ちょっと気になるいい事、言葉、最新技術

書籍、映画、旅、最新技術から選んだ心に残るもの。速読者向けは、青文字表示。内容は小学生でも理解できる表現使用

「いじめ」同士から友好関係が生まれる『かがみの孤城(上・下)』

2024-07-11 07:46:03 | ミステリー小説から見えるもの
「鏡の城」それは時を超越した異空間に七人の引き篭もりの少年少女が集められる。同じ年頃でしかも同じ学校なにの鏡から戻るとそんな存在が見つからない。そんな世界に何故か助けあい友達になって行く気っ掛けを掴む。心の繋がりで人は幸せになることができる、そんな仕掛けを想像させるこの小説は読み終わった後に心がウキウキするのが不思議だ。人の繋がり、心が通じ合うと言う仲間は同じ環境、心境で初めて遭遇し合えるものなのだ。
『かがみの孤城(上・下)』辻村深月
「概要」学校での居場所をなくし、閉じこもっていた“こころ”の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めた。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていた。なぜこの7人が、なぜこの場所に――すべてが明らかになるとき、驚きとともに大きな感動に包まれる。生きづらさを感じているすべての人に贈る物語。
ーかがみの中の世界はパラレルワールド・次元が七人とも違う場所に住んでいるという異様な世界を知る。時代が違うが同じ境遇うの仲間達だった。それはいじめに遭い、学校に通えない、仲間の中に溶け込めない、みんなと上手くやれないなどはみ出しの生徒だった。
ーある「心の教室」で出会った少女が勇気づけてくれた、それがこの七人のうの一人の姉の存在だった。心の病から13歳で亡くなった、、との時に穏やかな笑顔の優しい人に憧れ始めた、その人だった。


来世でのミステリー事件解決『クローズドサスペンスヘブン』

2024-07-03 07:44:19 | ミステリー小説から見えるもの
異次元(来世)で全ての人物が記憶喪失状態、更に創造し難いいくつかの条件は何でも可能となりその中から犯人を探すというのはミステリーに対する想像力と推理を半減以下にしてしまった。逆に人によってはこの本書の謎解きは複雑で難易度が高く、ミステリーとしての満足度が高いかもしれない。
『クローズドサスペンスヘブン』五条紀夫
「概要」俺は、間違いなく殺された――。なのに、ここはどこだ? 気がついたら目の前にはリゾートビーチと西洋館。姿の見えない配達人から毎朝届く不思議な新聞によると、ここは天国屋敷で、現世で惨殺された6人が記憶をなくした状態で天国に返り咲いたらしい。
ー来世で6人の人物が再会する。この中に5人を殺害した犯人を探す、だが誰もが記憶喪失者となっていると言う想定のミステリー小説だ。



記憶喪失から自分を知る術『フリークス』

2024-07-01 07:45:26 | ミステリー小説から見えるもの
事故で記憶喪失「自分は誰なのか」のミステリーは現実に起こっても不思議ではない。瀕死の状態から生き残った正体を知る為に自分との葛藤になる。だが五体満足ではない状態でどう調べる? ミステリーの面白さは「行き詰まり」からのどんでん返しだ。そこには必ず緒があることだ。現代では生成AI搭載のコンピュータが検索、意味付けてくれる事は間違いないが、自分の正体を知ることへの恐怖が募る。
『フリークス』綾辻行人
「概要」 「JMを殺したのは誰か」JMは自分より醜い怪物を作るため、五人の子供に人体改造を施した以上な科学者。奴を殺したのは、どの子供なのか。
「魔の手」(313号室の患者)
    幼い頃、悪夢に首を絞められる夢を何度も何度も見た。それがなんだったのか精神病患者の母のもとに見舞いに来た時に自分には弟がいたという。秘密裏にしていた箱の中身を問いただすとその正体がわかってきた。
「409号室の患者」
    麻酔から覚めると記憶がなく両足がない事を悟り悩んだ。事故に遭い瀕死の状態で担ぎ込まれた病院では自分の正体が、どうしてこんな悲惨な状態になったのか理解できなかった。自分の正体が明らかになることへの恐怖が湧いてくる
「フリークス」
    奇形児の生態実験をしていた醜い男と言われたJMが殺される。辺鄙な一軒家に奇形児、五人が一緒に暮らす不気味な館に弁護士が訪問する。事件を解決するべく全員から調書して行く、とある患者が妄想で創り上げたミステリー小説を探偵が犯人を調べていく。


