの椅子に座って読み返す。
ジャケットのなかで肩を回して背中をほぐし、大通りを拡げていく。

二時を過ぎると、耳のなかへ電車通りをトラックが通り抜ける音が押し寄せてくる。
眼は美術館の角の信号の色を思い出すが、街路樹の花の色を思い出せない。
必要なのは地下鉄の階段をのぼってくる匂いを破壊する排気ガスの塊かもしれない。

書きなおしながら、暗い人は間違えた。
坂の上から見た海から運河をのぼってくる潮を挿入する場所がない。





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たぶん、

2015-02-15 01:23:20 | 
たぶん、

犬のあとにしたがってロープを張った空き地から出てきたとき、
女のスニーカーの紐に草の種が無数についていた。
砂鉄のようにとがっている黒い種。
磁石が動いていったあとを、その向きのなかに残している。

この四行だけでは詩にならない。だれも詩とは認めてくれない。
たぶん、




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椅子の上に積んだ本は、

2015-02-14 01:13:28 | 
椅子の上に積んだ本は、

椅子の上に積んだ本は崩れながら重なっていた。
はみ出した紐栞がアリステア・マクラウドの表紙に触れている。
(父の描き方が、私には哀しい。
背もたれにほうり出すようにかけられたセーターの、
袖口は折り返されている、
ということばを本のなかに返したいが、それはほんとうに書かれていたか。

少し離れたところにあるソファの半分はへこんだままである。
スタンドの光が歪んだたわみに影をつくるのをためらっている。
姉が運んできたコーヒーには砂糖が入っていたが、
私は何も言わずに飲んだ、あの日。







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遠くを見たいと、

2015-02-13 00:55:38 | 
遠くを見たいと、

遠くを見たいと思って、
苦しみをわざと繰り返しつづけた日の終わり、
遠くを見たいと思って、
あらゆる自意識と感覚が互いをすっかり疲れさせた日の終わり、

遠くを見たいと思って屋上にのぼれば、
寄せてきた波が静かに海に帰るきわに西の砂浜がやわらかに光る。






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新聞を読んだ後、

2015-02-11 01:23:47 | 
新聞を読んだ後、

新聞を読んだ後、
残った金で買うのにふさわしいのは
終わらない恋愛小説か
一人一人が別の方向へ散らばり消えていく推理小説か、

新聞を読んだ後、
プラスチックの椅子に座ってキオスクの遠い棚を見つめ、
あるいは立ち上がって壁の鏡をのぞく
ような詩がいいのか考える。
新聞はうまくたためない。

新聞を読んだ後、ふりかえると
女が電話をかけているヒースロー空港。
ハイヒールをぬいで足裏を左手でもみながら、
無言を受話器にあずけているが

新聞を読んだ後、
ふいに訪れる空白は砂糖入りのコーヒーを飲んだよう。
体の底からこみあげてくる退屈と
何も起きない小説はどちらが破壊的か。





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別のところで

2015-02-10 00:47:30 | 
別のところで、

別のところで、ことばは、女をこんなふう書いていた。
「傘立てのところで傘を入れようかどうしようか迷っている。
いったん何本か傘を引き抜いて閉じ直さないと入りきれないだろう。
手間をかけることは嫌いではないのだが、
他人の傘をたたんでいるところを見られると思うと躊躇するのだ。」
その女がいまコーヒー店を出るところである。
本を一冊読んでいる間に雨があがった。
舗道に西日が射してきていて入り口のガラスが明るい。
傘立てのところで、傘を手に取ろうとして、時間がねじれる。
女は店に入るとき壷に無造作に傘を放り込んだ。
それがていねいにまきたたまれて美しい角度で立っている。

ことばは、いま、そんなふうに女を描写しながら、
これを詩にするならこれ以上書いてはいけないと思っている。



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「詩は全部を、

2015-02-09 00:51:57 | 
「詩は全部を、

「詩は全部を、全部のことばを理解する必要はない。
--ことばは、これから語ることを頭のなかで反芻してみた。
「どこか気に入ったところがあったら、そこをしっかりつかむ。
(つかみどころを押さえる--と言いなおした方がいいかな?

