「川柳歳事記」

触れる
入るなとばかり取っ手の静電気
ちょっとでも触れるとショートする女
古傷に触れたくはない壁のしみ

「川柳歳事記」

ピリピリ
放射能に気を揉む日々の米農家
不用意な口が女房のシッポ踏み
試合前エース誰とも話さない

「川柳歳事記」

ひらり
妖精がランプの中を通過中
いい女ひらりとこの世から消える
羽のあるロールケーキは飛び去った

「老いて新鮮」松ひさし

御免ね　虫さん

青い色の青虫さん　キャベツがおいしいでしょう
黒い色の黒虫さん　白菜がおいしいでしょう
虫さんの嫌いな毒入り薬は
野菜つくりに使っていませんからね
ムクリ　ムクリ　モッコ　モッコ　虫さんが動く
サック　サック　パリン　パリン　虫さんが食べる
コロン　コロン　ポロリ　ポロリ　虫さんがうんちをする
キャベツや白菜は虫さんたちに食べられて
葉っぱが穴だらけ
破れたようになった葉っぱもあるよ
これは困った
キャベツや野菜を育てたワタシが食べられなくなるよ

青虫さんや黒虫さんには悪いけれど
ワタシは悪魔の心になって
虫さんの命をちょうだいします
罪なことだけれど許してね
ワタシは虫さんをつかまえ　手袋をはめた手でつぶす
ワタシは虫さんを地面に投げ　長靴をはいた足で踏みつぶす
御免ね　御免ね　虫さん

虫さんのお母さんかな
蝶々さんがハタハタ　ヒラヒラ　フワフワ　
とんで踊って浮いたり沈んだり
キャベツや白菜のほうへ降りてくる
虫さんの卵を産むのでしょう
駄目です　あっちへ行きなさい　ワタシは蝶々さんを追い払う
優雅できれいな蝶々さん
なかよくしたいけれど
なかよくできないワタシの気持ち　わかってね

「川柳歳事記」

パワー
若者が減って年寄りパワー出す
復興へパワーショベルが唸りだす
女房の秘めるパワーがおそろしい

「川柳歳事記」

練る
涙した裏で女が策を練る
練り直すたびに私が消えていく
終章を飾る美学を練っている

「川柳歳事記」

ニュース
ニュースにはならないけれどいい話
井戸端であれば女は困らない
ガセネタがカジキマグロの喉に有る

WEB句会

Web句会　５月
眼鏡
父にだけ眼鏡にかなう嫁だった　　　　　　佳作
　　　　　　　　　　　　　　　　美和山吹

「川柳歳事記」

流れる
薫風を呑んで流れる鯉のぼり
かすり女の流れる手つき新茶摘む
好きな唄流れるたびに胸はずむ

「川柳歳事記」

点
点線で切り取ってから重くなる
沸点を超えても煮えてこない夢
沸点をこえたところにいる悪女