「偶然と先入観」は感覚を麻痺させる『リバース』

2024-06-25 07:33:32 | ミステリー小説から見えるもの
「リバース」(逆転)と解釈している本書は最後までミステリーを読み解くには難しい小説だ。「人間嫌い」、「一人の方が楽しい」、「孤独が良い」と思う男女の唯一心を許せる友人が交通事故で亡くなる。それがミステリー事件として犯人を探す事になる。人は嫉妬する動物、だから邪魔者は要らない、これがこのミステリーのキーワードになる。三角関係の恋愛からそれをまさに破壊していく様がこの事件に繋がる、と読むことがミステリーになる。偶然が事件を起こす、だがそれは最初から仕組まれたことだった。「偶然」という仕掛けは人間の勘違い、先入観から感覚を麻痺させることがあるということ。
『リバース』湊かなえ
「概要」深瀬和久は平凡なサラリーマン。唯一の趣味は、美味しいコーヒーを淹れる事だ。そんな深瀬が自宅以外でリラックスできる場所といえば、自宅近所にあるクローバーコーヒーだった。ある日、深瀬はそこで、越智美穂子という女性と出会う。その後何度か店で会ううちに、付き合うようになる。淡々とした日々が急に華やぎはじめ、未来のことも考え始めた矢先、美穂子にある告発文が届く。そこには「深瀬和久は人殺しだ」と書かれていた――。何のことかと詰め寄る美穂子。深瀬には、人には隠していたある”闇”があった。それをついに明かさねばならない時が来てしまったのかと、懊悩する。


「お金」「人間関係」が招くミステリー事件『予知夢』

2024-04-23 07:39:02 | ミステリー小説から見えるもの
物理学者が単純な考察で事件を解決しないことを描いた短編ミステリー小説(5編)では、事件の背景にある「お金」や「人間関係」の問題が重要な役割を果たしていることを示している。
現代社会においても、多くの事件が「お金」を巡る問題から引き起こされて、近年ではギャンブル依存症などの問題行動に気をつける必要がある。 単純な判断ではなく、事件の背景にある複雑な要因を丁寧に分析することが重要で、物理学者の視点から事件の謎を解き明かすことで事件の本質に迫る面白い展開を見せる。
『予知夢』東野圭吾
「概要」深夜、16歳の少女の部屋に男が侵入し、気がついた母親が猟銃を発砲した。とりおさえられた男は、17年前に少女と結ばれる夢を見たと主張する。その証拠は、男が小学四年生の時に書いた作文。果たして偶然か、妄想か…。常識ではありえない事件を、天才物理学者・湯川が解明する。5つのミステリ短編小説
・「夢想る」証拠この抹消、昔の想いを消す工作
・「霊視る」脅迫を受け殺傷、墓の近くで撮った偶然の写真が要因
・「騒霊ぐ」夫の行方不明、妻の予感
・「絞殺流」保険金目当ての自殺工作
・「予知流」模擬自殺工作が他殺に


女性にモテる秘訣は何よりも推しとまめである事『源氏物語を知っていますか』

2024-04-20 07:40:20 | ミステリー小説から見えるもの
@「源氏物語」は、平安時代の貴族社会における複雑な人間関係と恋愛を描いた傑作だ。光源氏は、経済力や男らしさだけでなく、相手への思いやりと誠実さが重要であることを示している。 当時の貴族社会では、娘を嫁がせることで家族の地位を高めることができたため、女性の役割が重要視されていた。一方で、光源氏自身も「一線を超えた不祥事」で皇室出自から平民に落とされ、再び貴族の地位を得るという曲折を経験している。
登場人物が多く、複雑な人間関係が描かれているのは、紫式部の卓越した筆致によるものだが、最後に登場する浮舟は、紫式部自身の姿を重ねて描かれているのかもしれない。
本文にある「女性にモテるための条件は経済力や男っぷりも大切だが、何よりも推しが強いこと、まめであること」とある。
『源氏物語を知っていますか』阿刀田高
「概要」男女の愛欲と孤独。野心と諦観。縦横無尽に張り巡らされた伏線の糸。
平安貴族を熱中させた、極上華麗な大ベストセラー大河小説『源氏物語』五十四帖を、短編小説の名手・阿刀田高があなたのかわりに読みました。大人のユーモアとエロス溢れる軽妙な語り口で、70年以上にわたる長大なストーリーと複雑に絡み合う人間関係が、すんなり頭に入ります。
光源氏の「一線を越える事」で血縁関係、位の上下関係、家族との関係が複雑化し始め、平民へ落とされる。のちにその複雑な関係から幸運にも復活する命が出される。息子と孫の世代では光源氏の過ちが自分へ回帰することで多くの女性を悩ませた事が反省する事になる。
源氏の「一線を越える事」で出世への道が閉ざされ、のちに回復する機会を得るなど男女の人間関係(恋愛・婚姻・離別・死別)は多くの貴族、皇族を巻き込み悩ませた物語である。


