先日金融庁が年金だけでは足りなくなるので、老後2000万円の蓄えが必要だという試算を発表しました。それに対して俄かに議論が巻き起こり、与党は火消しに躍起になっていますけれど、この問題はもう国民の脳裏に焼き付いてしまったことでしょう。年金だけでは暮らしていけないという不安を誰もが抱いてしまったことと思いますが、「今更遅いよ」です。もっと早くに試算して、それに対する対策を考えていてくれたらと思わざるを得ません。団塊世代の親世代は結構豊かな年金暮らしをしていた筈です。団塊世代が高齢者の仲間入りをしたらどうなるか、という展望はなかったのでしょうか。
生活費の内訳を見ても、あの中に例えば家のリフォーム代金やエアコン・給湯器などの買い替え費用は入っているのでしょうか。家も家電も経年劣化していく中で、生活費の確保だけではどうにもならなくなるでしょう。まして夫婦のどちらかが病気になると、一気に困窮してしまうというケースも少なくありません。介護も大きな問題です。老々介護ともなると、どうにもならなくなって夫婦で心中というケースもあります。何故心中しなければならなかったか、ということはニュースにならないことが多いのですが、その辺をもっと掘り下げて、高齢者対策を真剣に考えて欲しいものです。
介護施設での虐待も問題です。動けない高齢者に暴力を振るうなど、人としてあってはならないことです。介護士などの選定も「人となり」が第一だと思うのですが、人材不足で手が足りないとそうもいかないのでしょう。もっと社会保障に力を入れ、非人道的なことが起きないようにすべきですし、できないのであれば安楽死を認めるべきです。虐待されて死ぬよりも、安楽死の方がずっと人道的だと思います。
『未来の年表』(河合雅司著)によれば、来年には女性の過半数が50歳以上になり、2021年には介護離職が増大すると予測されています。また、「団塊世代が75歳以上となる2025年頃には、大きな病気を患う人が増え、社会保障給付費が膨張するだけでなく、医療機関や介護施設が足りなくなるのではないかと指摘されている」とあって、ダブルケア(育児と介護を同時に行う)も問題となってくるそうです。団塊ジュニアも50代に突入していきますし、認知症患者も増えていきます。2040年頃には死亡者数が激増するために火葬場も不足するようになるということですから、この高齢化社会をもっと深刻に受け止め、考えていかなければならないのでは。
最近はまた高齢者の交通事故がやたらと取り上げられ、高齢者ばかりが事故を起こしているような錯覚に陥りますけれど、若い方も事故は起こしています。高齢者の事故ばかりが取り上げられるので、高齢者講習の見直しや免許制度の変更などが検討され、高齢者にとっては益々厳しい運転事情になりそうです。確かに高齢になって運転するのは危ないと思いますし、おそらく本人もさほど運転したくはないでしょう。それでも運転しなければ買い物にも行けない、病院へも行けない、気晴らしもできない等々で運転せざるを得ない事情があると思います。それを解決しようせず(足の確保を考えず)、ただ高齢者に厳しくすることだけが得策といえるでしょうか。高齢者を家に閉じ込め、引き籠りにするような社会であってはならないと思うのですが、皆さんはどうお考えになりますか。