先日、ピア二スト辻井伸行の演奏を聴きに出かけて来ました。<o:p></o:p>
演奏終了後、すっくと椅子から立ち上がり、左の手をピアノの角に置いて、観客に向かって深々と礼をする彼に、私たちは惜しみない大きな拍手を送ります。とその時、不意に私に素朴な疑問が湧いてきたのです。<o:p></o:p>
いったい、今、私たちは彼の何に対してこんなに大きな拍手を送っているのだろうか……と。<o:p></o:p>
彼の努力に? 彼の才能に? 彼の不屈の精神に? 彼の生き方に? ……?<o:p></o:p>
拍手を送りながらも、私の疑問は消えません。<o:p></o:p>
そしてこんな疑問も浮かんできました。<o:p></o:p>
これは障害者と呼ばれる人の人生の在り方の一つの理想の形なのだろうか……と。<o:p></o:p>
それらの疑問は、あの鳴りやまぬ大きな拍手の中で、空間認識のためでしょうか、彼のしきりに首を左右に傾げる動作と掌をひらひらと振る動作、そして観客とオーケストラに向かって深々と礼をする姿とともに、今も私の心に強く、固く残ります。<o:p></o:p>