利権ビジネス・サスペンス小説『ウオーターゲーム』

2024-04-01 07:39:53 | ミステリー小説から見えるもの
このビジネスサスペンス小説は、利権絡みの競争社会を描いており、政治家の大物が関与する現実を反映している。物語の面白さは、主人公が過去の人生を晴らすために社会に斬り込む奇想天外な計画と逆転展開を描いている点にある。主人公は情報を駆使し駆け引きを行い、最終的には巧みな戦略で生き残りを果たす様子が描かれている。この小説は、現代社会における利権を巡る金持ちや政治家の貪欲さ、そして彼らが利権を手放さずにしがみつく姿をリアルに描写している。
『ウオーターゲーム』吉田修一
「概要」突如ダムが決壊し、濁流が町を呑み込んだ。水道民営化の利権に群がる政治家や企業による爆破テロ!? 秘密組織エージェントの鷹野一彦と田岡亮一は次の爆破計画を阻止するために奔走するが、事件の真相に迫るスクープ記事が政財界を揺るがす大スキャンダルを巻き起こす。テロの首謀者は、そしてこの情報戦を制する者は誰か
ー「水利権」に絡み情報を抜き、横槍を入れ、ビジネスの横取りが始まる。中心人物となる政治家、警察とのコネがある水利権に主要な人物、海外の投資家・銀行、諜報員・情報スパイ(元孤児)等が絡む裏ビジネスの事件裏だ
ー「水利権(水道事業)の民営化」中南米では外国の投資家による独占で、地元庶民は高騰する水料金に暴動を起こし政府が転覆、契約は破棄されるなどの事件が絡む、その事例をうまく投資家を抱き込んで投資させ暴利を稼ぐ利害関係を整理していく(国民の為に)
ー「男同士というのは知り合ったりしません。一緒にいるかいないか、それだけです。」
ー政治家等へのメッセージ「自分の国を出て、他の国を見ようとしない人たちは皆世間知らずになる、時間が止まるんです」


祟り、迷信をどこまで信じるか『骨灰』

2024-03-22 07:40:31 | ミステリー小説から見えるもの
江戸時代から戦後にかけて東京は地中深くどこでも大火、戦争の後の屍があったとしても不思議では無い。都心での建設ではまさに土壌深くをも調査しすることで始まるが、その地鎮祭などを仕切る企業が人柱を侵した事で、そこに居合わせた人に乗り映る奇妙なミステリーが始まる小説だ。現代、その慣習は続いており不気味な何かが起こっても不思議では無い。本書にもある、魔除けのお守り、祟りを避けるお守りがあれば大金でも買いたいと思うのは現代でも同じような気がする。人は迷信など表向けには信じないようで実は心ではお祈りをするものだ。
『骨灰』冲方丁
「概要」大手デベロッパーのIR部で勤務する松永光弘は、自社の高層ビルの建設現場の地下へ調査に向かっていた。目的は、その現場について『火が出た』『いるだけで病気になる』『人骨が出た』というツイートの真偽を確かめること。異常な乾燥と、嫌な臭い――人が骨まで灰になる臭い――を感じながら調査を進めると、図面に記されていない、巨大な穴のある謎の祭祀場にたどり着く。穴の中には男が鎖でつながれていた。数々の異常な現象に見舞われ、パニックに陥りながらも男を解放し、地上に戻った光弘だったが、それは自らと家族を襲う更なる恐怖の入り口に過ぎなかった。
建築予定の場所では地鎮祭などお祓い、お浄めをすることは慣習になっているが、この小説はそのお浄め場所での祟りに触れ、不気味な出来事が発生していく。
ー地下での粉塵に呪われた光弘は、家族に様々な異変が起き始め、それが祟りかもしれないと御守りを購入する。だがその金額は予想以上に高く、二度までも余儀なくされる。が、家族の安全を考えると止めるわけにもいかず原因追及すると地鎮祭を司る企業(玉井工務店)から思い以上に故人が出てきた時には要注意と警告する。


