@男の夢・ロマンチックな人生を描き、実現に向け突っ走る。如何にも青春をかける、誰もがやってみたい。この短編小説「芦葉大学の夢と殺人」では夢から最後まで冷めない男の執念が最悪な事態を招くストーリーになっている。その夢を持った男性に憧れ、支えようとする女性の行動が最後は悲しみに消える。
人は思うようにできない、されたくないが常だ。(夢と幻想)だが、夢は常に持っていたい。
『鍵のない夢を見る』辻村深月
普通の町に生きるありふれた人々に、ふと魔が差す瞬間、転がり落ちる奈落を見事にとらえる五篇。現代の地方の閉塞感を背景に、五人の女がささやかな夢を叶える鍵を求めてもがく様を、時に突き放し、時にそっと寄り添い描き出す。著者の巧みな筆が光る傑作
「仁志野町の泥棒」
ある家族の親が盗みをすると言う噂から小学生の仲間で友達付き合いが拗れる。その親は精神状態が異常になると盗みに入ることを繰り返しており、子供たちも気になっていた。ある時その家族の小学生の友達と買い物をした時、その子供にもその癖を発見。それ以来友達付き合いをやめていたが、卒業を気っかけに引越しをしていなくなった。ところが中学生になって再びあったが言葉なく別れた。(習性は付き纏う)
「石蕗南地区の放火」
実家の近くにある消防団の詰所が放火にあった。仕事上現場での保険災害届けをすることで合コンをした消防団員とあった。それは以前独身者同士の合コンで知り合った年長者で、世間の噂は非常に良かったが、何か不審と感じていた。その後付き合いを断るために一度だけデートした。後日、違った公共施設での放火があり、現場で捉えられるとそれはそのデートした消防団の男だった。理由は「ヒーローになりたかった」とあったが、合コンとデートで断ったことが原因の怒りだと思い込んでいた。(自己陶酔・思い込み)
「美弥谷団地の逃亡者」
ネットで知り合った近くの男、短気で怒りっぽい性格だが、相田みつおの詩集「幸せはいつも自分の心が決める」を愛している。付き合いだしてから男のDV的行為が頻度を増し別れようとしたがしつこく家の前まで来て叫び狂い付き纏う。母が心配して警察に通告、すると男が殺気を帯び包丁を母を刺す。男に連れ出され海を見に行くと男の優しさが感じられ一緒にいる事に錯覚し始める。昼ごはんを食べに入った出先で男は殺人犯として警察に押さえられる。(思い詰めた非道な行動)
「芦葉大学の夢と殺人」
同じ大学の研究室で知り合った真面目な男性と付き合いだす。男性は大きな夢を持ちこの研究室での卒業ではなく休学し医学生となり、サッカー選手になる事だった。だが医大の試験には失敗し、研究室からの卒業は愚か数年留年を繰り返していた。研究室の教授と進路について口論となり殺害してしまう。男性とは卒業した後も数年続いており他の男性への興味はほとんどなく、最後に残されたことは男性の夢を諦めさせ現実を見せる事だと悟ったが、自己陶酔しており暴力も振るうほどで全くその素振りも見せない。そこで男性の前で自分を犠牲にする事で目覚めるのではないかと自殺を試みる。(夢と現実 幻想に取り憑かれた夢)
「君本家の誘拐」
待望の子供を授かり、一日1日が目の回るくらい忙しく、赤ちゃんから目が離せない。夜泣き、授乳、オムツ替え、食事、洗濯、買い物などそれに赤ちゃんの体調、体温から体質まで考えることがいっぱいあり過ぎて自分の時間がない程になる。ある日買い物に行きふと見るとベビーカーが自分の周りにないことに気が付く、誘拐かと警備員にも伝え探す。ところが自分の降りた車の側にそのままベビーカーに乗った我が子が乗っている。日々の疲れから気が動転していてベビーカーを自分がうっかり忘れたのだ。(錯覚・動転)