破棄されたの詩のための注釈(31)
テーブルの片隅に集められたのは「ぬれている」ということばと「水面の青」。「水面は正午の光で青くぬれている」ということばと、「ボートからはみだした影が水面で黒く輝く」ということばが、砕けながら入り乱れた。四月の正午、風は南から吹いた。
水に触れる手は、何を考えて模倣するのか。砕けるものを集める「感覚」ということばは「私は私を見て(あなたはあなたを見ないで)」という中途半端なことばを半ば所有し、半ば放棄している。想像力は、網膜のなかで完成する安直を拒否する。
そのように段落は変更された。
新しい単語はつづかず、スターバックスの外のテーブルの上に雨が降り、「ぬれている」ということばは水面から「青」をはがしていく。灰色の粗い粒子が現像しそこねた写真のように、水のなかから浮いてくる。「ボートの横」では、水に映った杭の色という問題が残される。
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「谷川俊太郎の『こころ』を読む」はアマゾンでは入手しにくい状態が続いています。
購読ご希望の方は、谷内修三(panchan@mars.dti.ne.jp)へお申し込みください。1800円(税抜、送料無料)で販売します。
ご要望があれば、署名(宛名含む)もします。
「リッツオス詩選集」も4400円(税抜、送料無料)で販売します。
2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。
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思潮社 |
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ヤニス・リッツォス | |
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2冊セットの場合は6000円(税抜、送料無料)になります。