パニック状態になった時の心理状態と行動『スワン』

2024-03-19 07:36:18 | ミステリー小説から見えるもの
テロ事件など、人はパニック状態でどの様な行動が取れるだろうか。日頃訓練している人でも瞬時の行動は予期せぬ行動に出るかもしれない。そんなテロ事件に巻き込まれ生き残った女子高校生は次なる事件に巻き込まれ、誰も知らない新たな証言のシナリオを作る展開は興味深い。生き残ったものだけが知る真実は、往々にして加害者なのに被害者となりうる可能性も大だ。それは残された被害者家族の複雑な心境に変化が生じるからだ。文中で気になる弁護士の言葉「実際の仕事は被告人の最大限に守る事、依頼人がどんな人物であろうとも」(どんな凶悪犯罪社の人間であろうと「犯罪者の味方」でいるのが弁護士の仕事)
『スワン』呉勝浩
「概要」首都圏の巨大ショッピングモール「スワン」で起きたテロ事件。
死者二十一名、重軽傷者十七名を出した前代未聞の悲劇の渦中で、犯人と接しながら、高校生のいずみは事件を生き延びた。しかし、取り戻したはずの平穏な日々は、同じく事件に遭遇し、大けがをして入院中の同級生・小梢の告発によって乱される。次に誰を殺すか、いずみが犯人に指名させられたこと。そしてそのことでいずみが生きながらえたという事実が、週刊誌に暴露されたのだ。被害者から一転、非難の的となったいずみ。そんななか、彼女のもとに一通の招待状が届く。集まったのは、事件に巻き込まれ、生き残った五人の関係者。目的は事件の中の一つの「死」の真相を明らかにすること。彼らが抱える秘密とは? そして隠された真実とは。
ーかろうじて生き残った数人を集めて検索議論が始まった。それはある会社の社長の母親がその現場で亡くなったことで疑問を呈し、探索しようと弁護士に頼んだのだ。
数回に及ぶこの茶会は参加者からの真実を読み取り事件の真相を解決したいという依頼人の話とは別に家族を亡くした夫、親友同士で競い合ったともが傷つくなど、事後の事件証言は二転三転する。


弱者の方舟・幻想世界『Butterfly World最後の6日間』

2024-03-08 07:43:53 | ミステリー小説から見えるもの
今の社会から逃避した人々、いじめに遭い閉じ籠りの人、生まれながらに、或いは身体障害者、不治の病気持ちの人々が求める幻想空間「普通の世界」(虐待者も居ない、介護人もいないごく普通の人間として安心、安定した暮らしができる社会)を探究し集まった異空間「紅紹館」は、全く違った発想の幻想社会ミステリー事件小説だ。現実社会において「社会の弱者を助ける」といった内容を含めた興味深い小説だ。 今後「孤独社会」が生み出す人間差別のない、ごく普通の人間として暮らせる幻想空間社会、少し前あったような「セカンドライフ」(仮想の世界)がVRデバイスの進化と共に発生しても不思議ではないし、存在してほしい。
『Butterfly World最後の6日間』岡崎琢磨
「概要」人型のアバター=バタフライが生息するVR空間〈バタフライワールド〉にログインしたアキは、ログアウトせず現実世界に戻らない者たちが暮らす〈紅招館〉に向かう。アキはある事情から〈紅招館〉に住み続けたいと願うのだが、非暴力が徹底されているはずの〈館〉で住人の死体が発見される……。現実世界とVR空間を行き来するパラレルワールド・青春本格ミステリ
ー幻想の世界、妄想に夢を追う、そんなVRデバイスからの「救われる」異次元世界に入れる世が来るのだろうか。暴力もいじめも無い、さらに思いのまま自由にさまよえる幻想の空間(BW)でのびのびと行きたい人々が集まった館「紅紹館」(四六時中滞在できる)に異変が起きる。
十人が住む不思議で孤立した館を探し求め二人が新入するとたの空間と隔離され事件が発生していく。犯人を求めて住人含めて現象を検証していくハイテク幻想世界のミステリー小説だ。


