「柳誌 題詠

バタンキュー昼の疲れが心地よい
　　　　　　　　　　　題：寝る
　　　　　　　　　　　美和山吹
　　　　　　　　　　「川柳さいたま」　１０月号

「柳誌」雑詠

恬淡が強欲となる老いの闇
八十路坂心の杖を確と突き
　　　　　　　　　　　「川柳さいたま」　　１０月号

自選句（テーマ別）

持つ(１０句中１０句)

変化球も魔球も妻は持っている
雑魚だって尻尾ぐらいは持っている
騙されるほどのお金は持っている
「全日本柳人写真名鑑」

「老いて新鮮」 （松ひさし）

炎天の強者

キミたちは草の仲間
キミたちにはそれぞれ種類に名前がある
同じ種類の大勢が集まっていたりする
雑草とは言うまい　名前を知らないからキミたちと呼ぶ

キミたちは元気だ　強い
太陽が照り熱を放つ炎天の日々
地に根を張り伸ばす
空に向かって幹や枝や葉を膨らませ広げる
自分たちの力だけで
地に深く地の面に広く空に向かって高く
自分たちの領分を増していく
涼しくてさわやかな日よりも
激しい雨や厳しい暑さの日に
キミたちは威勢がいい

地の園には花たちや野菜たちが育っている
花たちや野菜たちに迫るキミたち
キミたちに地の園を占領させられない
花たちや野菜たちを助けよう
炎天の地の園に老いの身が出る
ふらっと身がよろけ　くらっと目まいを覚えながら
強くたくましいキミたちを手でつかみ
衰えた腕に力をこめて抜き取り　地に倒す

強靭なキミたちは倒れた悔しさはあっても悲しみはあるまい
仲間がいつの間にかあとに現われキミたちは絶えない
「繰り言」より　　　

「柳誌」

包丁を研いで料理は手抜きされ
　　　　　　　　　　美和山吹

　　　　　　　　　　　「川柳さいたま」　１０月号

「柳誌」雑詠

程々の汗で余生を悪怯れず　
ひとりぼち心の傷をそっと撫で
　　　　　　　　　　「川柳さいたま」　　１０月号

自選句（テーマ別）

持つ(１０句中７句)

明け方の月は主張を持って冴え
風の町寺山修司が数珠を持つ
冥土まで薬を持って行く気かも
「全日本柳人写真名鑑」

「柳誌」雑詠

お開きでやっと幹事もあぐらかく
防災のグッズが無駄となる感謝
　　　　　　　　　　「川柳さいたま」　　１０月号

自選句(テーマ別)

持つ(１０句中４句)

和に洋に分けられんなと箸を持つ
本物の武器持っている自衛隊
暦にはない祝日を持っている
傘寿過ぎ哲学が持つ読みごたえ
「全日本柳人写真名鑑」

「柳誌 題詠

バタンキュー昼の疲れが心地よい
　　　　　　　　　　　題：寝る　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　美和山吹
　　　　　　　　　　「川柳さいたま」１０月号