「川柳歳事記

曲がり角
曲がり角一つ間違え迷い子に
曲がり角未知の世界へ誘い込み
世渡りの苦手のままに曲がり角

「川柳歳事記

吠える
山門の仁王阿行の口が吠え
中国が吠えて世界をそそのかす
調教のポケットにある角砂糖

「川柳歳事記

変
大臣が変わっただけで秋になる
気が変わる前に印鑑もろておく
変わり身が早くて苔が生えぬ石

「川柳歳事記

無難
宗教と政治は避けるトークショー
雑学に長けて無難な平泳ぎ
九条も核の傘下に居て無難

「川柳歳事記

ひたひた
ひたひたと家族写真の藻が揺れる
カーテンを引いてひたひたから逃げる
両家居並びひたひたの昆布だし

「川柳歳事記

白状
白状をすれば危ないひと波乱
同窓会白状へ沸くエピソード
白状をすれば静かな海になる

「川柳歳事記

望む
再生紙せめて美人に擤まれたい
病室でうっすら紅を引いてみる
望郷の胸に山河は生きている

「川柳歳事記

ねばる
忍一字未だ大事に歩をきざむ
残り香が鼻腔に粘りつく未練
納豆の糸にからまる家族の絵

「川柳歳事記

逃げる
記憶にはないと良心からも逃げ
ゲーム機の中に逃げ込む孤独な日
煽るだけ煽った鬼が先に逃げ

「川柳歳事記

情け
情けがからんでまっすぐ歩けなくなった
崖っぷち情けの海へとんでみる
諸行無常神の情けにすがりつく