嫉妬妬みが招く被害妄想『眼の壁』

2024-02-29 07:33:11 | ミステリー小説から見えるもの
遺産を狙う家族、恋で悩む恋人、それを妬み嫉妬する仲間、被害妄想から恐れ自殺しようとするなど異様な心理的変化を読み取るには難しいミステリー小説だ。難しいのは人間関係をどう思い、どう思われているのかを理解するか、誤解と被害妄想が殺人事件、自殺へとつながる。場所設定が頻繁に変わり、その比喩も多く読みづらい、さらに2つの顔を持つ男の登場で混乱する。現代、複雑な人間関係を理解することは仕事、家族、恋人同士でも大きな課題だが、陰で悪口を言われない様に、また誤解しない様にするにはやはり頻繁にFace2Faceでコミュニケーションし、信頼し合える仲になることだろうか。
『眼の壁』マーガレット・ミラー
「概要」作品の舞台は富豪のヒース一家。二年前、自ら運転する車の事故で視力を失ったケルジーと一家の家政婦的役割を担っている姉のアリス。事故車に同乗した兄のジョニーとケルジーの婚約者でヒース一家の居候の身のフィリップ。そして、事故の際に亡くなったジョニーの恋人ジェラルディーン。ヒース家には当主も居るのだが、遺産相続人はケルジーになっている
家族の遺産を丸ごと継いだのは事故で視力を失ったケルジー。その周りに居候のように住み着く婚約者など家族の異様な心理的変化は理解が難しい。
ー嫉妬、妬み、被害妄想、恋敵など人間模様からくる関係は複雑化する


大人への一歩は大人の人間関係を知ること『死と乙女』

2024-02-27 07:39:56 | ミステリー小説から見えるもの
17歳の少女が大人の仲間入りを始める、それは成長するため乗り越えなければならない壁(大人の人間関係を理解する)だったに違いない。その表現は「今日、ここで自分の中の何かが死んで、別の何かが生まれてきた」で大人の世界に入ったと実感したのだろうか。人は生死を賭けた場面はもちろん、恋愛含めた人間関係で大きく変わる、成長する。世間でよく言う「出会いは別れの始まり」も同じで一つの経験が次の経験の礎になり、一皮剥けて人は成長するのだ。
『死と乙女』赤川次郎
「概要」あの人、死のうとしている――。放課後、電車の中で偶然居合わせた男の横顔から、死の決意を読み取った絵梨。思い直させるべき? それとも……。ある事件を境に、二つの道に分かれた少女の人生が同時進行する!
会社を盛り上げ一心で家族と社員を大切にしてきた時、一人の優秀な部下に裏切られ、会社を手放すことになる。それは不倫の関係を微妙に高校生になる娘、その友人に感じ取られる。自分の存在を悟り、自殺を図るが一命を取り留める。だが家族の絆が壊れたことで仕返しを考える
ー17歳の少女が大人の仲間入りを感じ始め、大人の複雑な関係を見た時に何かがなくなり、何かを得た、それは大人になったという感じの物語だ。
「生きることの哀しみと、死ぬことの痛み、当人もだが、人の死が、周囲の人々に与える痛みを初めて知った」


人の覚悟とは『夜汐』

2024-02-26 12:16:56 | ミステリー小説から見えるもの
@幕末の世が乱れる時代に生き抜く為に悪も働く。そんな時代は金がある者から命を賭けて金を奪う行為もやぶさかではない。死を覚悟して逃亡するがヤクザに雇われた闇の殺し屋「夜汐」が現れ、覚悟が変わる、という奇妙な物語。「覚悟」とは生きる為、生き抜くための勇気を出し、生きる喜びを感じるということか。
『夜汐』東山彰良
「概要」やくざ者の蓮八は遊女に身を落とした幼なじみを助けるため、無宿人たちの賭場を急襲した。報復のために差し向けられたのは、謎に包まれた無敵の殺し屋・夜汐。蓮八は身を隠すため、新選組隊士となるが……。
「夜汐」(よしよ)幼い頃から兄弟姉妹と一人の仲間(ヤクザ・盗人)の生き様物語だが、時代は幕末。新撰組が登場するが何も意味のない内容で物語が混乱する。


