いい陽気になりました。雨さえ降らなければ絶好のお出掛け日和です。ゴールデンウイークにも入りましたし、すでに日本にはいらっしゃらない方も多いのでは。しかしもうすぐ行われる我が国の一大イベントを見逃してしまうのは、ちょっと残念な気がします。そう、今上天皇の御退位と新天皇の御即位です。元号も「令和」に変わりますし、私の場合、この次の天皇の御即位を見ることはないと思うので、これが最後となるでしょう。前回(平成になる時)は前皇の崩御による御即位でしたが、今回は受禅(じゅぜん)の即位、前皇の側からいえば譲位ということになりますね。
石村貞吉氏の『有職故実(ゆうそくこじつ)』によれば、「皇位の象徴たる、三種の神器を継承する式」のことを践祚(せんそ)といい、即位は「践祚の後、時日を隔てて、正しく南面の位について、新たに皇位継承の旨を、広く百官庶民に宣布(せんぷ)する儀」ということになります。5月1日に行われる「剣璽等承継の儀」はこの践祚にあたるものでしょう。10月22日に行われる「即位礼正殿の儀」が故実のいうところの即位式にあたるものかと思われます。崩御による即位式は喪が明けてからになるので、1年以上先になりますが、今回は譲位によるものなので、この令和元年秋に行われるわけです。
高御座
「剣璽等承継の儀」はその昔、践祚式の中で「剣璽渡御(けんじとぎょ)の儀」として先帝の御所から新帝の御所へ移されていましたが、現在は「剣璽等承継の儀」でお受け取りになり、そのままご自分の御所へ持ち帰られるようです。伝統の儀式も時代に合わせて少しずつ姿を変えていくんですね。
姿を変えるといえば、即位の礼が行われる場所も変わりつつあります。つまり天皇が高御座(たかみくら)に立たれる場所ですけれど、もともとは大極殿(だいごくでん)において行われていたものが、焼失したために太政官庁で行われるようになり、後柏原天皇以後は紫宸殿(ししんでん)で行われるようになりました。現在の京都御所にある紫宸殿では、明治・大正・昭和の天皇の即位式が行われましたけれど、平成からは今の皇居、正殿松の間で行われたということです。
京都御所の紫宸殿
京都に都があった頃は、式に先立って伊勢の鈴鹿の関、近江の逢坂の関、美濃の不破の関を固め、非常時に備えたといいます。この頃は東国から蝦夷が乱入するのを恐れたんですね。今は、というと、やはり警戒は必要かもしれません。昨日でしたか、秋篠宮悠仁(ひさひと)さまの通われる中学校で、お教室の机の上に包丁が2本置かれていたというニュースがありました。何を考えているのかわからない人もいるので、用心はしなければならないでしょう。
何事もなく滞りなく行われ、新しい時代がくることを祈りつつ、昔ながらの装束で新天皇が高御座に立たれる秋のその日を、楽しみに待ちたいと思います。