「私の好きな句」

ぶれる
TPPに案山子の中心がぶれる
ぶれ過ぎて描けぬ老後の設計図
ぶれながら金婚式へ辿り着く

「私の好きな句」

触れる
逆鱗に触れてさまよう左遷の地
真剣な心に触れて立ち直り
親友でも触れてはならぬこともある

「誹風柳多留」

足音にてうしをかくすけちな酒
盗み酒の図ではなかろうか。妻に隠れてちびちびとやっていたのだが、足音がしたので、慌てて調子を隠したのである。この場合のけちはけちん坊ということではなく、些細なこと、みすぼらしいという程度のものである。

「私の好きな句」

秘密
互いに秘密知って絆が太くなる
ここだけの秘密が独り歩きする
秘め事に出来ぬ原発事故隠し

映像川柳

愛煙家胃炎が癒えて快気宴　　　美和山吹

「私の好きな句」

左
利き腕が左で少し生きにくい
お手前へ皆の目ささる左利き
跳んでいる発想　思想は左利き

「私の好きな句」

反省
恩返しせぬままお見送りしたな
出家ですか反省ですか丸坊主
年輪に己を省みるひずみ

「私の好きな句」

離れる
離れ住むあなたを思う遠花火
子ばなれや恵方参りの続く日々
車間距離たもつ夫婦で仲が良い

「私の好きな句」

パソコン
言うことを聞かない妻もパソコンも
削除キー押す真夜中の虚脱感
少年の視野にパソコン無限大

「誹風柳多留」

下戸の礼炭けしつぼをぶちまける
正月の年始礼の客である。酒飲みなら、「酒を出してご苦労をねぎらうことができるが、下戸には火鉢の炭を足して暖でもてなすしかないというのである。すみけしつぼとは炭消し壺の事である。囲炉裏で燃やした薪の燠（おき）を消し壺に取り、炭状にして保存しておくものである。その消壺の炭をぶちまけて振る舞ったのである。