「そして何度もくりかえしておぼえる。
ここぞというときに
いまひらめいた!という具合に言ってみせればいい。
(流暢でなければ、借り物だとばれてしまうぞ。

「頭のなかに浮かんだことを、
本に書いてあるみたいにことばにできれば楽しいが
そんなことは誰にもできない。
これは知っている、と百回にいっぺんくらい言うのがコツだ。

(世の中のことが全部わかる人間はどこにもいない。
--ことばは、あ、これでは種明かしになってしまうぞ、と思う。
「これは、きのう読んだ本に書いてあったことです。
(言ってしまった方が、自分で考えたことに聞こえるかもしれない。






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きのうと同じ道を通って、

2015-02-08 01:17:24 | 
きのうと同じ道を通って、

きのうと同じ道を通って眼鏡屋で度をあわせ直した後、
道の反対側のうどん屋に入り、同じテーブル、同じ椅子にすわる。
テーブルはこぼれた汁を引き延ばしたためにべたついている。
きのうと同じうどんは葱が煮えすぎて甘く形をなくしている。
待ち合わせをしているのだが、待たずに食べおわると、
遅れてきた人は「死ぬのに三か月かかった」と言って、黙った。
ノートを取り出し、細かい数字を書いている。
(人間は死ぬときまっているのに、そんなに時間をかけてもったいない)
(三か月しか持たなかった。金を払って手術までしたのに)
こころの声が聞こえたので、ことばには、その人が自分であるか
他人であるのかよくわからなくなって、うつぶせになっ泣いた。
それから顔を上げて、窓を通して遠い病院の角の部屋を見たが、
下から見上げる格好なので新しい眼鏡でも中までは見えなかった。


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殺し屋

2015-02-07 01:44:53 | 
殺し屋

誰が私を殺しに来るのか。
わからないときはドアについて考える。
たとえば内側に向かって開くドア。
金属のドアの錆びた蝶番ということばのなかに住んでいる蝶が
銀色の粉をまきちらして飛び立つ。

誰が私を殺しに来るのか。
わからないときはソファに体を沈め、
殺し屋のやってくる暗いドアを見つめる。
外は雨で、雨に叩かれるドアの音が強くなり、
ノブを回す速度で雨の匂いがなだれてくる。

想像の銃に撃たれて私は死ぬ。
ドアのことなどもう考えることはできないと考えながら。
その私のために殺し屋は
「思考が排除されたとき残るものが時間である」と言わなければならない。
それを聞きたくて私は殺し屋を雇ったのだが、

何の手違いだろう。誰の、何のための手違いなのだろう。
「おまえの孤独に友人はいるのか。」
言ったことも聞いたこともないことばがドアを開けずに入ってくる。
誰か私を殺しに来たのか、
わからないまま死んでしまって私はくだらない夢をみている。




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彼、

2015-02-06 00:42:47 | 
彼、

彼はいつも二本の鉛筆を同時につかう。
濃くやわらかい鉛筆と薄く硬い鉛筆を重ねてスケッチする。
曲線を描くとはみ出していく輪郭と隠れる影が交錯する。
顔にひそんでいた欲望は、ある瞬間ははじき出され、別の瞬間はおびえる。
唇は甘い舌のように乱れ、拒絶をなめるように誘う。
眼は他人のような嘘とあからさまな真実を受け入れている。
それは自画像なのか、恋人の肖像なのか。

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街角は次々に

2015-02-05 00:53:10 | 
街角は次々に

街角は次々に配置される。
秘密の入り口として。よこしまな隠れ家として。
曲がってはならない。
通ってはならない。
否定のことばが角を曲がり、
枝分かれして、入り乱れた角を増やしていく街。
目を向けるたびに、
拒否が密生する。
来るところじゃない。
扉を開けてはならない。
だが己の声を聞く人間は知っている。
街角はいつでも、こころのように、
隠れるふりをしてあらわれ、
隠れながら誘う。


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