「誹風柳多留

娵の礼かしわめん鳥つれて出ル
かしわは羽毛が茶褐色の鶏（広辞苑）で、雌鶏だから女性であろう。姑と解してもよかろう。娵の礼は、花嫁が姑に連れられて町内に挨拶に廻ること。嫁は華やかだが、ついて廻るのがかしわ雌鶏だから、意地悪しそうであるという作者の意思が読み取れる。

「川柳歳事記

皿
子の皿を独り占めした孤独感
テーブルで家族見守る皿のひび
母さんは食べずに僕の皿に盛る

「川柳歳事記

カラフル
世界中の手をつなげたい万国旗
いい街だ花が溢れるプランター
カラフルな下着にめまいする売場

「誹風柳多留

四五人で夜道を帰る娵ばなし
…二説を述べているが。①は、姑四五人がお互いに我が家の嫁の悪口を言いながら帰る図。②は、夜道だから婚礼の帰りだろうと指摘する。②説をとった方が楽しい。

「川柳歳事記

板
俎板の鯉にも夢が会ったろう
立て板に水の弁舌聞かせない
「脱原発」でっかくかいたベニヤ板

「川柳歳事記

回り道
回り道出来ぬ被災を追う炎暑
慈しむ心を拾う回り道
回り道してから運のいい風だ

「誹風柳多留

あなどって娵の出てみるかゝみとき
その家の若い娘や嫁はみだりに外へは出ない。たしなみがあったという。知らない若い男と話をしていたなどということが、噂になっても困るからである。しかし、鏡は女性が使うものだし、興味を持つのは当然である。その仕事ぶりにも興味がある。ことに鏡研ぎは多くは老人であることから、変な噂にはならないだろうという読みである。鏡研ぎも侮られたものであるが、平和な風景である。

「川柳歳事記

媚薬
三日月へ媚薬を投げた足の裏
夕暮れのなみだ媚薬の副作用
右脳から左脳へ流れ着く媚薬

「川柳歳事記

浜
浜の灯は待つことだけに慣らされる
砂浜に書き続けてる平和論
原潜艦浜の景色を塗りかえる

「誹風柳多留

ぐつとこゞんでぶっかけを娵ハ喰ヒ
当時のかけ蕎麦はツユが少なめで、皿のような器であった。食べ方も、器を下において正座で食べたという。決して上品な食べ物ではないから、食べ方もそれなりの姿勢となる。ましてや忙しい嫁の身であってみれば、落ち着いた食べ方など望むべくもない。