ひとひらの雲

つれづれなるままに書き留めた気まぐれ日記です

業平とその祖父

2015-04-06 18:35:53 | 日記
 そろそろ桜も終わりでしょうか。

 世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし
と詠んだ業平ですが、現代でもその心は受け継がれているようです。開花予想も盛んですし、咲けば咲いたで散ってしまわないうちにお花見をしようと落ち着かない人、多いのではありませんか。桜さえなければ春の心はのどかであろうにという業平の気持ちは、現代人にも共通のものです。

    盛りの桜

 ただこの歌のあと、『伊勢物語』ではもう一首、他の人が詠んだ歌が続きます。
 散ればこそ いとど桜は めでたけれ 憂き世になにか 久しかるべき
 本当に散ればこその桜かもしれません。

 『伊勢物語』はご存知のように、在原業平であろう貴公子を主人公にした歌物語です。そして業平は光源氏のモデルともいわれ、イケメンの好色男というイメージが強いのですが、私は業平の真骨頂はやはり歌だと思っています。権力とは別の価値観で書かれたこの物語もそうですが、中に挿入されている彼の歌が素晴らしいんですね。六歌仙の一人に数えられる方なので当然といえば当然ですが、風流なものも、男女の愛や友情を詠んだものも、どこか愁いがあって胸に突き刺さります。

 さてその業平ですが、この人は平城(へいぜい)天皇の孫にあたります。ですから当然皇族であったわけですが、お祖父さんが女に溺れ、ちょっとした問題を起こしてしまったことで臣下に下り、在原氏を名乗ることになりました。出世にも縁遠く、従四位上の中将止まりで生涯を終えています。ですから一層「もののあはれ」や人間の哀しみに敏感だったんですね。悲恋もありましたし。

 月やあらぬ 春や昔の 春ならぬ わが身ひとつは もとの身にして
 手の届かない人になってしまった女性を思いながら詠んだ歌です。何だかキュンとしますね。業平はそれほどの地位も権力も得ることはありませんでしたけれど、後世の人に愛され、当時のいかなる権力者よりも有名になりました。極論ですが、それもおじいさんが女に溺れたお蔭。

 この度、そのおじいさんが愛した女性を主人公にした物語、『薬子(くすこ)伝』を出版しました。これを読んでいただければ、業平が権力以外のところに価値観を求めた理由がわかる筈です。歴女様も是非。応援よろしくお願いします。

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2 コメント

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着きました! (くじょう)
2015-06-01 06:12:54
おはようございます、昨日はありがとうございました。

幅広くて素敵なブログですね! 佐藤彦五郎資料館も、いつかは行ってみたい場所の一つです。

業平の「世の中に…」の歌、とてもわかりやすく、しかも業平らしく逆説っぽくて、とても好きです♪

時折遊びに来たいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ありがとうございます (ひとひらの雲)
2015-06-01 11:27:38
くじょう様
遊びに来てくださったんですね。とても嬉しいです。
くじょう様は一昔前であれば九条家のお姫様なのでしょうね。そんな方と交信できるのはとても光栄です。
これからのよろしくお願いいたします。

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