アリバイを作る仕掛け『鏡像の道化師』

2024-02-05 12:53:11 | ミステリー小説から見えるもの
本書にある最新技術を駆逐した事件など、今後現代の世でも頻繁に起こるだろう。人間を騙す、惑わす、精神的に狂わすような技術は世に溢れている。身近なところでは「フェイクニュース・フェイク画像」が今後さらに増発、分散され多くの人が騙されるケースだ。気を付けたいのがこう言ったものは見破りにくいが為に拡散する事だ。だから、世の情報を信じ、気軽に横流しにすると自分に不幸(起訴被害・損害)が被ることも十分可能性が高いから要注意だ。
『虚像の道化師』東野圭吾
『概要』1、ビル5階にある新興宗教の道場から、信者の男が転落死した。その場にいた者たちは、男が何かから逃れるように勝手に窓から飛び降りたと証言し、教祖は相手に指一本触れないものの、自分が強い念を送って男を落としてしまったと自首してきた。教祖の“念”は本物なのか? 湯川は教団に赴きからくりを見破る(「幻惑(まどわ)す」)。
2、然暴れだした男を取り押さえようとして草薙が刺された。逮捕された男は幻聴のせいだと供述した。そして男が勤める会社では、ノイローゼ気味だった部長が少し前に自殺し、また幻聴に悩む女子社員もいた。幻聴の正体は――(「心聴(きこえ)る」)。
3、大学時代の友人の結婚式のために、山中のリゾートホテルにやって来た湯川と草薙。その日は天候が荒れて道が崩れ、麓の町との行き来が出来なくなる。ところがホテルからさらに奥に行った別荘で、夫婦が殺されていると通報が入る。草薙は現場に入るが、草薙が撮影した現場写真を見た湯川は、事件のおかしな点に気づく(「偽装(よそお)う」)。
4、劇団の演出家が殺された。凶器は芝居で使う予定だったナイフ。だが劇団の関係者にはみなアリバイがあった。湯川は、残された凶器の不可解さに着目する(「演技(えんじ)る」)。
「幻惑す」新興宗教への謎、信者を如何に増やすか、その究極は魔力・マイクロ波を利用したトリック殺人
ー「心聴る」恨みを持った人間の脳へ音で精神病にさせる幻聴工作・電磁波を利用したトリック殺人
ー「偽装う」義父作家の遺産相続が目的の工作 他殺か、自殺(心中自殺)か、それとも偽装殺人なのか。 ヒントは死んだ順番と車の泥。
ー「演技流」犯人捜査する警察への混乱させるために携帯電話を巧みに利用した工作・通話記録は電話局で確認できるのでその殺害した人の携帯と同じ形態電話で工作・携帯をすり替えるトリック。


人間の脆さと儚さ『修羅の家』

2024-02-04 07:41:59 | ミステリー小説から見えるもの
人間の脆さと儚さ。非現実的な内容の小説だと思っていたが、まるっきりそうでもない。人の弱みをうまく利用して人を極限まで動かす。警察ごとにならない程度に人に命令し動かすが、決して直接の加害者になるわけでもなく、他人から金をせびることで満足する。弱みを握られた人物はその指示司令に反抗できずやもうえず最後には罪を犯す。腐った、闇の人間社会を見るようでやる切なく許せない。
『修羅の家』我孫子武丸
「概要」女の毒が体内に入り、蝕まれていく―簡易宿泊所で暮らす晴男はレイプ現場を中年女性・優子に目撃され、彼女の家につれていかれる。そこには同じ格好をした十名ほどが「家族」として暮らしていた。おぞましい儀式を経て一員となった晴男は、居住者は優子に虐待されていることを知る。一方、区役所で働く北島は、中学時代の初恋相手だった愛香と再会し「家族」での窮状をきく。北島は愛香を救い出す可能性を探るが、“悪魔”が立ちはだかる。