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名誉と地位を守る「冤罪」の罪『慈雨』

2024-05-13 07:36:13 | ビジネス小説
この小説のテーマは、真実を追求する正義感を持った個人と、名誉と権力によって真実が歪められる組織との対立を描いている。内容は退職警官が冤罪事件の真相解明に執着、「罪を犯した者は罰せられるべき」という正義感を持っていること、しかし組織が、「冤罪」ということに対して名誉と地位を守るために過ちや罪を隠すのが当たり前になっている。 現実、官庁、特に政治権力を用いた真実の隠滅、消滅、改竄、破棄など自分達の過ち、罪を隠そうとする行為は近年頻繁にあるように感じる。「正義を正す」善人や組織が減少し、金と権力で歪められた社会があることを認識しておくべきだ。
『慈雨』柚月裕子
「概要」警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念……様々な思いの狭間で葛藤する元警察官が真実を追う
ー16年前に6歳の幼児が殺害され犯人が逮捕された。その後犯人は無実だと訴えたがDNAの証拠で有罪となり、服役した。その後刑事神場は退年退職し、警察、裁判所の冤罪では無いかと何かにつけ悪夢を見た。それは幼児が「おうちに帰りたい」という夢を見た。
ー神場が四国八十八番札巡礼中にまたしても同じような幼児殺害事件が発生したが、手掛かりとなるものは見つからず捜査は難航していた。神場はもしかしたらこの事件は同一犯か、同じケースだと悟り元部下に共通点を探させた。そして2つの事件から内密に16年前の事件を捜査し出した。
「人間がやることに完璧という言葉は存在しない。どこかに微細とはいえ瑕ある。だからこそ、我々捜査員は、疑念を限りなくゼロに近づけなければならない」
「刑事のお前が私情を向けるべき場所は、警察組織や課長、ましてや俺じゃない。第3の純子ちゃんを決して生み出してはいけないという、1点だけだ。」


「使命」と「責任感」が欠け始めた社会を映す『機捜235』

2024-04-16 07:37:17 | ビジネス小説
@この小説は、若手警察官の高丸巡査部長と、間もなく定年退職を迎える「ベテラン」縞長巡査部長のコンビが、様々な事件や事故に遭遇し、犯人を発見・確保していく物語。縞長部長の豊富な経験と「感」から、高丸部長は多くのことを学んでいく。特に、縞長部長の「亀の功より歳の功だけじゃないんだな。人生、幾つになっても勉強だ」という言葉は印象的です。一方で、作品は現代社会における「使命」と「責任感」の欠如、特に政治家の「闇金」問題に警鐘を鳴らしている。国民のためではなく自分のためだけに行動する政治家の存在は、日本の将来に不安を感じさせる。全体として、本作品は若手警察官の成長と、社会の抱える問題を描いた作品といえるでしょう。
『機捜235』今野敏
「概要」渋谷署に分駐所を置く警視庁第二機動捜査隊所属の高丸。公務中に負傷した同僚にかわり、高丸の相棒として新たに着任したのは、白髪頭で風采のあがらない定年間際の男・縞長だった。しょぼくれた相棒に心の中で意気消沈する高丸だが、実は、そんな縞長が以前にいた部署は捜査共助課見当たり捜査班、独特の能力と実力を求められる専門家集団だった……。


会社でのストレスは即座に転職を『黄金比の縁』

2024-04-08 07:37:24 | ビジネス小説
「会社の不利益になる人間」と烙印を押された社員が人事部に左遷され、会社への復讐に燃える、ビジネス短編小説だ。新入社員採用に対して人事は最終的に「縁」で合否を決める、それは一般的に「総合的に判断した」と言う理由だが、実際は「何となく決めた」で「そう言う時代」なのだ、と言う。採用合否に「美の黄金比」(比に遇う者は転職する確率が高い)で合否を独断で決めようと、会社にダメージを与える最適な新社員を発見、採用したいと詰め依る。現実、入社3年で退職する率が高いと言うが、それは余りにも入社時に「甘み」(給与・休暇・出世)だけを飲まされているからなのかとも思う。それと「良い上司」に恵まれるかどうか、これが一番の課題であり運命とも言える。それと、ストレスを溜めないように悩み始めた時には、早々に転職をした方が時間的にも精神的、肉体的にも健康だと、思う。
『黄金比の縁』石田夏穂
「概要」「会社の不利益になる人間を採る」不当な辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始める――。(株)Kエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当な辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。