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『龍馬が愛した下関』

2010年06月27日 | Weblog
坂本龍馬と下関の関係が深いということはあまり知られていない。

本書帯にはこう書いてある。
「近代的な経済感覚で幕末を駆けた坂本龍馬は、長州下関に夢を託し、
ここを本拠地と定めて活動を始めようとした。これまであまり知られることの
なかった龍馬の下関時代にスポットを当てた、歴史ファン必読の一冊。」

平成7年に発行されたものでいささか古いけれど、改めて読んでみた。
4月に下関に行ったし、TVでは『龍馬伝』をやっていてタイミングが合ったから。

下関に行った時に地元の人たちから「龍馬関係の資料は下関にたくさん残っているんですよ。」
ということを聞いた。
「あそこが龍馬とお龍が住んでいたところ。」と教えてもらったり、下関市立長府博物館にも
立ち寄って、実際の龍馬関係の資料も見た。

大河ドラマ『龍馬伝』の影響もあってここを訪れる人が多く、時期を分けて龍馬関係の資料を
小出しに展示しているとのことだった。

龍馬が使っていた湯呑みを見た時は「あの龍馬が使っていたんだなぁ。」と少なからず感動を
覚えた。
しかもお龍とケンカして、お龍が投げたためヒビが入ったというエピソードが何とも微笑ましかった。

司馬遼太郎の歴史小説『竜馬がゆく』は龍馬人気を決定的にしたもので、龍馬本の入門書
とも言えるもので、僕も20代前半に読んで坂本龍馬の人間的魅力に魅了されたひとりだ。

けれどもこの『竜馬がゆく』は小説であるため、史実と違う部分がある。
本書『龍馬が愛した下関』の冒頭で、実際の坂本龍馬が下関で活躍した時期が『竜馬がゆく』
では長崎にいたことになってあると書いてある。

本書は坂本龍馬や龍馬と関係のあった人物の史料に基づいて、その史料を丁寧に読み解いて
坂本龍馬の実像に迫った力作だ。

神戸の海軍操練所が閉鎖され、勝海舟の紹介で西郷隆盛の薩摩藩に行くところから始まる。

著者は、坂本龍馬は“薩摩藩の人形(ダミー)”だったと言い切る。
史料を読み解いていくと、どす黒い政治の中で翻弄されていく龍馬の姿が浮かんで仕方がないと。

一介の脱藩浪人が“日本初の株式会社”といわれる亀山社中を作れるわけもなく、それは薩摩藩
という後ろ盾があったからこそ長崎で活躍出来たことだと書いてある。

確かに当時の坂本龍馬は現在の我々の知る超有名人“幕末の風雲児”坂本龍馬ではない。
知らない人にとっては、どこの誰だか分からなかったはずだ。

なるほどなるほど、龍馬が実際に書き残した手紙をこのような形で分析すると『竜馬がゆく』や
『龍馬伝』にはないような龍馬像が見えてくる。

龍馬は“書き魔”ということもあって、多くの手紙が現存しているからこのように紐解いていけるの
だろう。今で言えば、さしずめ“メール魔”とでも言おうか。

一介の脱藩浪人でも薩摩の後ろ盾を得ながら、その特異な立場で活躍していく龍馬。
“薩長同盟”を締結させ、龍馬自身も自信をつけ、一気に成長していくのがわかる。

薩摩、長崎を経て長州下関に来て、ここを拠点にしようとする龍馬。
お龍と腰を落ち着けて過ごした場所ということを考えてみても、下関が龍馬にとって大きな場所
というのも分かるだろう。

下関でのことは、興味があれば是非とも本書をお読み頂きたい。
あまり触れられていない、龍馬の上海密航についても書いてある。
小説やTVの中の龍馬とは違う、もっとリアルな龍馬に会えるかも知れない。