ようやく梅雨が明けましたね。これからが夏本番です。立ち葵の花はもう終わってしまいましたけれど、これからは向日葵(ヒマワリ)が太陽に向かい、百日紅(さるすべり)が花をつけ、不如帰(ホトトギス)が鳴き、蝉が鳴き、海の恋しい季節がやってきます。若者にとっての海はバカンス、そしてそれに付随するロマンスへの期待感で胸膨らむ季節の到来というわけですが、別の意味で海を恋う人もいました。
立ち葵
海恋し 潮の遠鳴り かぞへては 少女(をとめ)となりし 父母(ちちはは)の家(与謝野晶子)
鉄幹と恋に落ち、家を捨てた晶子でしたが、年を重ねていくうちに捨てた筈の父母の家が恋しく、近くの海が思い出されるんですね。
晶子の家は大阪・堺にある老舗の和菓子屋で、近くに高師(たかし)の浜があったようです。その波の音を聞きながら育った晶子が、苦労を承知で家を捨て、鉄幹との愛を貫きました。ですからどんなことがあっても帰れない。帰る家はなかったということなんでしょうね。
驚くことに、晶子は鉄幹の子を12人も産んでいます。避妊が難しい時代だったとはいえ、この少子化の時代からみると信じられない数ですが、それほど鉄幹に浮気をして欲しくなかったのかもしれません。それでも鉄幹は女をつくりました。相手の女性は山川登美子。晶子と同じ歌人であり、ライバル的存在でもありましたが、晶子は妻の座を守ります。それでもやはりつらい、苦しいと思う時はあったのでしょうね。そんな時、ふと思い出すのが親の家でした。
ふるさとの 潮の遠音の わが胸に ひびくをおぼゆ 初夏の雲
12人の子供の母であり、情熱の歌人であり、『源氏物語』の現代語訳を完成させた人であり、教育、評論、多岐にわたって活躍した晶子でしたが、望郷の念と悔恨の念が入り混じった気弱な女の顔が見え隠れする一首です。しかし苦しい思いをすればするほど強くなり、作品が冴えていく。そんな気がします。私ももっとつらい目にあえばいい作品ができるのかなと思ったりしますけれど、もう耐えられないでしょうね。ひどい夏風邪をひいただけで死ぬ思いでしたから…。
このところ出版本の売上げが伸びず、パソコンもトラブルが多くて落ち込んでいます。かといって懐かしむ家もありませんけれど、海は少し恋しいですね。
マイホームページ おすすめ情報(『薬子伝』)
立ち葵
海恋し 潮の遠鳴り かぞへては 少女(をとめ)となりし 父母(ちちはは)の家(与謝野晶子)
鉄幹と恋に落ち、家を捨てた晶子でしたが、年を重ねていくうちに捨てた筈の父母の家が恋しく、近くの海が思い出されるんですね。
晶子の家は大阪・堺にある老舗の和菓子屋で、近くに高師(たかし)の浜があったようです。その波の音を聞きながら育った晶子が、苦労を承知で家を捨て、鉄幹との愛を貫きました。ですからどんなことがあっても帰れない。帰る家はなかったということなんでしょうね。
驚くことに、晶子は鉄幹の子を12人も産んでいます。避妊が難しい時代だったとはいえ、この少子化の時代からみると信じられない数ですが、それほど鉄幹に浮気をして欲しくなかったのかもしれません。それでも鉄幹は女をつくりました。相手の女性は山川登美子。晶子と同じ歌人であり、ライバル的存在でもありましたが、晶子は妻の座を守ります。それでもやはりつらい、苦しいと思う時はあったのでしょうね。そんな時、ふと思い出すのが親の家でした。
ふるさとの 潮の遠音の わが胸に ひびくをおぼゆ 初夏の雲
12人の子供の母であり、情熱の歌人であり、『源氏物語』の現代語訳を完成させた人であり、教育、評論、多岐にわたって活躍した晶子でしたが、望郷の念と悔恨の念が入り混じった気弱な女の顔が見え隠れする一首です。しかし苦しい思いをすればするほど強くなり、作品が冴えていく。そんな気がします。私ももっとつらい目にあえばいい作品ができるのかなと思ったりしますけれど、もう耐えられないでしょうね。ひどい夏風邪をひいただけで死ぬ思いでしたから…。
このところ出版本の売上げが伸びず、パソコンもトラブルが多くて落ち込んでいます。かといって懐かしむ家もありませんけれど、海は少し恋しいですね。
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